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へたれ猫
高校2年の夏、俺たちは真っ黒な子猫を拾った。

しかし互いの家で飼うことは叶わず仕方なく公園の片隅でこっそり世話することにした。

少し大きめの木箱に段ボールを入れて。
夏とは言えど寒くないようにタオルを沢山詰めてやった。
餌と水は忘れずに。

名前は『チビクロ』
俺たちは学校が終わると毎日公園へ通った。
片方が行けない日は一人だけででも。
そんな俺たちの気配を感じて甘えた声を出しながら擦り寄ってくるチビクロ。
俺たちの周りにはいつも子供たちがいた。
もちろん子猫目当てに。




そんな生活が1ヶ月程続いた。


ついに子猫の、チビクロの里親が見つかった。
里子先は公園に集まっていた子供たちの中の一人の女の子の家。


里子に出す日。

俺たちはチビクロを抱え女の子の家へ向かった。
道中、違和感を感じたのか頻りに腕や指先を舐めてきた。
ざらざらした舌がくすぐったい。

ピンポーン

チャイムを鳴らす。
女の子と女の子のお母さんが出てきて女の子にチビクロを優しく抱かせた。
お母さんは用意していた赤い首輪を付けて「今日からあなたはうちの子よ」と優しく撫でた。

にゃぁん

チビクロが一言、鳴いた。
どうしていいのかわからない、そんな感じの声。
そんなチビクロの頭を撫でて頬笑んだ、今日からここがお前の家だと。


暫らく別れを惜しんだ後、帰路に着いた。
家を後にしてふと鼻の奥がツンとする。たった1ヶ月だったとは言え、淋しいものは淋しい。

俺たちは部屋へと戻り何をするわけでもなくぼーっとしていた。





「チビクロ、いなくなっちゃったねぇ」

先に口を開いたのは黒髪の少年、エンヴィー。
手をついて天井を見上げている。

「あぁ、いなくなっちまったなぁ」

応えたのは金髪の少年、エドワード。
彼もまた手をついて天井を見上げていた。

「でもさ、いつでも会いに来ていいって言ってたしさ。また行こうぜ、二人で」
「…うん」

また沈黙。


…。

……。

………ぐすっ。



「ふぇ…うわぁあぁあぁぁんチビクロいなくなっちゃったよおチビさぁあぁぁん!!」
「ぎゃー!!」

突然関を切ったように泣きだしてエドワードに抱きついたエンヴィー。
大粒の涙と鼻水がシャツを濡らす。
当然慌てるエドワード。

「…たく、しゃーねぇな」

しかし泣きじゃくる彼を見て蔑ろに出来るわけもなく落ち着くまでそのまま胸を貸すことにした。
素直に泣けない自分の分まで泣いてくれているのだと思って。


「ひぐっ、ひっく…ッ」

二人分の体重を右腕で支え、左手でエンヴィーの頭を撫でる。



「…っふ、…」

息継ぎの度に跳ねる肩は治まってきた、暫らく大泣きしていたエンヴィーも次第に落ち着きを取り戻した。

なんとなく。なんとなく束ねられていた長い黒髪を解いてみた。


「?…どしたの?おチビさぁん」
「ッ!」

抱きついたままの顔が上がった。
目と鼻が真っ赤に腫れて涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔、端正な顔立ちのいつものエンヴィーからは想像出来ないくらい汚れたぐちゃぐちゃな、顔。


(え、何こいつすんげぇ可愛いんだけど…っ)


自分しか知らないエンヴィーの、表情(かお)。
加えての体勢的に上目遣い。

傾げられて肩からさらりと流れた黒髪が右手を撫でた。


「…ごめん」
「ん?え、どしたのおチビさん」

背中に腕を回してぎゅっと抱き締めた、逃がさないように。

そして…

どさり


フローリングと罰の悪そうに眉を顰めたエドワードの間に、事態を飲み込めていない豆鉄砲でも食らったかのようなきょとん顔のエンヴィー。

「んな可愛い表情するてめぇが悪いんだからなっ」
「え…ちょまっ、おち…んぅ!」


煩い唇を塞ぐ。


その、後は…











あれからオレたちは月に2、3回チビクロに会いに行った。
名前は『チビクロ』のまま。
新しい家族にもすっかり馴染み、もう俺たちの子供じゃないのだとしみじみ感じてしまう。
けど、暖かい家族、暖かい家、これがチビクロにとって幸せなのだろうから満足している。


淋しくないと言えば嘘になるけど、オレにはもっと可愛いくろ猫がいるから問題は無い。



イイ声で鳴くんだぜ?



×××××


いえーぃ、えんびを泣かせよう第二弾!←

最近は妄想話からの発展が多いです、だって1から作るより妄想話で幾分か作ってからの方が書きやすいんだもの!


ただ涙と鼻水でぐでんぐでんのえんびが見たい、それだけです☆




09/12/11


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あきゅろす。
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