バカだからわかりません 「…ゔお゙ぉい、何だその手は」 「気にするな」 珍しく談話室にボスが来たと思ったら、なんだかおかしい。 なんで俺の横に座ってるんだ。 んでもって俺の腰に当ててる手は何だ。 なんで腰撫でてんだぁ!! 「あのよぉ…、手ぇ退けてくんねぇか?」 「…」 無視かよ! ゔお゙ぉ…なんか腰がぞわぞわしてきたぞ………。 少し涙目で向かいのソファーを見ると、ベルとマーモンが口をあんぐりと開けて俺を見ていた。 「いつそういう仲になったの……?」 ベルが口を引き攣らせながらそう聞いてきた。 そういう仲ってどういう仲だ。 「いちゃつくのやめてよね」 見ていられないと言わんばかりに目を小さな手で覆っているマーモンは、そのまま談話室を出ていってしまった。 うるさいわねぇ、と奥の方からフリフリエプロンをつけたルッスーリアが、これまたフリフリと腰をふりながらやってきて、俺を見るや否や、あらまぁ!とハートを飛ばし始めた。 「いやんボス、ついにスクに手出しちゃったのね〜」 「はっ?」 手出した…!? まさか、これって世間一般に言う… 「セクハラかぁ!!!」 「違ぇよドカス!」 「だっ!!…ゔお゙ぉい!打つこたねぇだろぉ!!」 「うるせぇ。誰がテメェみたいな奴にセクハラするか。どうせなら胸も尻もでかい方がいい」 やっと腰から手が離れたと思ったら、カス、と吐き捨ててマーモンと同じように出ていってしまった。 「男で悪かったなクソボスがぁぁあッ!!!」 「うわっ、うっせ!」 「ちょっとスク、落ち着いてっ」 * * * * * 「で、さっきのは何なの?」 「俺もわかんねぇぞぉ…」 ボスが出ていった後、鼻息の荒いルッスーリアに詰め寄られ、今尋問にかけられてる真っ最中だ。 ご丁寧に、俺が逃げられないようにベルにナイフまで向けられて最悪だぁ…。 「随分とご機嫌だったじゃない。何かあったんじゃないの?ボスに告られたとか!」 「「それはない」」 「あら、ボスから告白なんてロマンチックで素敵じゃないの♪」 「オレ勘弁ー。キモい」 ベルから発される"キモい"は妙に説得力がある。 たしかにあのボスが告るのはキモい。どっちかっつーと、アイツは告ってきた奴を酷い振り方で泣かすタイプだろ。 でもまぁ、ボスのことは好きだし?別に告られたくねぇとかってわけではないけど…… (好きだ!世界一愛してるぞカス!) (ボスぅ……!!) ………ないな。有り得ない。 「なーに赤くなってんだよスクアーロ」 「はっ!?なってねぇよっ!と、とにかく、俺は知らないからなぁ!!」 つか、なんでおかしくなったボスに俺が関係してることになってんだよ! 俺は関係ねぇ!あの腰の手はたまたまだ!たまたま俺が被害に遭っただけだ! そう思って、談話室からダッシュで逃げた。 * * * * * あれから数日後、俺は任務で出掛けていたんだが、ルッスーリアから話を聞くに、やっぱりボスはおかしいらしく、不機嫌極まりないそうだ。 これから報告書を出しに行くって時に聞かされたもんだから、もう心臓がビビってるし。 まぁ暴力には慣れたけどなぁ。 嫌な慣れだぜ。 「ボス、入るぜぇ…」 いつもならやらないけど、一応ノックをしてドアをゆっくり開ける。 絶対灰皿とか飛んでくるって! とか思ってたけど、実際飛んでくる物はなく、しんと静まり返っていた。 「ボス……?」 声をかけても反応はなく、そっと近寄ると、いきなりガタッと大きな音を立てて立ち上がった。 肩が揺れ、近寄ってくるボスから一歩、また一歩後ろに退く。 「なっ、なんだぁ…」 「……………スクアーロ」 「はぁ!?……っ!!」 ちょっと待て。 俺の頭ついてかないんだけど。 なんでいつもカスカス言ってる奴が名前呼んでんだ。 しかも俺のこと抱きしめちゃってるし。 おかしいにも程がある。 まさかここまでボスが重症だったとは………。 「この間から変だぞアンタ。頭でも打ったのかぁ…?」 「…テメェこそ、その反応は何だ。恋人の反応とは思えないな」 「そうかぁ……… ……ん゙?恋人?」 俺が? ボスの恋人? 「はぁ!?いつから!!?」 「…テメェが任務に行った前日だ。覚えてねぇとはいい度胸してんな」 任務の前日ってことはセクハラ事件の前の日だな。 たしかあの時は夜にここにコーヒー運びに来たんだよな。 でも告白らしい会話なんてしてねぇぞ。 「……俺何て言った?」 「…忠誠がどうのこうの」 『ずっと俺の傍らにいろ、カス』 『当たり前だぁ!俺はアンタに忠誠を誓ったんだからなぁ!』 ……アレかぁっ!!! 「わかるわけねぇだろぉ!!!アレを告白って言う方が間違ってる!」 「わからねぇカスが悪ぃ!!」 「悪いのは遠回しなアンタだぁ!!」 俺はバカだから 「直球で言ってくれなきゃわかんねぇ……」 遠回しな言い方は嫌いだぁ。 「好きだ、スクアーロ」 ボスからの告白は、案外、キモくなかった。 バカだからわかりません (で、なんで腰触ってたわけ?) (好きな奴には触れていたいもんだろ) (……やっぱりこの人重症だぁ) ─────────────── 告白ネタ。 スクをもっとバカにしようと思ったら周りもバカになっちゃいました; [*前へ][次へ#] |