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Rêve éphémère
熱:Pandora Hearts ヴィンセント夢

オズ達の下でひとしきり喋った後、ヴィンスの部屋に戻る。
「ただいま、ヴィンス」
そう言って扉を開けた瞬間に感じたのは痛み。
頬をはたかれてたたらを踏んだ私の腕を掴み、ヴィンスは私の事を床へと引きずり倒した。
「ーッ」
床にぶつかる衝撃に目を見開くとヴィンスの苛立ちに染まった瞳が見えた。
「ヴィン「ねぇ、何で、あんなトコに行ってたの?答えなよ、クリス?」
「ただっ、話をしにっ、行ってただ「帽子屋さんと話すことなんてさ、クリスには、必要ないよね?」
身体に重さがかかるのを感じ、ヴィンスが私に跨っているのがわかる。
くい、と顎を引かれた瞬間。視界が紅と金に染まった。
「んっ…ヴィン…っあ、やっ……め…ぇ……あっ」
口を侵される。呼吸すら、ままならない。
「クリスが悪いんだよ?僕のモノなのに、他の男と話すなんて」
唇と共に離れたヴィンスを見上げる。…微笑っている。
「ねぇ、ヴィンス」
「どうしたら君は僕から離れないでいてくれる?ねぇ、どうしたら。君は僕以外の男を見ないでいてくれる?どうしたら君は他の男に見られないで済む?」
「ヴィ…ンス?」
笑顔のまま問いかけてくるヴィンスに恐怖を感じ逃れようとしても、床へと押し付けられている肩にかかる手により逃げられない。
「……わかった」
「え…?」
一体、何が分かったというの?
それを問う間も無かった。
下げていた顔を再び上に向けた時に目に入ったのは金の煌めき。
感じたのは熱−−と鋭い痛み。切り裂くような。
そして。それで気付いた。先程の煌めきはヴィンスの瞳ではなく、鋏だったのだと。
ーどうして?どうして。どうシテ。どうして、私がー?
霞んでゆく視界の中にヴィンスを見つけた。
何かに怯えているかのような、表情。
あぁ、安心して。私はあなたを置いていかないから。
ずっと死ぬまで一緒にいるから。
手を伸ばしてヴィンスの手を握る。
「クリスッー「ご、めんね。私がっ…ヴィ…ンスッを……不安にさせっ…たんだよね……?」
ヴィンスに名を呼ばれるだけで生きていたい、と望んでしまうのはーー罪?
最後にヴィンスの胸元のフリルを掴んで、噛み付くようなキスをした。
そして、唇が離れると私の身体はそのまま重力に従い、落ちてゆく。
もう、力が入らない。あ、コレで終わりなんだな、とふと感じた。
あまりにも呆気ない。
「好き、だったよ……」
最期の刻に感じたモノは。






熱を失ってゆく姫に与えられる熱。
血潮のような紅と宝玉のような金に見つめられながら姫はその生を散らしゆく。
彼女の死出に飾らるるのは一輪の黒き薔薇。



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