[携帯モード] [URL送信]

小説(中編)
始まりの悲劇


 人は信じるものを失った時、悪に染まるのだろうか。
 善悪の天秤は一気に傾き、二度と戻ることもなく、神さえも葬り去る。
 想いのすべてを殺し、純潔のユリを赤く染め上げる。
 その深き悲しみを癒すものもいないままに失望が拡がり、この世の何もかもを憎む。
 徐々にあらわにする歪みに気付くこともなく、暗黒の海に一歩一歩踏み込み、溺れてゆく。
 静かに、そして確実に。
 オリフラムはそうして少しづつ狂気を帯びていった。
 手折られてしまった花の前で、すべてに絶望した心。
 その腕に抱きしめた身体。
 誰よりも愛しく、誰よりも純潔なその人。
 だからオリフラムも人間と言うものを愛することが出来た。
 人間が持つ美しく部分の象徴だったからだ。
 彼女が信じさせてくれた。
 人間は確かに愚かだが美しくもあると。



[次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!