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小説(中編)
―9―


 いつでも傍らに寄り添っていた狂気に気付かないのはテレシアとイシュタルだけだった。
 しかし、彼女たちに対してだけ異様に変わる態度も、間違いなく本物と言えた。
 彼女たちの前では何故か穏やかで優しい気持ちになれたからだ。
 もちろん、愛しい存在であったからこそ、穏和になれた。
 他者に対する態度も、確かに本心から来るもので、あからさまな嫌悪感をシーヴァスは隠す事もしなかった。
 シーヴァスの外見や家柄に群がり媚びる人間を特に毛嫌いし、冷たくあしらってきた。
 周りに何と言われようと一向に構わないのだ。
 ただ今回の事件を切っ掛けにして、他者に対する嫌悪感を一層深くしただけだった。
 寧ろ、嫌悪は憎悪へと変わり、考えを歪めたに過ぎない。
 矯正を許さない歪みは、強固にしただけで事態を悪くする一方だった。
「復讐はするべきでしょ? まずはそれからですよね…」
 柔らかく穏やかな声音。
 元々、秘めていた狂気は一気に溢れ出す。



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あきゅろす。
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