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展示室
朱色の残像

我々がもっとも愛し、そして蔑んだ朱色は、鮮やかなまま姿を消した。



「俺なんかホントはどうでもいいんだろ?だって偽物だもんな、レプリカだもんな?」


にっこりと、それはそれはうつくしく。
彼は、たった一度だけほほえんだ。
否定の言葉を、弁解の言葉をいくら探しても彼のそのうつくしいほほえみと、過去の致命的な決別が全てを拒絶するばかりで。彼に伝えたかった砂糖菓子のような言葉は、ことごとく偽善のコーティングをはがされ苦い自己満足だけを舌の上に残して溶けてしまった。


「違う、違うんだ、ルーク……!」

「何が?お前だってオリジナルがいいんだろ?ナタリアだって言ってたじゃん。なぁ、ナタリア?」

「……っ!わ、わたくし、は……」


与えた傷口を見せつけるように、朱色は王女を見つめる。向けられたエメラルドの瞳がなぜかひどく暗く澱んで見えて、王女の脳に恐怖という名の警鐘を響かせた。


「俺は優しいからさ、返してやるよ。本物を、な」


笑顔の形に歪めながらもまったく笑っていない顔で、朱色は幼なじみ『だった』少女に何か紅いモノを投げつけた。
ごろり。と、生々しく転がり落ちたのは、キムラスカ王家に連なる者の証のである紅い髪と、見開かれたエメラルドの瞳。それらを持った、首、だった。


「嬉しいだろ?ナタリアやガイがずっと欲しがってた本物だぜ」


どこまでも無邪気に紡がれた言葉を、もう誰も理解できていない。
人殺しを怖がっていたあの幼い子供はどこへ行ったのか。甘さと優しさと我が儘で形取られていたレプリカはどこへ行ったのか。我々が愛し、蔑み、見捨てたあの生き物は、どこへ行ったのか。
どこでこの結末への道が決まってしまったのか。


「さて、本物の『ルーク』もちゃんと返したことだし。……邪魔な偽物はここで消えてやるよ。あばよ、ヒトゴロシ共」


べ。と、子供じみた仕草で舌をだし、朱色はどこからか出した銃で自らの頭を撃ち抜いた。
ばぁんと空気とその他諸々を打ち砕いた音が響き、世界は一面赤く染まる。その瞬間朱色はうつくしい残像だけを残して、世界を見捨てたのだった。


さよなら、ハッピーエンド










おはこんばんにちわ。お題制作者の癖に参加してしまった馬鹿者の色月と申します。黒ルクへの愛に負けました。その割に皆様の素晴らしい黒ルクの中でフワフワ浮いてそうな仕上がりになってしまいましたすみませんorz

素敵な企画を考えてくださった主催者様、ありがとうごさいました。





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