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宴のあと








まんまると太った月が傾きかけた、宴もたけなわの頃。大半の仲間達が船のあちこちで寝こけているのを見ながら、サッチは親父の元へと足を進めていた。本来なら泥酔して他の仲間と同じように惰眠を貪っているはずだったのだが、悪魔の実のことで散々からかわれてしまったために満足に酒を飲むことすらできなかったのだ。

だいたいうさぎってなんだ、うさぎって。そんな攻撃力のなさそうな能力があってたまるか。半分くらいいじけた思考でいたが、これは親父と飲み直すいい機会だと瞬時に頭を切り替えた。こういうところが自分の長所だと自負しているので、前にくすねておいた酒樽を片手に意気揚々とモビーの船首へと向かう。しばらくして大きな背中が見えてきたので、サッチは声をかけた。





「親父ー…っと、ペチーノ?」
「おう、サッチ…静かにしろよ」






そう言った彼の膝の上には、くるりと丸まって眠る不死鳥とそれに寄りかかって眠る子供の姿が。ペチーノはともかく、どうしてマルコが親父の膝の上に…羨ましい。嫉妬に燃える目で揺れる青い炎を睨みながら、サッチは一緒に飲もうという意味をこめて酒樽をさし出す。すると彼は「グララララ…」と、いつもより控えめな声で笑った。

自分のちっぽけな感情はお見通しらしい。いや、この人の手にかかったらなんでも暴かれてしまうんだろうなと、自分用の大きな杯を持った親父に苦笑って酒を注ぐ。そして残り全てを普通サイズの杯に注いで、サッチは親父の杯にそれを軽くぶつけて乾杯をした。ぐいっと一思いに煽った酒はいつもより美味しく感じられる。





「ふはー…やっぱ親父と飲む酒は格別だな」
「おだてんなよ、バカ息子」
「ホントのことだって!」
「グララララ…! あほんだらァ!」

「んー…? じいじ?」






楽しすぎて少し大きくなった声の音量にしまったと思うヒマもなく、今までこんこんと静かに寝ていた子供が目を覚ました。








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