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その4








ぶらーんとジョズの首に足をからませ仰向けに倒れて笑うエースが怖いので、サッチは腰をあげて剥がしにかかる。けたけた笑う末っ子は意外と簡単に床に降ろせた。そのままずりずり引きずって隣に放置すれば、彼はまた不気味に笑って「おれのー話をきけえ!」と回らない舌で叫ぶ。はた迷惑な酔っ払いは、軽くあしらえばあしらうほど煩くなると知っているサッチは、吐き出したいため息をぐっと飲みこんでなんだと訪ねる。





「エース、食ったときはどうだったんだ?」
「んーとな、にげくて辛くて酸いいの!」
「は…?」

「んで甘くていてえ!」
「そりゃ食い物に対する感想じゃねえ!」
「おれ気ィ失って寝こんだぜ!」
「え、マジで?」






早くも食べる気を失ってしまった。話を聞かなかったほうがまだよかった。だって苦くて辛くて酸っぱくて甘くて…しかも痛いってなんだ。どんな調理法を用いたって美味しくできるイメージも自信も湧かないのだ。

取り合えず温くなったビールを一口飲む。すると、ダメな保護者と戯れていたペチーノがじっとサッチを見ている。つぶらな瞳はまだまだ眠気をたたえていない。月の下できらきらと輝く姿に可愛いなあと破顔して、マルコの膝からさっとちんまい身体を奪いとる。





「おいペチーノ返 「なあペチーノ」
「なあに、しゃっち」
「おれがさ、悪魔の実の能力者になったらどう思う?」

「あく…ま?んん?」
「おれと一緒になるんだとよい」
「あっ」






そう言ってマルコにあっさりと奪い返されたペチーノは、ぱっとさらに表情を明るくしてサッチに手を伸ばした。そして興奮気味な声色で「とりさん!? しゃっち、とりさん!?」と叫ぶ。ああ、マルコが不死鳥だから一緒になる自分も鳥か。

がっちり男の腕にホールドされた子供の頭を撫でる。奇声をあげて喜ぶペチーノの様子が気に入らなかったのか、マルコはむすっとした顔でそのつむじに鼻を寄せると、小声で「サッチはうさぎになるんだよい」と悪魔の囁きをした。





「うさぎ!? ひあー! しゃっちかわうい!」
「マルコてめえ!」

「ぴょんぴょん跳ねるうさ耳リーゼン男…ぶふう!」
「うけけけけ! サッチぴょん!」

「あん? 面白そうな話をしてんじゃないかい?」
「え、あの実ってうさぎなんだ? サッチかわいー」






わらわらと集まってきてからかう仲間達に抵抗しながら原因を作り出した男を見れば、ペチーノを抱えて親父の元へと逃亡した後だった。やられた。エースに抱きつかれ、ハルタに茶化され、イゾウに鼻で笑われながら、サッチはやけくそにビールをぐいっと煽った。その賑やかな輪を遠巻きに見ている人物には、まだ誰も気づくことができないままで。








(サッチがうさ耳でぴょんぴょんしていたら絶対可愛いと思います)








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あきゅろす。
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