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のめや騒げや








戦いの汗や血を風呂に入って流し終え、小綺麗とまではいかないまでもさっぱりした野郎どもは甲板に集合していた。敵船を落とした後は必ず宴が催されるのだ。現に船のいたるところでは、仲間達がわいわいと賑わいを見せている。すでに酒が入っている者もいるようで、耳を澄ませばどぼんと海に飛びこむ音も聞こえた。





「どんだけハメ外す気だよい…」
「まあまあ、ほらマルコも飲も?」
「後始末は誰がすると…!」






ハルタは眉を寄せたまま微動だにしないマルコにビールをさし出す。せっかくの祝いの席だというのに辛気臭い顔をしているなんて、そんなの嘘だ。もったいない。それでもまだ彼の表情は堅い。ハルタはしかたないと首をすくめると、少し離れた場所にいる最後の切り札を指さして「ビスタも手伝うってさ」の一言。

思わぬ流れ弾を喰らったビスタは、飲みかけていたワインをぐふっとのどに引っかからせた。止めてくれ、巻きこまないでくれと視線を送るも、もうすでにマルコは座りこんでビールを煽っている。上機嫌だ。ああ、今日はほろ酔い気分ですませなければならないと、ビスタはぐっと残りのワインを飲み干した。その味がさっきよりも少ししょっぱく感じたのは、気のせいだと思いたい。




「よお、飲んでるか?」
「サッチ…」

「げっ! マルコ、お前まだそれアテて飲んでンのかあ?」
「うっせ、人の味覚にケチつけんじゃねえよい!」
「逸脱しすぎなんだよ、加減しろよ」






二人に早速からんできたサッチは、呆れ半分で引き気味に無視することに決めたのだろう。しかしマルコは気にも止めないでフォークでちまちまとそれ―――モンブランを崩し、むぐむぐ食べてはビールを飲み、ビールを飲んではモンブランを食べている。よくもまあ太らない上に虫歯にならないなあ、なんてぼやいていたのは仲間のコックだったか。何より見ているだけでも胸やけが起こるのに、食べている本人は全く表情を変えないのだから怖い。いや、でろりと顔をとろけさせて食べられても怖いのだが。





「そういや、悪魔の実拾ったって?」
「そうなんだよ! 食おうか迷っててさあ」
「ええー、食べないの?」
「いや、どうしたら美味く食えるか考えててよォ…まずかったら食う気起きねえし」
「ははっ、サッチらしいや」









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