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その2








もう云十年と人を斬ってきたが、未だに慣れることのない感触を振り払うようにサーベルを横に振るう。ピッと壁に付着した血糊を「ああ、染みになるなあ」とだけ思った。無情と言われようとどうでもいい。どうせこの船はあと数分後には海底へ沈むのだから。





「しっかし長男も末っ子も、また派手にやってんなー」

「何言ってんだいサッチ! てめえもキリキリやんな!」
「さすがイゾウ隊長、おっとこまえ!」
「額に風穴ァくれてやろうかいッ?」






パンパンと銃をぶっ放しては正確に敵を仕留めるイゾウにそう茶化して言えば、言葉より早く作為に満ちた流れ弾が頬を掠る。いやいや、ボケるのも命懸けって。冷や汗をだらだら流し、麗しの隊長殿から逃げるようにサッチは船の中へと走っていった。

そうして壊れた扉をくぐり、すぐに酷い鉄の臭いと死臭に顔をしかめる。なんともまあ、嫌な臭いが鼻をつく。しかし勝敗は火を見るより明らかで、どこももうあらかた片づいていた。置物のように倒れている、見覚えのない顔の死体をできる限り踏まないように船長室であろう部屋に足を踏み入れる。





「なァんか、親父に持って帰れそうなもん…んん?」






首を傾げて見た先には、ごついだけの装飾の趣味の悪いテーブルがあった。その下の床の色が、微妙にだが違う部分がある。もしかしてとまだ新しい木目に指をかけて引っ張る。がたん。ずれた床に「ビンゴ…」と呟いて、サッチは頭ごと突っこんだ。そしてそこにしまってあった、いかにもな大切なものですオーラを醸し出している宝箱を引っ張り出す。中身はなんだろうか。海賊としての血が騒ぐのか、やはりいつだって宝箱を開けるときはドキドキする。鍵はついていないので、そっとフタを上にあげた。





――――ギィ、イ……





「………こいつァ…、」









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