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その2








上機嫌に笑う親父の声に眠気が吹き飛んだのか、こしこし目を擦りながら不死鳥の羽根を握っている。うん、可愛い。顔をだらしなく緩ませるサッチだったが、瞬きをくり返す姿に起こしたことに罪悪感が湧く。眉間に似合わないしわを寄せて、んむうと唸る子供。どうやら心地よい夢から起こされて、ご機嫌ななめになってしまったようだ。

泣かれないだけまだマシかもしれないが、やはり可愛い子には笑ってほしいと思うのは大人の勝手な都合だろうか。そんなペチーノをなだめるように、親父は眉を下げて「起こしちまったなあ…」とちんまい頭を撫でた。そして、もう一度寝させてやったほうがいいかもしれない、と言葉を続ける。





「部屋に戻るか、ペチーノ?」
「いやー、いっしょがいーい」
「そうか…何か飲むか?」
「ジュース!」






ぱっと表情を明るくして言うペチーノにほっと一安心して、親父はサッチに飲み物を持ってくるように言う。お使いだとか頼みごとといえば聞こえはいいが、所詮はパシリだ。やっぱり息子より孫のほうが可愛いのかね、まあ親父だからいいけどとサッチはどっこらせと腰をあげた。

おねむなお子さまには冷たいジュースじゃなく、温めのココアが丁度いいだろう。ふと船内にいく前にちらりと子供を見れば、きゃっきゃと笑って親父のひげをわしづかんでいた。いつも思うが、実はペチーノがこの船で1番の権力者ではなかろうか。孫と祖父の戯れを背中にキッチンへ向かおうとしたが、ふと親父に呼び止められた。





「おい、サッチ!」
「なんだあ、親父?」
「ついでに悪魔の実も持ってこい!」
「しゃっち、うさぎ!」

「……あいよー」






きらっきらの笑顔で手を振るペチーノに引きつった笑みを返して、サッチは今度こそとキッチンへ向かった。親父の“うさぎってなんだ”という不思議な視線が痛い。戻ったら説明しなければ確実に誤解されたままだ。

ちなみに、マルコはまだ起きない。酒が効いているのか、それとも親父の膝の上がよほど寝心地がいいのか。それにしても寝汚い鳥だとひそかに笑って、サッチはココアの元を戸棚から出す。そして、子供用のプラスチック製のカップ(ひよこのイラストつき)へ入れて、沸かした牛乳を注ぐ。








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あきゅろす。
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