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少し驚いて瞼を上げれば、大きなどんぐり目と左頬に走る傷痕。
まさに天真爛漫を体現した子供が、数cm先にいた。
その顔にはこちらまで笑顔になってしまうような、輝かんばかりの満面の笑みが飾られている。
何か良いことでもあったのか。
なまえはルフィ、と船長の名を呼んだ。
「ん?なんだ?」
「何かいいことでもあった?」
「特にねえ!」
「そうか、特にないか…」
胸を張って答えてくれたルフィにくつくつと沸き上がる笑いを外に出す。
戦闘以外では年相応かそれ以上に幼い彼は、そのなまえの反応が嬉しかったのか更に笑みを深めた。
そしてそのまま言葉通り腕を伸ばして、なまえの腹へ二重三重に巻き付ける。
ゴム特有の締め付けるような感覚に多少の息苦しさを感じながらも、背中に密着しているルフィを好きにさせておく。
そうして行儀良く並んだ洗濯物が風に飛ばされないよう見張ること数十分。
暇を持て余し気まぐれになまえの髪を触っていたルフィがあ、と声を上げた。
「おやつだ!」
「…相変わらずの嗅覚だな」
ひくつく小鼻を見て呆れ半分に感心する。
強い潮の香りに消された仄かな菓子の匂いを嗅ぎ当てるなんて芸当は、何処を探してもルフィしかいないだろう。
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