トイレに行きたいだけですよ
「ところでさ、二人は今何歳なわけ?」
地味に気になっていた話題を振ってみる。
「は?教えるワケねーし」
「五百歳ですー」
「いや、明らかに嘘だよね」
「そういう咲サンは何歳なんですかー?」
「今年で十八になります、えへん」
「……残念ですねー」
何がよ。主語が無いじゃないの、主語が。
「実年齢にそぐわない咲サンの頭がですよー」
「あれれのれ、フランもどっかのダメボスみたく読心術が使える人だっけ」
「はー?今、口に出てましたけどー」
「あ、そーゆーパターンかー」
ありがちだなぁ、私。まさか自分がやるとは思わなかったよ。恥ずかし。
「あり、さっきのうるせー鳥はどこいったし」
「あぁ、飛べそうだったからね。外に放してあげたよ」
私なんかが閉じ込めておいたら可哀想でしょ、と言えば何故かベルに驚かれた。(いや、実際は顔の大半が隠れててよくわかんないけど)
「べっつに籠でも買ってきて飼えばよかったんじゃん?」
「だから可哀想だって。―――いいんだよ、またいつか会えるかもしれないし」
…二度と会えないかもしれない、の裏返しだけどね。
「ふーん」
「ベルだって拘束されたくないでしょ?」
「…お前、変なヤツ」
「は?」
いやいや、血を見て興奮する自称王子くんに言われたくないけど。
るーさんかぁ。
私も一瞬迷ったけど、やっぱり動く生き物は自由に生きるのが一番だと思うし。
あ、そんなこと言ったら今の私はそれこそ“鳥籠の鳥”ってとこなのかな。――まぁ戯れ言か。
おっと、いけない。私の悪い癖。
直ぐに自分の世界に入っちゃう。
「ねぇ、ベル―――」
ん?
「だからよ、――――」
「はー?そんなの―――、」
およよ?
なんか難しい単語が飛び交ってるぞ。
私には接続語しか聞き取れん。―――つまんない。
しばらくはじっとしていたものの、退屈に飽きてきた私は座っていたふかふかなソファーに別れを告げ、コソーリと部屋から出た。
へへへ、脱出成功っ!
探検しよっと、にししし。
「ふっふーん」
軽快に鼻歌を歌いながら延々と続く廊下を進む。
「しっかし広いなぁ…掃除が大変だ」
一体全体いくつの部屋があるんだろう。
考えるだけムダだと分かっていても、つい誰かに聞きたくなる。
てか、ひとつひとつが無駄に豪華。無駄に広い。無駄尽くし。
「おろ、ちょみっと他より立派じゃないかこの扉」
それは、今まで無機質に続いていた扉とは少し違う様式だった。
好奇心と興味心から、その部屋へと足を踏み入れた。
「…うっわ、何もない」
何も、なんて言ったら語弊あるかもしれないけど。
でも本当に、必要最低限以下のものしか置かれていなかった。
ソファーとテレビと簡易キッチン。
そんな部屋じゃ、することもないのでとりあえずソファーに腰かけた。
「わ、ふかふかだ」
何回かぼふんぼふんと跳ねてみたり。
数分後、疲れてきたところでボーッとしていれば、なんだか睡魔が襲ってきた。
時差ボケってこのことなのかな…。(違う)
まだ窓からは太陽さんこんにちはだけれど。―――ぐっない、おやすみ。
* * * * *
「…あれー、咲サンはー?」
「は?知らねーし。トイレでも行ったんじゃね?」
「あの人トイレに辿り着けるんですかねー」
「……。おい、探すぞカエル」
「はーめんどくさ、了解しました堕王子ー」
探検なんてしてませんよー
あくまでも、トイレを探しているんです。
fin.
・・・・・・・・・・・・
面倒事大好き咲チャン。
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