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木の上から参上!


 ほら、***なんてよく言うじゃない。

あの人の最後の言葉がふと、頭を過る。
私はそんなオカルトで迷信で、普段よく使うような嘘なんて信じてなかった――――ううん、今もまだ信じてない。

でもきっとこれは、罰当たり、だ。
木の上から参上致しました。


うん、そんな戯言もほどほどに。
とにもかくにも、ここは何処?
え、なんかひたすら木ばっかなんですけど。


「……何これ」

全く状況が理解出来ない。
確か私は、自分の部屋にいたはず。
なんか頭の中にもやがかかったみたいで記憶がハッキリしない。
ていうか、こんな森、知らない。

途端、背後からガサリと音がした。
ビクッと振り返ればただの鳥で。


「…なんだ、びっくりした」

しかしよく見れば、その鳥は羽から血を流していた。
飛ぶ力も無いのか、私が手に乗せても逃げなかった。
……やば、可愛い。


「あは…お前も1人なんだ?」

なんとなく自虐的に。

すると、ガサリとまたも草の揺れる音がして。



「あれ、また鳥さんかな―――」

「……あんた、何してんですかー?」

「へ?」
 

わわ、今度は人じゃん!
私この人に向かって鳥さん呼ばわりしちゃったよ。


「…なんでここにいるんですー?何者ー?」

「いや、私にもサッパリ」

「はー?」

「え、てか間違ってたらごめんなさいなんですけど」

「無視ですかー」

そこで一旦言葉を切って一呼吸。


「フラン、だったりします?」

「なんでミーの名前ー…スパイですかー?」


そう言ったフランからは信じられないくらいの殺気が。
漫画で見ている時はボケッとしたイメージしかなかったけど―――。


「なぁんだ、ちゃんと暗殺部隊っぽいじゃん」

「…は?」

あ、殺気が緩んだ。

「てかなんで私がここにいるか、理由知らない?」

「ミーが知るわけないじゃないですかー」


あんたあそこから落っこちてきたんですー、と言われた方には一本の大木。
え、私木の上でお昼寝とかしてないと思うんだけど。


「あ、私咲」
「(…なんだよこの女ー?)」

「まぁ座りましょうや」

「…なんでー」

「いいからいいから」


そうフランを促し、草むらにドカッと座った。


* * * * *

またあの堕王子が喧嘩ふっかけてきたから城から出て逃げていたのに。なんか、人が降ってきた。
ていうか落ちてきた。

いや、ていうか極力面倒事は避けてきたのに。


「あんたのせいで水の泡だこのやろー」

「え、何か言った?」

「何でもありませーん」


あー、ミーが餓鬼みたい。
てかほんと、コイツ誰だよー。
どっかから入ってきたならすぐわかるんだけどな、この女はいきなりただ現れたから。
まるで―――瞬間移動したみたいに。
いや、テレポーテーションとかの方がしっくりくる。

とにかく、部外者なのだから、殺さなくては。


そう決し、いざ殺ろうとすれば当の本人から間延びした声が。

「フランくーん」

「…なんですか」

「私、―――――トリップしたみたい」


だよ、と言ってえへへっと笑う彼女に一瞬心が動いた気がしたのは、きっと気の迷い。
てか、トリップって…?


「あ、トリップ知らないかな。
分かりやすく言えば、私は漫画でフランくん達を知ってるんだよ。それで、つまりは異世界みたいなものかな。
――まぁ、とにかく私はこの世界の住人じゃないんだ」


淡々と語った彼女。

なんだろう、この違和感。
まるでこの抵当のアクシデントまでもに場馴れしているような…?
 

いや、こんなのはそうそうあることなんかじゃない。
きっと冷静なんだ、この人。

そう勝手に解釈して、それならそれで話すには好都合だな、なんて。


「まぁなんとなくは分かりましたがー…曖昧ー」

「みーまいん?」

「は?いや、曖昧」

「みーまいん?」

「……あー、そーいうことかよー」


ミーが曖昧(アイマイ)って言ったから、ミーマインって返ってきたのか。アイマイミーマイン。

―――くだらなっ。


「ときにフランよ」

「あれー初期キャラ消えたー」

「この近くに民家はあるかの」

「はぁーまぁ無いとは言いませんがー」

「連れていってくれ」

「えー…」


あそこに、連れていく?
あの物騒な城に?

いや、人を招き入れること自体は問題がない。何かあれば殺せばいい。
だが、この女は―――。


「鳥が、怪我してるんだよ」

「……」

「弱って死んじゃうんだよ?
助けたいとか普通思うでしょ」
普通、という言葉にチクリと胸を痛めた。
ミー達は“普通”じゃない。


「…分かりましたー」

「ありがと―――ってちょちょちょ!」

彼女を横抱き(姫抱きとも言う)にすれば、慌てふためかれた。

「口開くと舌噛みますよー」
 
「っ」

「じゃあ行きますー」


あー、なにやってるんだよミーは。
こんな異世界から来た異分子なんて、余計に殺さなきゃいけなかったはずなのに。


なのに、気づけば彼女を抱き抱えて走っていた。


fin.

・・・・・・・・・・・・

旧いらっしゃいませ。から新いらっしゃいませ。に!

内容は全然違いますから、またお楽しみ頂けたらなぁ、なんて。


前作を見ていただいていた方々、消してしまいすみませんでした!←

 



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あきゅろす。
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