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れっつ探検。


「探検行きましょー」

「は?」


それは、あの衝撃過ぎる出会いから数十分後のこと。

なんとも言えない沈黙の漂っていた和奏の部屋だったが、フランの声によって断ち切られた。



「いや、探検って…」

「だってーココは“異世界”なんですよねー?
気になるじゃないですかー」

「ダメだよ、絶対ダメ!」

「えーなんでですかー…」

「フランは目立つの。
皆に見られるの。私は嫌」

「ミーが人に見られるのがそんなに嫌なんてー。
嫉妬ですか「違うわ!!!」

とんでもない勘違いをされた。


「バカガエル、あんたは漫画に出てるから目立つってだけ!
冗談も休み休み言ってよ」

「ミーの名前はフランなんですけどー…」

「どっちも一緒だっての!」


鉄面皮のフランの表情がピクリと動いた気がした。


「とにかく、ダメったらダメ」

「えぇー…あ、じゃあ幻覚で変装しますー」

そうか。
カエルにはその手があったか。
 

「んー……まぁそれなら…」

「はいけってーい。れっつごー」


そう言うが早いか、カエ…フランは窓枠に飛び乗った。
今にもそこから飛び降りそうな姿勢で――――――。



「ちょちょちょストップー!!!」

「はぁー…何ですかー?」

「ちょ、そんなあからさまにため息つくのやめてよ、ていうかココ3階なんですけど?」

そう言っても、だから何、と言わんばかりの表情のフラン。


「…あ、和奏サンは一般人だからココから飛び降りるなんて怖いですよねー」

「べっ別に怖くはないし…っ」

何言ってんだ私の口。


「へぇー。
じゃっ後から飛んできて下さいねー」


フランはそれだけ言うと、サッと窓枠の外側へと消えてしまった。



…どうしよう。
負けず嫌いな性格が出てしまった。
3階からなんて、常人が飛んだら怪我は免れなくない?


「和奏サンー
別に強がってなくていーですよ」

「つ、強がってなんてないもん!!」

馬鹿とは私のことを言うのだろう。


「ま、待っててよ!!
今飛んでやるんだから…っ」

阿呆とも私のことを言うのだろう。


「はぁー…」


そんなため息が聞こえた気がするが、そんなの聞かなかったことにする。
こういうのは、早く飛んだ方が怖くないよね、うん!

もう本当に馬鹿としか言い様のない咲は、
窓枠に乗り、

 飛 ん だ。
あいきゃんふらーいっ



―――――落ちる!!(当たり前)
あいきゃんとふらーいっっ



ドスンッ

「ぃぃいった――…く、ない」

「早くどけ鉛女ー」

「はいぃぃぃい!!」


ズザザッと、取り敢えずその場から1m程離れた。
下にいたのは――――フランだった。




「えええぇえ…っ
ななななんで!?」

「せめて日本語喋ってくれますかー?」

パンパンと、あの黒い隊服を払いながら立ち上がったフラン。

私が地面に叩きつけられそうだったから?
だから守るために下に―――ってえぇえぇぇ!?

私 を 守 っ た ?


「あー言っときますけどー。
和奏サンを庇ったワケじゃありませーん」

「へ、」

「和奏サンが落ちてきたところに、たまたまミーがいただけですー。
甚だしい勘違いはやめて下さいねー」

「……」



私、知ってるんだけど。
本当は落ちる場所とは2、3m離れた場所にいたこと。
…落ちる途中じゃなかったら、フラン焦った表情でも見れたのかな。

それに、ヴァリアーなんでしょ?
真下にいたとしても、避けれたハズ。



「くすっ……ありがとう。
鉛女、は聞かなかったことにしてあげる」

「…可愛くない女ー」

「そっくりそのままお返しします。」


―――――――……

なんだかんだ、ようやく街まで出てきた。
このクソガエルは一体どんな幻覚を使ってるか知らないが、結局かなり注目された。

…そか、カッコいいもんね。


なんとなく、悔しさと同時に嫉妬に似た感情を抱いた。

…え、ちょっと待って。嫉妬なんてない。
こんなの、生意気過ぎる弟みたいなもんなんだから。


「百面相は一緒にいるミーが恥ずかしいのでやめて下さいー」

「してない!!」


それにしても、フランは物珍しげにキョロキョロと見ている。
でも、ボンゴレもいるんだし日本自体は別段珍しくもないんじゃ――?


「異世界だから珍しいだけですよー。
ボンゴレーズと対面よりは任務の方が多いですけどー」

「ふぅん……って読心術使わないでよ!!」

「和奏サンは、心の内を口に出すんですかー」

「出てたんだ…!」

恥ずかしすぎる。



ふ、と。
フランの視線がある店に向けられた。
暫く見たかと思えば、私の手をパシッと握ってその店に連れて行かれる。


「いた…いたたたた…!!」

握って、否、掴んで。


「いらっしゃいませーっ」


そこはメンズの服屋だった。
え、買うのですか。残念ながら学生の私はブランドの服を買うお金など持ち合わせていませんが?

「え、買うの?」

「いつもいつも幻覚なんてクソめんどーなんで」

それだけ言うと、適当に選び始めたカエルさん。


「コレとコレとー」

「え、ちょ……っ」


私の腕の内に増えていく衣服。
お…重い……!!


「ね、ねぇ試着しないの?」

「めんどくさー」

「サイズ違ったらどうすんの。
ホラ早くしてきて!」


お母さんのような押しでフランを説得させた。
フランは渋々試着実に行った。


* * * * *



…うわー。うわー。
何コイツ、え、何なのよ。
格好よすぎじゃない?

細いしセンスいいし…


「ガン見されると恥ずかしいんですがー」

「へ?あ あぁ…いいいいや!!
べべべべ別にそんな見てないから!!」

「(“い”と“べ”多ー…)」

「ただちょっと……
長く見ちゃっただけだし」

「……」



―――――あぁもう!
何なんだ私の口。
結局、ガン見してたことを自分で肯定してるじゃん…。

このカエルは顔を逸らして笑い堪えてる!
肩震えてんだよ!

「……はぁあ」

「和奏サン……保育園からやりなおしますかー?」

「なんでよ」

「会話の仕方から見直した方がいいかとー」


失礼にも程がある!

「あ、すみませーん。
保育園じゃーあまりまともな会話できな……あ、和奏サンの語彙なら大丈夫ですねー」

すみません、にちょっとでも良い感情を抱いた私の心を返せ。


「さてーもう買って出ましょうー」


何処からか黒いカードを出してさっさと会計を済ませたフランは袋をユラユラさせながら出ていった。



* * * * *

あの後。

適当にブラブラと歩いていた私達。
フランがいちいち“アレ何ですか―?”と聞いてきてウザい。


「あ、アレ何ですか―?」

「(まただよ…)あれは、クレープ」

「………」

「?フラ―――」

「食べましょー和奏サン」

「はっ?」


そう言われるが早いか、グイグイと手を引っ張られていく。
ちょ、フランて甘党キャラだっけ?似合わない…。

ベルとか甘党っぽいけどなぁ…。そうだったらいいなぁ。



バシッ

「痛っ!何すんだバカガエル!」

「なんか和奏サンが余計なこと考えてる気がしたのでー」


鋭い。
さすが霧部隊隊長。(何が)

「何がいいですかー?」

「へ?あ、あぁ……いちごカスタード…」


って、これじゃあフランが奢ることになってしまう。

「ねぇ、自分のは自分で払うよ?」

「いいですよー。金欠な和奏サンの財布を蝕むつもりはありませ―ん」


失礼な。
クレープ買うくらいのお金はあるわ。

そう考えている内に、もう既に両手にクレープを持ったフランがいた。

「ハイー」

「…ありがと」

「最初から素直に言っておけば良かったんですよー」

「素直じゃなくて悪かったわね!」


ムスッとしながらも目の前のクレープにかぶりつく。
あ、美味しい。


「機嫌、直りました―?」

「…はむ?」

何がだろうか。
私、何か機嫌悪くしてたっけ。


「あんまり楽しくなさそーでしたから―」

「――――」


そう、和奏からふいっと顔を逸らして呟いたフラン。
その横顔に覗く赤い頬を見て、咲は小さく笑った。


―結構、イイ奴じゃん。――


「…何ニヤニヤしてんですか気持ち悪いです―」

「ふふっ何でもありませーんっ」

「……ブタになりますよ―」

「うっさいわ!
てかクレープ食べようって言ったのはフランでしょ!」


なんなんだこのカエルは。
人がせっかく好印象を持った瞬間ブチ壊すんだな。


でもいいさ。
今の私の心は酷く寛大だからね!
ちょっとやそっとのこと、気にはしな―――――

「和奏サ―ン。口元に生クリーム付いたままでアホっぽすぎます―」

「もうカエル黙れぇぇえ!!」


前言撤回。
カエルはカエルのままだ。
イイ奴?否、それはきっとめいびぃ幻覚だ。

…だから、生クリーム付いてることに気付いた時のフランの顔が近かったからって、ドキドキなんてしてないんだから。



end.

(ソレ、取ってあげますー)
(え、あ…ありが――)
(口で)
(いっぺん死ねクソガエル!!)
(ゲロッ)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最後、勝手にフランを変態ちっくに←




 
 



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