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一人



一人は嫌いじゃない。寧ろ好きな方だ。
一人で本を読んでると落ち着く。
言い過ぎてしまえば、私は世間一般では根暗と呼ばれるのだろうか?

いや、私は(自慢じゃないけど、)友達が多い方だと思うし、話すのも大好き。
この前だって、話しすぎて酸欠起こして倒れた。…これは誇れることじゃないけど。


でも、やっぱり、一人の時間というのは私にとって特別な物だ。
無くしたくはない、のに。




机の上に、学校の図書室から借りてきた本を広げて私は髪を一回、かき上げた。
学校の図書室から借りてきたと言っても、借りたのは一週間前。
元々飽きっぽい私は大体三日前後で読み終わらせて次の本を借りるのだけれど。


最近、小さな来客者が現れるせいか、いかんせん本に集中出来ない。

彼はちょうど私が本を読もうとする時に現れるのだ。



「お、なかなか良い本読んでるじゃねーか」
ふわりと、本の表面に影を落としたのはやはりいつもの彼だった。
「コエムシ、」
目の前に浮かぶ白い塊を私は見上げて口を尖らせた。
「なんでまた来んのよ」
「暇だからに決まってんだろ」
知るか。ああ、こいつ今すぐにあそこのごみ箱にポイしたい。
それがいつの間にか行動に出ていたのか、手をわきわきと動かしている私をコエムシは不審そうに見ていた。(と言っても表情は分からないけど)


「お前、本当に一人が好きなんだなァ」
「悪いこと?」
そう返す私に、コエムシは体を横に振って、いーや?、と返事をする。

「そんなに好きならお前を最後の一人にしてやろうか?」
もちろんコエムシは私を気遣って言った訳じゃない。あいつの性格からしてまず無い。

「何言ってるの、」
だから私は、敢えて笑顔で言おう。貴方に負けないくらいに皮肉たっぷりに。

「貴方が最後の一人じゃない」


コエムシが、ほんの少しだけ顔を歪ませた気がした。




独り





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あきゅろす。
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