世界の始まりを、私は目撃した。
中学に入りたての頃、周りにいる全ての人が怖かった。
にこにこ笑って、どこかで私のことを蔑んでいるんじゃないかと思った。(やっぱり、皆はもう、子供じゃないから)
誰も私に近づかないで欲しかった。
この先ずっと一人のままかも、と思った矢先、話しかけてきたのは、誰だったか。
放課後に、ひっそりとした小さな公園のブランコに私は乗っていた。
「ねえ、ヨリって呼んでいい?」
いきなり隣から声がして、ぼんやりとしていた頭を覚醒させ、見遣れば私と同じ年くらいの少女が座っていた。
「…なんで、私の名前知ってるの?」
少女はそれを聞いて、え… と頬を掻く。
「なんでって…同じクラスでしょ?」
「…あ…」
いきなり同じクラスと言われても、記憶力が乏しい私の頭(覚えようともしてなかったけど、)では、名前が出てこない。
息詰まってしまった私は眉を寄せて、目線を落とした。
しばらくの沈黙。嫌われただろうか。
別に今更、嫌われたって構わないけど。
「…私、阿野 万紀。 今度こそ覚えてね」
少女は、俯いたままの私の顔を両手で持ち上げ、空を仰がせた。ああ、なんて綺麗な夕焼け。
そしてその夕焼けをバックに、少女の顔を今初めて見たような気がした。
世界の始まりを、私は目撃した。
*前次#
無料HPエムペ!
|