[携帯モード] [URL送信]
エリー
暑いなぁ。


ほんといらいらする。


なに自分汗とかかいちゃってんの?きもい。


「ねぇ譲二汗かいてるよ」


「知ってんよ」


「暑い?」


「暑いよ」


「ねー、暑いよねぇ」


「…」


「なんかさ、こう暑いとカラオケもめんどいよね〜」


「ああ」


これは同意というか面倒だから発しただけの言葉。


「その、温泉とかいいだろうね。
汗流してさ、宴会場でお酒飲んでついでにカラオケ〜みたいなさぁ」


「…」


「ね?」


「何が言いたいの」


てか宴会場ってなんだよ。


「ララララブホテルでカラオケってのもどうかなぁと」


「…」


「思って、さ」


エリーはそう言って俯いた。

「行くか」


「うん!」


年下、まだ高校生のエリーとは出会い系サイトで知り合って半年。


現役JKだけあって、まぁ制服が似合う似合う。


「これ着とけ」


俺はエリーに自分のパーカーを渡した。


「うん」


制服丸出しじゃ入れてくれないでしょ。


ラブホテルに入り、フロントでエリーは俺の後ろに隠れて一言も喋らなかった。

賢い。


うるさい女は嫌いだ。


302と書かれた鍵を持ってエレベーターへ。


エリーが三階行きのボタンを押した。


無言の二人を乗せてエレベーターは勤めを果たした。


鍵をかけて中に入ると、ちっぽけな世界が視界に飛び込む。


この上で行われる事はほぼ一つしか無いと言わんばかりの大きな四角いベッドが部屋の半分を占め、


その奥にカウンターのテーブルと椅子、テレビ、扉も挟まずに洗面台がある。


ドアから真っ直ぐに10歩行けば風呂場。


トイレはというと、ドアの隣にひっそりと存在していた。


「せめぇ」


「そうだね」


俺のため息とともに吐き出された呟きにも、エリーは頷きながらにこにこしている。


「wii借りよう。すぐさま借りよう」


俺はエリーにまだ手を出していない。


多分この女は簡単にさせるだろうけど、何だか最近飽きてて。


セックスなんかより今はゲームをやりたい。


俺はベッドに腰掛けてフロントに電話をかけた。


「wiiって今お借りできますか。…あ、はい、お願いします。


ソフトは…」


俺はカートゲームのソフト名を告げ、電話を切った。


「珈琲でも飲むかな」


そう言って立ち上がると、カウンターの椅子に座っていたエリーがポットを水で流してから中を満たし、
コンセントを差した。


「さんきゅ」


「いえいえ」


エリーはずっとにこにこしている。


作業が終わってから、エリーは俺の隣に座った。


「ちゅーしていい?」


「はぁあ、ああ」


あくびを中断して答える。


エリーはにこにこしながら顔を近づけ、軽いキスをしてきた。


キスの応酬。


俺もやられるとノッてきちゃう。


唾液が絡む。


「んー」


エリーが俺に馬乗りになった。


セックス突入か。


ああ、そうですかはいはい。


また女相手に無駄に喜ばせて、そして幻滅される。


退屈。


「…やめ」


押し退ける。


「ん?」


「やめやめ。wii早くこーねーかな」


こんなとき、俺は相手の目を見るのが怖い。


悲しい表情が見えるだけならいい、


が、


セックスを断ったときの顔には


怒りと憎悪しかない。


プライドを傷つけられたことによる感情だ。


何故かわからないがいつもそれが悲しい。


しかし、エリーが何も言わないのでちらっと彼女を見た。


エリーは相変わらず笑っていた。


「ん、どしたの?」


じっと顔を見つめられ、照れたような笑顔が混じる。


「…別に」


聞いてもねぇのにエリーが言う。


「あたし、会えるだけでいいんだ」


自分のプライドが傷つけられた


自分は抱いてもらえない


自分はセックスがしたいのに


自分自分自分。


俺はセックスを断ると同時に


相手の、俺の気持ちより自分を優先させて表れる表情を見るのが怖かったんだ。


俺の気持ち、ってのも自分優先の証だけど


こいつの為なら自己犠牲っていうのも悪くないのかもしれない。


と思ったが


「だからってセックスはしてやらねぇぞ」


「ばっ…わかってるよ!どんだけあたしやりたいキャラなのw」


「はは」


「譲二初めて笑ったーちゅうしていい?」


「あー、いくらでもしろ」


と、安っぽいチャイムの音。


「wiiかな、はーい」


エリーがドアに走る。


これが噂の「好き」なのかも。


いやそんな簡単に好きにはなんないよ。


なんかよくわかんない。



悔しいのでゲームでこてんぱんにしてやろう。

[*前へ]

9/9ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!