迷わずいってきます(吹松)
※大学生で2人は一緒に住んでます。
靴の中に染み込まない程度に、水溜まりを踏んでいく。パシャパシャ。さっきまで降っていた雨は止んでしまった。せっかく同居人の為に傘を持ってきたというのに。もうどうせなら、待って一緒に寄り道をして帰ろう。
帰る時間は出かける前に聞いた。雨降りそうだとも言った。しかし聞いてなかったのか、忘れたのか同居人は持って行かなかった。今日は授業もバイトも無いから、ゆっくり出来ると思ってたのに。
携帯で時間を確認する。後10分で終わるようだ。同じ大学には通っているけど、学科が違う。だから同じ授業を取れるのは限られてしまう。家に帰れば何時でも一緒だけど。
「あれ…?」
声がしたほうを向くと、同居人がほうけた顔をしていた。
「べっつにー、雨降ってたから、」
「そっか、ありがとう。でも雨止んじゃったね」
「だから、これからどっか行こうよ」
「うんいいけど、どこに?」
「アクセサリーみて、服みて、晩御飯も食べてこうよ」
そう言ったら、嬉しそうに彼は笑った。まるでデートだねって言われた。そのつもりだったのに。
「いつまでもここに居ても時間ないし、行こっか」
なんだか彼には、全て見透かされているような気になる。きっとそうなんだろう。
(僕だって、男だ。だからリードしたくなる時もあるのに)
「でも僕も、男だからね」
彼に思考を読まれたようなその発言と、深い笑みに、明日バイト行けないなぁと頭の片隅で思った。それでも彼のことが嫌いにならない自分も相変わらずだ。それと同時に彼が、朝玄関で言っていた言葉を思い出す。
「あれ、?吹雪もしかして、明日休み…?」
「そうだよ、明日の授業が休講だからね」
「………」
「だから覚悟しといてね、松野くん」
迷わずいってきます
(僕普通に授業があるんだけど…)
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