同等の意義(病み伊日)
ぐしゃりと音がした。暗い中でも彼の目だけが怪しく光って見える。その眼光は凍てついている。
彼をここまでしたのは、私だ。
「ねぇ日本、何とか言ってよ」
「……断ります」
彼の目に怒りが混じる。でも彼を喜ばせたくない。こうして普段怒らない彼を怒らせて、私だけを見てくれば良いのに。
「私はイタリアくんが大嫌いです」
「俺はその何倍も日本が嫌いだよ」
嫌いと言われて悲しくないはずない。でも嬉しいのだ。
まだ睨まれている。お返しとばかりに睨み返す。一瞬彼がたじろぐ。だがこんなやり取りは何十回もしてきた。
先程彼が踏んだお握りはもうかぴかぴに乾いている。まるで私達のように渇いている。
愛してるなんてちんけな言葉。私と彼には当て嵌めたくない。
だからあえて逆にする。
「貴方のその性格、一体何人の方が知ってるんでしょうね」
「そういう日本も最悪だよ。その性格。笑えてくるよね」
冷笑を浮かべる。
こんなやり取りが楽しいだなんて。
そんな私達が恋仲だなんて誰が想像する?違うという輩がいたらせせら笑ってやろう。
いいでしょう?
こういうような愛し方も。
「日本、日本、また作ってねお握り」
潰されたお握りを指差し、言う。今度も望み通り作ってあげよう。甘いあまい毒入りお握りを。
そして彼に踏まれるのだ。
「御望みとあらば、」
そして彼に言うのだ、イタリアくんが世界で一番嫌いだ、と。嘲笑しながら。彼の冷たい目線と相対しながら。
愛?恋?好き?
そんなのいらない。
彼が、私を見てくれればそれで良いのだ。利己的に生きなければ。
結局――
私も彼も、
彼から私から、
逃れられないのだ。
無料HPエムペ!