MARE(伊日)
Vieni, vieni, o mio diletto...
(おいで 愛しい人よ…)
ゆっくり微笑んで貴方の名を呼ぶ。
「 」
二人の目の前に広がる母なる海の風に煽られながら。
Quando avvien che un Zeffiretto per diletto bagni il pie nell'onde chiare,
(きまぐれな西風が輝く波間に足を浸し)
ざざーん。
引いては押し返し。
潮の香りを運ぶ。
二人の間にあるのは静寂ではない。
圧倒されし感動。
泣きたくなる。
母なる海。
si che l'acqua su l'arena scherzi a pena,
(水が微かに砂浜と戯れる その瞬間を)
二人は意を決する。
「日本を愛している」
「イタリアくん好きです」
二人同時に同じ台詞。
どちらが早かったかは二人にはわからない。
noi diciamo che ride il mare.
(私達は「海が笑う」と言う)
そして二人同時に頬を赤らめる。
初々しく。
どこか清々しく。
告白が当たり前のように感じて。
Ben e ver: quando e giocondo ride il mondo,
(そう 晴れやかな時に 世界は微笑み)
ざざーん。
波はうねりを繰り返す。
それが当たり前かのように。
悠然とただただそれを繰り返す。
ride il mare quando e gioioso;
(そして 楽しい時 海が笑う)
そして、二人は目を会わせると。
どちらかともなく口づけを交わす。
ごく自然起こる出来事のように。
一種の誓いをたてるかのように。
額を会わせて二人して微笑む。
二人の側で海はうねりを繰り返す。
ただただ悠然とあるがままに。
関係ないと言わんばかりに。
海はただただ夕日を波間に映し出す。
二人を赤く染めるように。
鳥が飛び立つ。
自分のあるがままに飛んで行く。
また母なる海は大きくうねりをあげた。
ben e ver: ma non san poi, come voi, fare un riso grazioso.
(けれど そのいずれも
貴方ほどの優雅な笑みを
もたらすことは出来ない)
古伊語部分(翻訳)
志方 あきこ「廃墟と楽園」収録
MARE(Andante molto espressivo)より
古イタリア語詩(作者不詳)らしいです。
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