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キリリクの部屋
7000HIT記念ボンド様リク[ユーノ×なのは]by瑠璃子
激しく降りしきる雨の中、私は逃げ出した。
呆然としているあの人を置いて、雨に濡れるのも構わずに。
今は、その場からできるだけ遠くへ、逃げたかった。



雨はとても強く降っていた。
朝から曇り空だったが、夜になってとうとう降り出したのだ。
その日、フェイト・T・ハラオウンは六課の寮の自室から、ずっと窓の外を眺めていた。

「・・・・なのは」

その時、いきなりドアの開く音がした。あわてて振り向くと、そこにはずぶ濡れになった親友の姿があった。

「な、なのは!?一体どうしたの?こんなにずぶ濡れになって・・・・とりあえず、早く着替えないと。待ってて、今お風呂入れるから!!」

フェイトがバスルームに行こうとすると、その手をなのはに掴まれた。

「!!・・・・なのは?」

床に水滴がポタポタと落ちる。しかし、それは体から落ちる水滴だけではなかった。

「・・・・・・フェイト、ちゃん」

なのはが顔を上げると、その顔には何本もの涙の筋が出来ていた

「フェイトちゃん!!!」

なのはが大声を上げ、泣きながら自分の胸に飛び込んできた。
フェイトはそんな泣きじゃくる親友を、ただただ、やさしく抱きとめることしか出来なかった。

その後、なのはが落ち着くのを待って、事情を聴くことにした。
お風呂はまだ出来ないので、フェイトはなのはの髪を拭きながらゆっくりと聞くことにした。

「それで、一体何があったの?」

「あのね、今日、ユーノ君から久しぶりに夕食でもどうかなってお誘いがきたの。それで、ご飯を食べた後、すこし散歩しないって言われて、そこの公園を一緒に散歩していたら・・・・」

なのはが急に黙り込む。それを視て、フェイトはそのときにユーノと何かあった
と直感した。伊達に十年来の付き合いではない。
男と女、薄暗い夜の公園でされて、しかもなのはがこんなに落ち込むことといえば・・・・・・

「まさかなのは・・・・襲われたの!?」

「ふぇ!?ち、違うよ!!なんにもされてないって!」

「じゃあなんでそんなずぶ濡れで帰って来たの?!」

「そ、それは・・・・その・・・・」

なのはがまた黙り込む。
フェイトの直感が確信に変わる。おのれ淫獣、なのはを傷物にした罪万死に値する。

「こ、告白されたの!!!!」

「・・・・・へ?」

フェイトが脳内でフェレットへの拷問を百八式ほど考え付いたとき。なのはが遂に重い口を開いた。

「公園を歩いていたら、突然。私、なんだか頭の中真っ白になっちゃって、何がなんだか頭がパニックになっちゃって、そしたら、急に怖くなっちゃって、今までの関係とか全部壊れちゃうんじゃないかって!・・・・・だから、私、何も言わずに逃げちゃったの」

なのはの声にまた、嗚咽が混じり始める。話している内にその時のことを思い出したのだろう。フェイトは黙ってなのはの話を聞いていた。

「どうしようフェイトちゃん!?私、大変なことしちゃった。せっかくユーノ君が告白してくれたのに、私・・・・私・・・・」

なのはがまた泣き始める前に、フェイトはそっとなのはの頭を抱きしめた。
本当に、世話の焼けるカップルだ。

「・・・・・・私、嫌われちゃったよね」

「なのはは、ユーノのこと、どう思ってるの?」

「え?」

「このまま、嫌われたままでいい?」

「・・・・・・・・や・・・・よ」

「うん?」

「やだ!そんなの、絶対にやだよ!私、ユーノ君のことが好き!!大好きなの!!!ずっと一緒に居たいの!!最初に会った時は、只の大切なお友達だった。でも、管理局に入って、離れ離れになって、全然会えなくなって、最初は寂しくなるなって思ってただけなのに。寂しいって気持ちがどんどん大きくなって、自分でもどうしようもなくなっちゃって!!」

「なのは」

「メールのやり取りはしてたけど、そんなのじゃ全然収まらなくて!でもこの気持ちは、ずっと胸の中にしまっておこうとしたのに!!だって─」

「な・の・は」

フェイトが呼んでいるのに気付き、一旦止まるなのは。
やれやれ、本当に世話の焼ける親友たちだ。

「それを言うのは、私じゃないでしょ?」

なのはが顔を上げる。あ〜あ、真っ赤に泣きはらしちゃって。

「ちゃんとユーノに言わなきゃ、ね?」





ユーノは雨のなか、ずっと立ち尽くしていた。
服が濡れ、水を吸ってかなり重くなっていたがそんなものはぜんぜん気にならなかった。
このままこうしていれば、風邪を引いてしまうのかもしれない。そのまま悪化して死ぬかもしれないな。
べつにいいか。今の自分には、それがお似合いなのかもしれない。
なのはに告白して、見事に振られてしまった自分には。
でも、告白してよかったと思う。前より一層確信できるようになった。
あの日、森で倒れている僕を見つけてくれた、あの時から。
管理局に入り、離れ離れになっても往生際も悪くメールで連絡を取り合っていた。
彼女が墜ちたと聞いて居ても立っていられなくなり、仕事をほったらかして彼女の元に駆けつけた。
全ては彼女のことを・・・。

「僕ユーノ・スクライアは、高町なのはのことを、愛しています」

「私も、愛してます!!」

一瞬時が止まった気がした。
やれやれ、遂に幻聴まで聞こえてきたか。
けれど、そうだとしても、どうしても期待を持たずにはいられない。
もし、今振り返って本当になのはがいたら、次こそちゃんと告白しよう。
もしそれが、億千万分の一の確立でも、僕は縋ってしまうんだ。
だってなのはのこと、愛しているから。

そして、振り向いたユーノの胸に億千万分の一の確立が飛び込んだ。


フェイトは公園の入り口で、自分の愛車の中から抱き合った二人を確認すると、気づかれないようにゆっくりと車を発進させた。

二人とも、昔から他人のことばっかりで、自分のこととなるとさっぱりなんだから。ひやひやしながら見てるこっちの身にもなってほしいものだ。

フェイトは車を走らせながら、今夜ははやての部屋にでも愚痴を言いにいこうと思った。



数ヵ月後、なのはとユーノの結婚式が行われ、その時にも一悶着あったのだが、またそれは別のお話。


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