頭が痛い。 そう思ったのは何時からだろうか。 戦っているときは特にそうとは思わなかったのに、いざ普通にしていると何だか肌寒いし、おまけに身体が重い。 身体が重いのは百歩譲って疲労とか思ってみても、こんなに着込んでいる自分が肌寒いと感じるのは、フラノールとか寒い所にいる時ぐらいだ。 因みにここはメルトキオ近く。どう見たって寒くないし、しかも昼間である。 「な、先生…お願いがあるんだけど」 取り合えず、先生に相談してみようとロイドは思った。 「何かしら?」 「リカバーかけて欲しいんだけど…」 「どこか悪いの?」 「いや…なんかさ、頭痛くて」 リフィルはロイドの様子を見るが、別に何処も悪くはなさそうで、眉を顰めた。 けれど、あの元気活発なロイドの随分と弱った様子に心配したリフィルは、一応とリカバーを唱えた。 「別に毒とかにはかかってないみたいけど…今、リカバーをかけたわ」 「あ、ありがとう」 「どう?調子は」 「あんまり変わらないかな」 「もしかしたら疲労かもしれないわ、少し休んで今日は早く寝なさい」 「うん、…そうするよ」 リフィルにそう言われ、素直に頷いたロイドは一行の宿泊する宿屋に一足早く帰り、自室のベッドに潜り込んだ。 なんだかベッドが冷たくて気持ちいいし、直ぐに睡魔が襲ってきて瞼を閉じた。 ああ、やっぱり疲れてたのかな…そんなことを思いながらロイドが次に目を醒ましたのは、寝苦しさに気付いた真夜中の事だった。 汗ですっかり衣服は湿っていたし、身体も寝る前より熱い。 冷たさを求めて、潜り込んでいた布団をかっぱらって、起き上がるとズキン、と頭が痛んだ。 「いたっ…!」 あまりの痛さに、手を額にあてた。 自分でも解るくらいの熱さが、手に伝わっていく。 それが、ようやく『風邪』だと気付いたのは数秒後のこと。 『風邪』なんて何年ぶりだろう、とロイドは思った。 そんなに病弱体質でもない自分には(エクスフィアもつけているし)風邪なんて縁がないものだと思っていたし、 もし風邪気味になったとしても、彼の義父であるダイクがそれを察して薬を煎じて未然に防げていたのものある。 だから、風邪がどういう症状かというのも軽く忘れていたのだ。 そうと解って、リフィルに助けを求めようとも思ったが、今は真夜中だ。 起こすのに気が引けたロイドは仕方なく同室であるクラトスに助けを求めようと近寄るが、ベッドは抜け殻。 立っているのが辛くて、彼のベッドに腰をかけるとまだ温もりがそこに残っていた。 どうやら、まだそんなに時間は経っていないらしい。 トイレでも行ったのかと、思っていると静かに自室の扉が開いた。 「ロイド?…起きたのか」 「クラトス、…あのさ」 言いにくそうにしているロイドの異変に気付き、クラトスはそっと隣に腰掛け、額から流れていた汗を手で拭った。 「熱いな」 「…うん、…昼間から頭痛くてさ」 「今、水を取ってこよう」 「待って」 立ち上がろうとしたクラトスの腕を引っ張り、ぐいっと引き寄せる。 「寒い」 「…布団の中にいなさい」 「クラトスの方があったかい」 「……そこまで面倒は視きれん」 「ケチ!」 そう言ってクラトスは少々強引にロイドの身体を離すと、立ち上がって再び扉の方へ向かった。 ロイドはぽっかりとあいてしまった隣のスペースに、ごろんと上半身だけ横にするとはあ…、と熱っぽい溜息を吐いた。 「なんだよ…、うう…寒い…」 布団もかけず、ただクラトスの居た温もりだけを頼りにしていたこともあって少し肌寒くなってきた。 それにますます頭痛も酷くなってきた気がする。一旦目が覚めてしまったせいか、睡魔もなかなか来ない。 少ししてクラトスが戻ってくると、先程まで自分が寝ていたベッドに大きな山がひとつ、出来ていた。 (確かに布団で寝るように、とは言ったが…) 何も自分のベッドで寝なくても…とクラトスは思った。 まあ、布団を被らないでいるよりは良かったし、自分が先程までロイドの寝ていたベッドで寝れば良いか、と思った矢先、 布団の隙間から手が伸びてきて、裾を引っ張るようにぐいっとクラトスの身体が傾いた。 「ロイド、何を…」 「ク〜ラ〜ト〜ス〜」 「水を持ってきたかたら離しなさい」 「……」 「解った、解ったから。…取り合えず水を置かせてくれ。それから話を聞こう」 観念したクラトスは、風邪を引いているにも拘らずこんな無邪気な行為が出来るロイド…息子に嬉しいやら、悲しいやら溜息を吐いた。 「いったいお前は私にどうして欲しいのだ」 「今すぐ風邪治して、きつい、だるい、もうヤダ!ファーストエイド〜」 「我儘を言うな。それにファーストエイドでは風邪は治らぬ」 この具合の悪さを何としてでも早く治したいロイドは、クラトスにせがむ様に言いたい放題に口走る。 クラトスが水を取ってくる間に、体調が悪化してしまったのか、今にでも吐きそうなくらい気分が悪くなってしまっていたのだ。 勿論、ファーストエイドでは治らないことを知っていたし、治らなくても良いから、ロイドはクラトスに何か治りそうな事を(例えば、頭を撫でてもらったりとか、腕枕をしてもらったりとか)して欲しかったのだ。 しかし、頭の固いクラトスは、直接風邪が治る方法のことしか考えることができなかった。 治してほしい、といわれても自分にはどうすることもできないし、迷惑をかけるのを前提としてリフィルを呼びに言っても恐らく風邪は範囲外だろう。 言うまでもないが、医者はこの時間にはやっていない。 …どうすればいいのか。…迷った挙句にクラトスが出した決断は。 「クラトス〜…」 「……ロイド」 名前を呼ばれて、ようやく何かしてくれるのか?とロイドは期待に満ちてクラトスの方を向いた。 その瞬間。 ごち。 「!?」 何か額に暖かいような冷たいものが当たった。 一瞬それが何か解らなくて、目をパッチリ開けると、クラトスの顔が…いや、顎があった。 それが、キスということに気付いた瞬間、思わず、わっ!?とベッドに思いっきり頭を打ち付けてしまった。 「大丈夫か?」 「な、何して…っ!?」 「済まぬ、これしか思い浮かばなかった。昔アンナがよくこうやってお前に…」 「わー!もーっ、いい!なんか熱くなってきた!寝る!」 「……」 恥ずかしさのあまり、再度ロイドはベッドに潜り込んだ。 じわじわと赤面してくる頬、それは多分熱のせいじゃない。 ………でも、今ならきっと熱だと、言い訳出来るかもしれないが。 そんな様子を見て、クラトスは何か間違っていたのだろうかと首を傾げた。 *** 違う熱が発熱しますよ、お父さーん! ただの駄文になってしまいました(チーン イラストをうpした(コチラです)のをイメージしました。 風邪って本当厄介です;風邪を引かれた方、お大事になさってください。 そして風邪にはお気をつけくださいませ! [*前へ][次へ#] |