最大で最高の

※TOS/親子

「…リフィル」
「え?な、何かしら…」

それはもう聞こえるか聞こえないかの音量で。

急に自分の名前を呼ばれて驚いてしまう。
…何故なら。
それが、あまり口を開かない寡黙な剣士さんだったから。







「わざわざ済まぬ」
「いえ、いいのよ。気にしないで頂戴」

クラトスはあまりロイド以外とは必要以外で話すことは見たことがない。
それは良い意味でも悪い意味でも。

故にこの場に彼と2人きりでいるのにとても違和感を覚えるのに、何だか落ち着きのない様子のクラトスにも激しく違和感を覚えてしまう。

「で、話って何かしら」
「この旅が終わった後、についてだ」
「あら…まだミトスの元にもたどり着けない私たちなのに、終わった“後”のことなんて」

可笑しな話だと思った。
ミトスに絶対勝てるという。もしかしたら強力な魔力を前にして一瞬で消えてしまうかもしれないのに
だが、この男はそんなものなど関係ないと言わんばかりにミトスが亡き後前提に話しているのだ。
そんな自信はどこから来るのやら、きっと彼には彼の愛しい子供が新しき世界を創る姿が映っているのかもしれない。

「…あの子を…ロイドを頼む」
「…頼む、ですって?」

おおよそロイドの事だろうなとは予想していたが、少しばかり予想とは違った。

「…確かにこの旅でロイドは成長したかもしれぬが、あれは根本的にはまだ子供だ。…この旅が終わった後も、あれはリフィルに度々迷惑を掛けるだろう」
「あら、貴方が迷惑を掛けないように指導すれば良いのではなくて?」
「私はあの子の側にはもう、……居てやれぬのだ」

彼は何かを決心したような瞳でこちらを真っ直ぐに見つめる。恐らく、この旅の後、ロイドと一緒にいるつもりはないのだろうなと。

「…随分勝手なのね。世界を再生させた後は、息子に任せるで終わりなの?」
「とことん身勝手であることは重々承知している。だが私には…いや私にしか出来ぬ、やらねばならない事がある」


握り締める掌がわずかに強くなったのが解った。
けれども。

「嫌よ」

予想する答えではない返事に一瞬彼の顔が強張った。

「そんなに心配なら、自分でなさい」
「…、」
「それとも自分ではあの子の間違いを正すことが出来ないとでも?」
「いや、…」

ロイドは間違いを認める勇気を持っている、そうクラトスは言っていた。
だから、自分が居なくともロイドは自ら間違いを犯せば正せると知っていてなお、この私に頼むと言うのは何だか矛盾しているようにも思えた。

「貴方は良い意味でも悪い意味でも親馬鹿ね」
「…否定はしない」
「だったらいっそのことその親馬鹿を貫き通すことね」


どういう意味だと言わんばかりに、クラトスが口を開くと、そうね…と言葉を続けた。








それから、ミトスを倒し、大樹カーラーンを発芽させ世界を統合させた私たちは、自ら世界のために動き出していた。

コレットは世界再生の神子としてマーテル教会と共に街の復興を。
プレセアとリーガルはアルタミラのレザレノ・カンパニーと共にアリシアのような者を出させないようにとまずはトイズバレー鉱山の封鎖を。
ゼロスはしいなをシルヴァラントに親善大使として仕えさせ、そして私とジーニアスでハーフエルフと人間、そしてエルフの共存を説いてまわることになった。




そして、ロイドは…


「姉さん、姉さん!」

ジーニアスが、嬉しそうに一枚の封筒を手にこちらへ向かってきた。

「どうしたの?ジーニアス。何かあったのかしら?」
「ロイドから手紙が着たんだ!ちゃんと届いてることにびっくりしちゃってさ」
「…そうね」

確かに手紙が届いたのには驚きだが、ジーニアスの驚きは恐らくロイドが手紙をだせたことに歓喜しているみたいで少し苦笑いしてしまう。

(まあ、…確かにちゃんと出せてるのは偉いわね)

そうしてジーニアスから手渡された手紙の封を切ると一枚の手紙と、テセアラの文明で物を撮る機械、撮影機で撮られた写真と呼ばれるものが入っていた。




“先生へ、俺たち旅にでることにしました!”


(ああ、確かに世界最大の親馬鹿だわ)


と、ロイドの隣で小さく微笑む顔を見ながら、呆れつつも嬉しい溜息を吐いたのだった。


***
世界最大の親馬鹿はデリス・カーラーンに行かず、一緒に息子と旅に出ることだと思ってます。(笑希望)


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