精霊が手に入れたものは

※TOS-R/ラタロイ

「魔物以外にも契約ってできるのかな?」

魔物との契約中に、ふとエミルは考えた。
魔物以外に契約が出来ないとはテネブラエは言っていなかった。
でも魔物以外に契約はできるとも言っていない。

『恐らく、人間と精霊以外ならば契約できるでしょう』

その言葉に、テネブラエが言った。
自分自身が精霊であるとともに、世界の精霊は確か、しいなが契約しているからムリだろう。
でも、人間はどうだろうか。
ただの人間ならば、別に契約する必要も無い。

だが、ラタトスクである自分が今更何の理に縛られる必要があるのだろうかとも考える。
要するに、『人間』でなければいい…そう言う答えにエミルは行き着いた。



夜。
ロイドは、胸元に熱いものを感じで目を醒ますと、捲られた黒いタンクトップと共に、胸の上に広がる魔方陣にハッと驚いた。
そして自分に跨るようにしているのはエミル…いや、紅目のラタトスクだった。

「ラタトス…ク!?何故、お前が…!」
「契約中だ、黙ってろ」

そう言って、ロイドは口元を押さえられた。
が、黙っている訳もなくロイドは両足・両腕をしきりに動かしたがビクともしない。
普段のエミルの力であれば、力や体格差でどうにかなったかもしれないが、精霊の力を目の前にはロイドですら赤子も同然のような非力だった。
ロイドにとっては紅目のラタトスクは心の精霊ヴェリウスによって封じられた存在であり、今はエミルの奥底にいると信じていたから、故にラタトスクの出現に酷く驚いていた。

「やっぱ、ダメか」

しかし魔方陣があともうちょっとの所で消えてしまう。
実はこれが初回ではない。寝ている間にラタトスクは何度もロイドと契約を試みたのだが、失敗に終わっていたのだ。
多分、理由は人間だから。
その理をどうにか変えようと、再びラタトスクは、手のひらに何かを念じロイドの腹の上辺りで円を切った。
そこに浮び上がる紋章。そして集まる夥しい魔力。
もしかしたらパーティ内のハーフエルフらがマナの異常な流れに気づくかもしれないと予め防御壁を貼っておいたのが正解だったのかもしれない。もちろん、それはラタトスクである自分が狙われないように
もともと防護用にテネブラエが貼っておいたものなのだが。

「ぐっ………!」

異様な闇のマナの量に宛てられ、苦しみにもがくロイド。
だが次の瞬間、腹の上の魔方陣がパリンと音を立てるように消えた。
何事かと見やれば、先ほどまで浮び上がっていた魔方陣のかわりに、何か違う紋章が浮かんでいたのだ。
それは見覚えのある、天使の羽根を描いた紋章。

「…マーテルの加護ってヤツか」


そうだった。
ロイドにはマーテルの加護というものがある。それが契約を邪魔しているのかもしれない。
ラタトスクは、先程にも増して魔力を高め、その魔方陣を突き破ると再び、魔方陣を空に描いたが、刹那。

「っ、やめろ!」

加護によって少し自由になったロイドが、足で勢いよく蹴り飛ばしてきたのだ。
ラタトスクは放り飛ばされた体を翻すと、言葉無く魔力の塊をロイドへと向けた。

「ぐぁッ…!」

容赦ないその魔力にまともにぶつかって、ロイドは地面へと崩れ落ちた。

「俺の前では無力なんだよ、そんな力如きじゃな」

ゆっくりと崩れ落ちたままの彼の方に近づいていくと、思わぬ反応を示した。

「い、嫌だ…っ」
「へぇ…」

あのロイドにしては、こんなか弱い声も出せるのだなと少し興味を持ってしまったのがいけなかったらしい。
もっとその声を聞きたくて、無理矢理顎をつかんで此方を向かせた。

「くる、な…」
「ふぅん、…面白い」

やっぱりこの男は面白いと思った。
世界再生の時からうっすらと流れてきた世界の様子。そして、この男の存在は極めて異質で。
ますます手元に置いておきたいと、ラタトスクは思った。いや、エミルも℃vっていた。
マーテルの加護が薄くなった今ならば、契約もできるかもしれない。
人間だから出来ないなんてそんな理は俺が変えてやる、と。

魔方陣を描いて、再び契約を試みる。
魔の従属になるべく、ロイドの身体に契約の証が次々と刻まれては体内に消えていく。

「っ、やだ、やめろ…!エミル…!ラタ…っ…」
「残念だったな。でも俺と契約すれば悪いことはしないぜ?」
「ぁ、ぐ…っ…!」

人間にとっては契約するのは負担が大きいのか、どんどんロイドの顔が青ざめていく。
魔物相手ならば、何なく契約は終わるが魔物と人間とでは体内の組織がまるでちがう。
理を変えたとしても、肝心のロイドの肉体がだめになってしまって意味が無い。
だが、その瞬間。ラタトスクですら予想できない事態が目の前に起きた。

「っ……あああ!!」


苦しみもがくロイドの背中に羽根が現れたのだ。
大きく広がる半透明の光り輝く天使の羽。
それは彼の仲間である再生の神子コレットの羽にも似ていた。かと言って、大きさはまるで違う。
鳥のような羽でもない、でも確かにいえるのは…紛れも無く、天使の羽根であること。
そして先程現れたのが、2年前まで世界を牛耳っていたクルシスの紋章であることも理解できた。
クルシスの誰かがロイドに防壁の術を施していたのだ。
それが誰かはさすがに判らないが、こんな高度な術が使えるのは流石に上位の者であることには間違いない。

とすれば、ますますこのロイドと言う存在はラタトスクにとっては面白い存在だった。
2年前、世界を2つに引き裂いたユグドラシル。そしてそれが指導する最高機関クルシス。
そのクルシスの愛されし、守られた存在にてクルシスをそしてユグドラシルを打ち破った世界の英雄。
誰一人知ることも無かっただろう彼の本来の姿。



「……お前が天使なら、いや、俺は天使ですら従えて見せる」


人間は契約することができない。
出来たとしてもその膨大な魔のマナで肉体が持たない。

早い話、人間でなければいいのなら。



「契約、だ」


そう言った瞬間、ラタトスクの紋章とも言えるその契約終了の印が体内に刻まれて溶け込んでいくのを確認すると、ロイドに近づき、そっと壊れ物を扱うかの如く、頭を撫でた。
大きな光輝く翼を広げ、膝立ちに立ってはいたが、気を失っているようでガクリと頭が項垂れている。
そんな彼を翼ごと抱きしめて、ラタトスクは見せ付けるように天を仰ぐ。


その夜、この世で一番美しくて、哀しき天使を手に入れた精霊は狂喜とも言える笑いを上げたのだった。


***
ラタ(エミ)ロイでこうだったらいいな話。痛くてすいません…本当妄想すぎる。
時間軸はラタ封印後ぐらいが希望です。
天使化ロイドが契約されちゃってラタさまに従う身になればいいとかどんだけ妄想すぐるんだ(殴)
でもそれだとちゃんとレベルが上がりますよね。(そんな問題では…)
そして精霊ラタvs4大天使父勃発!…多分続きません(笑)希望があれば…!(まずない



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あきゅろす。
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