浮気・義母・愛人問題勃発

※TOS/親子/ギャグ/ファンダムvol.2ネタ

久々に帰って来たイセリア。
生まれ故郷である其処にパーティは暫く其処に滞在することになった。

旅に出た頃は日々鍛錬と、毎朝早くからクラトスを剣の稽古をしていたが、
最近ではそれも無くなり、久々に剣の稽古を見て貰おうと、ダイクの家の元で静養中のクラトスに尋ねたのがきっかけだった。

イセリアまで出て、一日中稽古をしていて、終わった頃にはすっかり日が暮れていたのだ。
それから、夕食を撮り、風呂に入ってベッドに入れば、眠気が容赦なく襲いかかってくる。

クラトスは、いつもならロイドが寝たのを確認してから軽い睡眠状態に入るのだが、余程疲れていたのだろうか。ロイドよりも先に寝てしまったのである。
それもこれもはオリジンの一件でマナが失われてしまったせいだと思うが、それでもクラトスの寝顔を拝めるのが数少ない機会であった。
そんな訳でロイドは睡魔と戦いながらも、クラトスの寝顔を眺めていると、小さくクラトスの口が開いた。
最初は起きたのかと思ってロイドは思わず、離れようとしたのだが目が一向に開こうとはしなかった。やがてそれが寝言だと気付くと、その言葉に静かに耳を向けた。






『ソレイユ』



その言葉はあきらかに女性の名前であった。



***


「ロイドは一体どうしたんだい?」

しいなが心配そうに、しかし本人には聞こえないようにジーニアスに耳打ちした。
しかしジーニアスもさあ、と首を傾げて小さく答えた。

「朝からあんな感じなんだよ。全く、ロイドがあれじゃ皆テンションさがっちゃうよねー」


というのも、ロイドの調子が可笑しいのである。
まるで気力が抜けたというか、元気がないというか。

確か昨日はクラトスと稽古をしていたはずだと思い出すと、しいなは何かクラトスとあったのではないか、と思うが、
普通に今朝、接していたことから、別に喧嘩をしている訳ではなさそうであった。
それに普通にクラトスは、ダイクの家へと戻っていった。

では、何が原因か。
あれこれ考えるよりも直接聞いたほうが早いか、としいなはロイドに声を掛けようとした瞬間。
いきなり「帰る!」と言い出したのだ。
帰るということは、勿論ダイクの家のことだろうが、あまりにも唐突すぎて皆は唖然としているし、
ロイドは一人で勝手にレアバードを飛ばしていってしまった。
幸いなことに、イセリアに今は宿泊中だったからそんなに距離は無いが、この距離なら歩いて(もしくはノイシュにまたがって)帰れる距離なのに
あえてレアバードを飛ばす程、ロイドの身に何か起きていることは明白だった。



取り敢えず、今動けるしいなとジーニアスだけがロイドの後を追うと、ロイドは母親の墓である石碑の所で何かを呟いていた。


「ろ、ロイド?」


ジーニアスは恐る恐るロイドに声をかける。すると。

「…ジーニアス…俺っ……俺っ……」
「ろ、ロイド!?」
「ちょっ、ど、どうしたんだい!?」

あまりにもロイドの酷い様子に、2人は焦った。
何せ少し涙ぐんでいるのだから、焦らないわけにはいかない。
あのロイドが涙ぐんでいるなど、余程のことである。


その訳をしいなが聞くと、ロイドは少し躊躇って目を伏せがちに答えた。




「お、俺…もしかしたら新しいお母さんができるかもしれない………」





「「えぇぇぇぇええええっぇぇっぇえぇええ!!!!????」」




***


あまりの衝撃な発言にしいなは腰を抜かし、ジーニアスも尻餅を突いた。
後から遅れてやってきたゼロスがその悲惨な様子を見て、思わず唖然とするくらいである。
取り敢えず、事の事情を聞いて3人を落ち着かせると、ダイクの家の庭先のベンチ付近に座らせて、その手の話に詳しそうなゼロスは、冷静に判断した。

「で、ロイドくんは聞いちゃったわけね、天使サマが寝言で女性の名前を呟くのを」
「ああ…言ったんだ。俺が聞き間違えるとは思えない」
「あ、あっ、あたしは…信じられないよ!クラトスが、あのクラ…クラト…ああっ」
「しいな、しっかりしてよ」

しいなは既に冷たい水に塗らしたタオルを額に、何とか意識を保ちながら座っている。
其れほどまでにクラトスが寝言で自分の母親であるアンナ以外の女性の名前を呟いたのが、しいなにとっては衝撃的で仕方なかった。
それはしいなのクラトスに対する勝手な一方的なイメージでしかないのだが、そんなことをする人間ではないと思っていたからである。

しかし、一方のジーニアスとゼロスはしいなに比べては、割と冷静である。

「で、何て言ったのさ?クラトスさん」
「……『ソレイユ』って」
「…ソレイユ?…まあ確かに女性の名前っぽいよね」

ロイドの言うとおり、確かにそれは女性の名前だろう。
場所の名前にはそんな所は無かったし、何かの乗り物や武器の名前では…ないと思う。
それに何より、その言葉を聞いてゼロスはうーんと唸り始めた。

「俺さま、その名前に聞き覚えあるかも」
「え!」

ロイドとジーニアスは二人して、目を見開いて驚いた。
ゼロスといえば、無類の女好き…つまり女性には顔が広い=その女性と会っている可能性が高いからである。
ということは、もしかしたらゼロスの知り合いに『ソレイユ』という女性がいるかもしれないのだ。

とすれば、本当にクラトスの新しい恋人説=ロイドの新しいお母さん説は現実のものとなってしまうかもしれない。
その事実に、しいなはまたもや意識が飛びそうになった。…相変わらず恋愛事に関しては敏感である。


「ぜ、ゼロス…、それって何処で…」
「うーん…っても最近は旅で全然だったしなあ…どっかで聞いたことあるんだけどな〜…」

ロイドが必死にゼロスの腕を掴んで、問うもゼロスの記憶からソレイユと言う女性はピンと明確に出てこない。
それどころか、それを逆手にとってゼロスはロイドをからかい始めたのだ。

「おーおー。ロイドく〜ん…もしさ、ある日天使サマのトコに帰ったら、すっごい真剣な顔で…『ロイド、実はお前に言いたいことがある』とか言っちゃって〜…」
「ばっ、…やめろよ!」
「『この人がお前の新しいお母さんだ』『ロイドくん、ママよ。よろしくね』…なーんちゃって、でひゃひゃひゃ…」

ゼロスの迫真の演技(ちょっと似ている)に、ジーニアスはもはや呆れてモノも言えなかったが(しいなは先程から頭を抱えている)
ロイドはそれを真剣に受け止めたのか、今にも泣きそうな顔をしてこちらを見つめているのにゼロスは気付いて、思わず「え」と固まった。
いつものロイドならば、笑って受け流されるか怒られるか、それとも殴られるか、酷いときには剣術か奥義が来るのに。

「ちょ、ロイドくん、冗…」
「…お、俺、もうクラトスと向き合えないよ…ッ…!」

ロイドがそう言って立ち上がった瞬間、ダイクの家の扉からマントを外したインナー姿のクラトスが出てきたのだ。
思わず良いタイミングで現れた渦中の人物に、そこに居た全員があ、と口をあけた。

「…私がどうかしたのか…?」
「く、クラトス…!?なんで…!?」
「…あれ程家の外で騒がれれば、…嫌でも気付く…」

普通の人間ですら、あんな大声で騒がれれば普通は気付くだろうに、その上クラトスは天使聴覚の持ち主である。
先程まで寝ていたらしく、その煩さに起きたらしい。
しかし、今のタイミングは最悪すぎた。
ロイドは、今一番逢いたくない人物でもあったクラトスに、思わずぼこすかと幼児のように殴りかかったのだ。

「…ろ、ロイド?」
「何でだよ!どうして俺に相談してくれなかったんだよ!」
「そうだよ!あたしたちにも相談してくれれば良かったのに!」
「な、何の…」

ロイドだけならまだしも、何故かそこにしいなの加勢までついていた。
クラトスは一体何が起こったのか、とゼロスを睨む様に視線を送るが見事に目を反らされてしまい、
挙句、隣に居たジーニアスには深い溜息を吐かれていた。

「ロイド、…一体何が…」
「何だよ、…クラトス。……今更隠すことなんて無いぜ、」
「…だから何を…」
「『ソレイユ』さん」
「……っ…!」

その女性の言葉に、クラトスの顔色が一瞬にして変わった。
まだ、クラトス自身に逢ってみるまでは疑心暗鬼ではあったが、今の反応を見て脈ありな様子に、ゼロスはおいおいマジかよ、と驚いた。
流石のジーニアスもこれには驚かずには居られないし、しいなに至ってはやっぱりそうだった、と意識が飛びそうであった。

ロイドも、あからさまなクラトスの反応の仕方に、追及する。

「…だ、誰なんだ?!」
「ロイド、何故それを…」
「アンタが寝言で言ってたんだ!…なあ、誰なんだ?…もしかして俺の母さ…「ソレイユは……私が昔、国に仕えていた時の王女だ」




「「「え」」」



***


それから、落ち着いて聞いてみれば、ソレイユというのは昔、クラトスがテセアラの騎士団長としてテセアラに仕えていた時の王女の名前らしく、
偶然昔の夢を見ていた時に、ロイドが運悪くその名前を聞いてしまったらしい。
だから、ゼロスには聞き覚えがあったのだ。少なくとも、テセアラの学院では昔の歴史を勉強する際、必ずといって良いほど古代大戦の記述は出てくるし、
ソレイユの名前を少なからずはどこかに載っているからである。

だが、ソレイユは当時騎士団長であったクラトスと婚約していた仲であったらしい。
最もミトスの一件で騎士団を辞め、自らその身を追われる立場となってからは婚約も破棄されたらしいが、もしこの婚約が成立していたならば、ロイドは愚か、古代大戦ですら調停しなかったかもしれないのだ。
まあクラトス自身、国で決められた婚約そのものに興味は無かったし、今ではそれほどソレイユ王女に特別な想いは無いと言う。

クラトスがかつて古代大戦時の騎士団長であったことと、かの有名なソレイユ王女と婚約関係までになっていたことに、
ゼロスは面白くないな、と舌打ちをした。
とすれば、クラトスも元は出の良いテセアラの貴族生まれだろうし、剣の腕が良いのにも納得がいく。
どうせなら、本当にロイドに新しいお母さんが出来たらもっと面白かったのにと呟いていると、しいなが札でゼロスの頭を殴った。


そんなかんだで、初めて知らされるクラトスの過去に、ロイドは心底ほっと胸を撫で下ろした。

「なんだよ、早く言ってくれよ…」
「私とて、寝言までは自分では解らぬ」
「そ、そうだけどー…」

そんな可愛くも困った息子にクラトスは苦笑いしながら、ロイドの頭に手を置くと、小さく「私にはアンナとロイドだけだ」と呟いたのだった。



***
ソレイユ問題勃発(笑)
クラトスとソレイユの捏造話が書きたいと思っているのですがあまりにも情報が少なすぎて…^^;
ソレイユはハーフエルフについてよく思っていなかったってのは解っているんですが、騎士団時代のことをもっと書きたいなって思ってます。
騎士団長クラトスにあこがれる息子(笑)というか騎士団長時代のことを語るクラトスとか!




そのあと。(おまけ

しかし、ジーニアスはふと疑問を抱いていた。
ロイドによれば、興味はないといいつつも、王女に仕える身分なのに、クラトスを「ソレイユ」と呼び捨てにしていたこと。
まあ、どうでもいいか…と思いながら、ジーニアスはラブラブな親子から背を向けて歩き出したが、この後、この「ソレイユ」について大問題となるのは当分後の話である。

2008.10.23〜2008.12.23まで掲載

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