始まりは海の向こう

※マイソロ2設定/マイソロ発表前捏造ユリロイ?+ラピード/ほのぼの/長いです/ロイドギルド所属ガン無視




「だー、船旅も飽き飽きだぜ…」

そう言って、いつものようにだらしくなく甲板に大の字になっている少年に、
彼の教師であるリフィルは咳をコホンと立てて、小突いた。

「勝手についてきておきながら、もう弱音?」
「だってよーずーっと見渡す限り、青、青、青なんだぜ!」

少年、…ロイドは、飛び起きて見渡す限りの青…つまりは海を指差して嘆いた。
とは言っても仕方ない。ここは海の上なのだから。

最初はといえば、久々の船旅で和気藹々とコレットと共にはしゃいでいた。
だが数日もせずにこの有様である。
この調子では、先が思いやられるとリフィルは頭に手をやった。
何せ、次の島に到着するのはまだまだ先なのである。

確かに、出発をしてからここ数日は陸地を見ていない。
食料や衣類に関しては、充分蓄えがあるらしく問題ないようだったが、
それでも陸地暮らしの自分たちには、たかが数日で、陸地が恋しくなってしまうのだろう。


「なーなー!リフィル先生〜!どっか島に寄ってもらえないかな」
「島?」

乗せてもらっている身分で、何処かに寄ってくれ、などとは今の自分の立場からして決して言えることではなかったが、
リフィル自身も陸地に下りて買い物や、本を調達したいと思っていたこともあって、そうね、とだけ言って苦笑いした。


***



それから数時間も経たないうちに、あれだけ一面海だった景色に、ぽつりと陸地が見えてきた。
どうやらリフィルの頼みが、受け入れられたらしく一晩ではあるが、とある島に停泊することになったのだ。
勿論、一番陸地が恋しかったロイドは真っ先に降りて、街の方へと向かっていった。


そんな様子にリフィルの護衛としてついてきていたクラトスは、はあ、とひとつ溜息を吐いた。





周り一面海にも関わらず、意外にも街は栄えていることにロイドだけでなく、バンエルディア号の乗客は殆ど驚いていた。
着いたのは既に夕方の時刻だったが、まだ空は明るく、人通りもそれなりに多い。

とにかく陸地に足をつけたかったロイドは、街を1週する勢いで街の中を駆け回った。
しかし、気付けば空の色は橙色になり、日が暮れ始めようとしているのに気付き、漸く其処で自分が迷子になりかけているのにロイドは気付いた。
迷子とは少々大袈裟な言い方かもしれないが、こんなに大きな街では大きな大人でも迷子になり兼ねないくらい、其れくらい栄えているのだ。

確か、出て行く前にリフィルに、ここの宿で今日は宿泊するからと、手書きの地図を貰ったことを思い出してロイドはポケットの中に手を伸ばした。
しかしポケットの中にはそれらしいものは入っていない。

「やべ、落としたかも…」

それでも、宿屋の名前を微かに覚えていたのが幸いなことだったが(でも断片的に)、大きいこの街でその宿屋を見つけるのは難しいことである。
何せ断片的にしか覚えていない宿屋の名前を思い出して人に尋ねようにも、先程まで多かった人通りも夜になるにつれて見当たらなくなっていたのである。

まあ一度港に戻れば、どうにかなるだろうと今来た道を戻ろうとした瞬間。
柔らかい何かを思いっきり踏みつけて、ロイドはわっ、と声をあげた。同時に、人ではない何か動物の声が耳に入ってくる。

「い、犬…!?」

其処には青い犬が1匹、痛そうに蹲っていた。
ロイドはその犬の尻尾を思いっきり踏んでしまったらしい。あまりにもクリティカルだったのか、犬はうーと低い声を呻いている。

「大丈夫か?ごめんな…よしよし」

そう言って、ロイドは犬の頭を撫でてやると、犬はぶんぶんと首を横に振った。
まるで人間の言葉が解るかのような素振りに、ロイドは驚いた。
自分が飼っている犬(…正確には犬ではないが)ですら、人間の言葉がわかるかどうか怪しいのに、
この犬は確かに今自分の言葉を理解したのだから珍しいものである。

「お前、言葉が解るのか?」
「わふっ」

よくよく見ればその犬は、口にキセルを咥え、何やら色々と身につけているのにロイドは気付いた。
普通の犬ではないことは解っていたが、明らかに野犬ではない飼い犬なのだな、と思った瞬間、その犬の名前らしき声を呼ぶ声がどこからともなく聞こえてきた。


「ラピード!」
「ワォーン!ワン!」

その声に真っ先に反応して、犬はロイドの元から飼い主と思われる人間の方に駆けていく。
それをロイドは目線で追っていくと、自然と飼い主を目線があってしまった。


「あ…」
「ん?」



***



「へぇ、あのでっかい船でねえ」
「ああ、そうなんだよ。久々の陸地で、つい嬉しくてはしゃいでさ」

あれから結局、あの青い犬…ラピードの飼い主である黒い長髪のユーリという青年に連れられて、ロイドは酒場に来ていた。


正直にラピードの尻尾を思いっきり踏んでしまったことを告げ、心配だから病院か、もしくはリフィルに回復してもらうようとロイドは言ったのだが、
ユーリは笑って、「コイツはそんなにヤワじゃないから」と言って、断ったのだ。


しかしロイドからすれば、ノイシュを飼っていることもあって犬(正確には犬ではないが)のことはよく理解していたし、
もしも何かあったら…と、手持ちのガルドを渡してこれで傷薬でも買ってくれと手渡したところ、その手を急に掴まれて連れられてきたのは酒場。
勿論、ロイドは戸惑った。
何せ自分は未成年で、酒など飲める訳も無い。が、それを見通してか、ユーリは席につくとロイドに早速オレンジジュースを注文した。
酒が飲めないからと言いつつも、流石に子供扱いされるのが嫌いだったロイドは頬を膨らませてユーリに、「俺は子供じゃないんだぞ!」と訴えると、
ユーリは自分が注文した酒をロイドに突き出して「じゃあ飲むか?」と付き返されたのである。
その切り替えしが来るとは思わなかったロイドは流石に降参して、ごめんと素直に謝ると、ユーリは面白いヤツだな、と笑い始めたのだ。
其れから二人は打ち解けはじめ、自己紹介や現在に至るまでの旅のことを話し始めた。

「でも本当にその…、ラピードは大丈夫か?」
「ああ、コイツ…俺の相棒はそんな程度じゃびくともしないぜ。モンスターと対等に戦うくらいだしな」
「え?!すっげぇーな!ラピードって。俺も犬飼ってるんだけど、モンスターを見たら逃げちゃうんだよな〜…」
「普通はそんなもんさ。まあ伊達に場数踏んでない、ってこった」
「すっげぇ〜…」

聞けばこの青年、ユーリはもともとこの街に住んでいる訳ではなく、たまたまこの街に相棒と共に寄っていたらしい。
流石に旅の目的までは聞くこと無かったがそれでも、同じような境遇にロイドは、親近感を感じて何だか嬉しくなった。
それにユーリ自身、ロイドより年上ということもあって話しやすいのもあるのだろう。(犬も同じく飼っている飼い主同士として)
同じ年上のクラトスやゼロスとはまた違う雰囲気のユーリに、ロイドはまるで兄弟のような感覚で楽しそうに話した。


「ユーリは次、何処に行くんだ?」
「ん?そうだな、まあ特に決めてないけど…」
「だったらさ、俺たちといっしょに行かな…」
「ワォーン!ワンッ!」

と、急にラピードが吠え始め、急に辺りが騒がしくなった。
そうやら外で何か起こっているらしい。

「どうした、ラピード?」

ラピードが急に酒場を飛び出ると、ユーリも後を追うようにして飛び出た。その後に勿論ロイドも続いていく。


外に出ると、そこにはモンスターが数匹。
海岸沿いで満潮のせいか、海のモンスターが陸にあがってしまったらしいのだ。
しかも運悪いことに、そのモンスターに住人が中途半端に攻撃をしたのがいけなかったのか半ば怒り狂った状態で、辺りをどんどん破壊していっていた。
そのモンスターの匂いにいち早く気付いたラピードは、そのモンスターに噛み付く。
振り落とされない程度に、こちらに気を向かせて建物から、自分へと興味を持たせると、ラピードは飼い主に合図を送るかのように一度だけ短くワン、と吼えた。

そして丁度良くユーリがそこに着くと、すっ、と剣を取り出して構えた。


「よくやった、ラピード。…確実に仕留める、覚悟しな」


***



ロイドが少し遅れてやってきた時にはすでにモンスターは何匹か倒れており、そのユーリのジャグリングのように扱う剣捌きを見て、素直に凄い、と思った。
自分の周りにはいない流派である。ゼロスも舞うような剣捌きを見せるが、ユーリの剣裁きもそれはそれで美しいと思った。隙が無いのだ。
しかし、それでも2対数匹では分が悪いのは当然。ロイドは双剣を構えて、モンスターへの所へと向かった。

「ロイド!」
「助太刀するぜ!」
「サンキュ、助かるぜ。次、どいつだ!」





何とかロイドとユーリ、そしてラピードのお陰でモンスターが海へと退いていくと、やはり疲れたのかロイドとユーリはへたり、と地面に座った。

「つっ、かれた〜…」
「ワフッ!」
「ああ、…ちょっと数が多かったな、でもロイド」
「ん?なんだ?」
「中々いい腕してんじゃねーか」

ユーリのそんな言葉に、思わずロイドは頬が一気に熱くなる。
それが例えお世辞であっても、やはり自分の取り柄である剣の腕を褒められるのは嬉しいものである。
それに何となく、ユーリに褒められるだけで何か嬉しい気がして。


「へへっ、そうかな?」
「ああ。俺の知り合いには中々居ないぜ、二刀流は」
「でもユーリもすっげぇよ!俺見惚れちまった!」
「そうか?あ、ロイド。動くな」

ユーリはロイドを制止させて、ぐいっと引き寄せた。
意味も意図もわからず、急にぐいっと引き寄せられたロイドは、ユーリの足の間に入って、その顔を胸元へと押し付けられた。
ユーリの胸元で、思わず頬を熱くさせて、真っ赤にさせると、「取れた」と一言。

「ゆ、ユーリ?」
「さっきの戦闘で枯れ葉がついてたから、あ?何だ?もしかして、もう少しこうしてたいとか、か?」
「ばっ、ばか言うなよな!!!」

そんな彼のからかいの言葉に、ロイドは更に真っ赤にさせながら、離れようとしたが、
その腕がロイドの背中を上から押さえつけられて胸元から動けないことに気付き、上を見上げるとそこにはニヤリ、と笑うユーリの顔があって。


「別に俺はいいぜ。…お、照れてんのか?可愛いな」
「ゆ、ユーリっ、お、俺は…」

ふわり、と頭を撫でられて不意にロイドはびく、っと身体が跳ねた。
その優しい手に、思わず心地よさを感じでしまったロイドは全身が熱くなっていくのを感じた。
勿論、それにユーリが気付かない訳が無い。手を伸ばそうとするが、ユーリは他の気配に気付いてその手を止めた。

「……はは、なーんてな。ほら、お迎えが来たようだぜ」
「え?」

そうやってロイドが顔を上げると、そこにはバンエルティア号の乗組員がロイドの名前を呼びながらこちらへ向かってきていた。、



***



「本当にごめんってば!」
「心配したのよ。何時になっても帰ってこないから」

リフィルが口をへの字にして怒っているのに、ロイドは何度も何度も頭を下げ、手を合わせて謝った。
あの後、ユーリと別れ、連れられて戻ると、こっぴどく怒られてしまったのだ。
何とか事情を話すも、それでも紙を無くすとは何事ですかと更に怒られてしまい、
挙句の果てにはクラトスに船から出ることを禁止されてしまったのだ。

それでもロイドにはどうしても、船から出たい理由があって必死にリフィルに謝っていた。
それはユーリのことである。
あのとき、モンスターの襲来で言えなかったが、本当は一緒に行かないかと誘いたかったのである。
次の島まででもいいから、もう少し話していたいと思ったのだ。
剣の腕だって充分であるし、ラピードという優秀な犬も居る。
けれどもロイドの一判断では船に乗せることは出来ない。
せめてリフィルかクラトスの口添えがあるならばまだ解らないが…(自分も彼女らの口添えで乗せてもらったこともあって)

「なあ、先生。俺、頼みがあるんだ」
「何?船の外へ行きたいというのはダメよ」
「じゃあ、一緒に、…一緒に連れて行きたい人が居るんだ、ダメかな?」
「連れて行きたい人?」

ロイドは、その人の…ユーリのことを伝えようと必死に説明し始める。

「ああ!剣の腕も凄くてさ、先生の護衛には文句ないくらいなんだ!それにすっごい犬もいて…」
「あら、それなら問題なくてよ。護衛には、クラトスとゼロスもいます」
「先生!」

確かに、リフィルにはゼロスとクラトスという強力な護衛がいるし、これから先の旅で護衛の契約をしている傭兵も数多くいるのだ。
流石にそれ以上の余計な護衛を雇うような余裕だってないし、何よりバンエルティア号に乗せられるかどうかも解らない。
只でさえ、自分が余計に乗ってしまったのだから、自分には何も言えないことにロイドは、折角出会えたユーリとの出会いを泣く泣く諦め掛けようとした瞬間。





ドアの外から聞いた事ある犬の声が聞こえてきた。

「っ、ラピード?!」

青い犬、…ラピードが船内を走ってきて、ロイドの足元へと座るとそこに同じく黒い長髪の青年がやってきて。

「ロイド!」
「ユーリ!」
「あら?ロイド、知り合いなの?」

リフィルは驚いたようにして、ロイドとユーリを見やった。
それはロイドも同じことである。

「え?何で先生とユーリが知り合いなんだよ!」
「それは、彼が次の目的地で契約している護衛の傭兵だからです。まさかロイドとユーリが知り合いだったなんて」
「ええっ!?」

確かに、次の島で護衛が一人増えるとは聞いていたがまさかユーリだとは思わなかったのである。
ギルド所属で、現地に詳しい青年。
しかし次の地で会うはずだったのに、どうしてここに?そう問うと、それは呆気なくユーリが笑って答えた。

「ああ、俺もその地に向かう途中だったんだよ。偶然ってこった」

ユーリも、あの後リフィルと偶然会って、今に至ると言う訳なのだが…あまりにも唐突過ぎる再会に、ロイドは感極まってユーリに抱きついた。
まさか、また逢えるとは思わなかったのもあるし、何よりもこれから一緒に旅が出来ることが嬉しいのだ。
あまりにも感激して、少し涙ぐんだ目でユーリを見上げると、にこっと笑ってロイドは言った。

「良かった…!ユーリと一緒に旅できるんだよな?」
「まあ、そーいうこった。これからもヨロシク頼むぜ」
「ワオオオーン!」
「ああ、ラピードもな!」


そうして、バンエルディア号の汽笛が鳴り、どんどん港から離れていく。
そう。新たな出会いと共に、新たな目的地への旅が、今から始まる合図かのように。



***

絶対こーーーーなるわけないと解っていてもあれな感じのマイソロ2捏造でした!
すいませ…!ユリロイ難しすぎる^q^
この後、ユーリとロイドが急にイチャコラしてクラトスの眉間に皺がどんどん増えればいいと思います!



2008.10.23〜2008.12.23まで掲載

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