Happy Halloween!

Vesperia after
※TOV/フレユリ前提オールキャラ前提/ギャグ

「で、なんてあたしがこんな事やらなくちゃなんないワケよ」
「まあまあ…」
「あら、でも結構面白いわよ」

と我が儘を言うリタをエステルとジュディスはカボチャを両手に苦笑いした。




テルカ・リュミレースが星喰みの危機から逃れ、ようやく平和だと実感できるようになって。
それから、正式にヨーデルが皇帝の位についてから、ギルド「凛々の明星」に正式に依頼されたのは、何と帝都ザーフィアスのハロウィン祭の飾り付けの手伝いだった。
何かと最近復興のために、騎士団は各地を巡っており、人数不足らしい。そこで顔なじみであり、かつ頼みやすいユーリらにこの話が『フレン』らを通して回ってきたとか。
そんな子供が喜んでやるような雑用みたいな依頼、誰がやるかと特にリタやレイヴンは反対したが、2人はすっかり忘れていた。
首領がこれまた祭りを好む子供だったということに。


リタも、わーわーと我が儘を言いつつも、特にエステルに宥められながらハロウィンに使うカボチャに絵柄を書き込んでゆく。
流石のリタもエステルに頼まれれば断りきれないらしい。

「あら、エステル。それって、誰かさんに似てない?」

ジュディスが隣で一生懸命に彫り進めるエステルに声を掛けると、それまで彫り進めるのに夢中だったのか、急にびくっとして、立ち上がった。

「はっ、はい?!」
「解り易すぎるわよ。ほら、この辺なんかユ「わわ…!そんなことないです〜!」

最も、作業よりもリタとジュディスは2人してエステルをからかって遊んでいるようで、何だかんだ言いつつも楽しくしているようだった。


一方男性陣はと言えば…

黙々とカボチャを彫り続けていた。
カロルを除いては。

「なんであんなにはしゃいでいられるかねぇ…おっさんキツくて仕方ないわ」
「…俺も」

元々器用不器用の差もあるかもしれないが、カロルのは表情が歪んでいるのに対し本人は楽しそうで、一方ユーリの手元にあるカボチャはすべて精巧に作られているものの、本人は先程から殆ど無駄口叩かず持ち前の技術で彫り続けていた。
…流石仕事人である。
(因みにおっさんは先程から口も作業も中途半端であった)

「ユーリもレイヴンも〜!楽しくやろうよ〜!」
「…そんな事言ったってな、…先生」

カロルがブーブー言いながらユーリに言うと、ユーリははあ…と溜め息を吐きながら、視線を横へと逸らした。

そう。
視線の先にはまだまだ沢山のハロウィン用のカボチャが山盛りに積まれている。

「あんなのボクたち『凛々の明星』にかかれ「あれじゃいつになったって終わらないぜ?もしかしたらハロウィンに間に合わないかもしれないしな」

その一言に カロルの表情は凍り付く。いくらフレンからの依頼と言えども、平和になってからの、ギルド『凛々の明星』の初仕事である。失敗で終わらせたくないのだ。如何にそれが子供が好き好みそうな雑用であったとしても…!失敗は許されない。

…最もそんな重い気持ちでいるのはカロルだけだったが。

「それは困るよ!」
「んな、俺らだけであの量ははっきり言って無「できるよ!ユーリは!」
「俺だけかよ…」

カロルが必死なのは解るが、どう考えても物理的に無理である。
今は副帝であるエステリーゼことエステルが手伝ってくれているだけでも有り難いことである。もっと言えばジュディスや、リタも…それにおっさん…よくよく考えればメンバーの皆が殆ど非協力的であった。それを考えれば奇跡的である。


しかし、本当にどうするか。
作業する手を辞めて、ユーリは腕を組む。頭の中でどんなに効率の良い方法を探してみても見当たらない。


しばらくして悩んでいると、そこに聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

…間違いない。
フレンだ。


「フレン!」
「どう?調子は」

と、にこやかに何の罪もないような笑顔を振りまく彼にユーリは出る言葉もなく。

「あのなあ…」

とだけ溜め息混じりに言うとフレンはそんな友人の態度に首を傾げた。

「ユーリ?」
「…こんだけカボチャが余ってりゃ解るだろ?」
「ああ、余った分は煮漬けにでもするのかい?昔下町でよく…」
「じゃあ城の食堂に運ぶか」
「…分かった、分かった。……やっぱり人数が足りないかったんだね」

そんな困ったフレンの言葉に、ユーリはカチンと来た。
最初からこの量を『凛々の明星』のみで事足りないと解っていながらこの判断をしたなら、それは普段のフレンらしからぬ判断である。
…それとも、天然でもしかして、間に合うかもと思ったのだろうか。

「分かったよ、ユーリ。君の頼みなら」
「まだ何も頼んじゃいねーが」
「人員を少し割いて、こちらに回してもらうよう陛下にお取り次ぎしてもらうことにしよう」
「何だよ、最初からそうすれば…」
「但し、条件がある」


フレンが真剣な目でこちらを見ながら、両手でユーリの両手を掴んだ。
やばい、ユーリの本能がそう叫んでいた。

「騎士団に戻る、と言うなら」
「…あのなぁ、フレン。俺はもう」
「僕はいつでも本気だよ……って言っても君は聞かないよね。だったら1日だけ騎士団に戻るって言うのはどうかな?」
「…1日?」

たった1日か、それならいいか…とは思いつつもユーリは怪しいとは感じられずにはいられなかった。
何たって、1日だけなんて何かさせられるに違いないのは見え見えであったし、何よりフレンのことだ。外見は曇り無い笑顔だが、考えていることはきっと…………腹黒い。

「たった1日だけだよ」
「いや、でも」
「もし間に合わなかったりしたら、ギルドの君の仲間が悲しむ」
「…(悲しむのはまあ…カロル先生だけだろうけど)」
「それに、エステリーゼ様も悲しまれる…」
(げ、エステル…)

…ユーリは実の所、エステリーゼには弱い面がある。それにエステリーゼ…エステルが悲しめばきっと、エステル溺愛なリタは激怒するだろうし、ジュディは面白がってのっかかってくるだろう。
そうなれば非常にややこしくなる。

「…解った、1日だけだぞ?」

しかし、こちらの承諾の方がもっと面倒であることにユーリは気づかなかった。


***



トリックオアトリート!

帝都の街並みと下町に飾られるカボチャの飾り付けと仮装した子供たち。
事はうまくいき、何とかあの膨大な数のカボチャを飾り終え、ギルド『凛々の明星』は何とか最初の仕事を失敗せずに済んだのだが。

「あら?ユーリは…?」
「さあ…?疲れてどっかで寝てんじゃないの?」

リタが両手をあげて、はあと溜め息を吐いた。

「でも可笑しな話じゃない?最初から人数増やせばいい話なのに。なんであたしたちだけだったのか納得できないわね」

突然助っ人して参入したフレン配下の騎士団らが手伝ってくれたおかげで無事に終えたのだが、リタの言うとおりである。まるでこうなることが解っていたかのように…

「まあ、いいじゃん!これでボクたち『凛々の明星』も大成功って訳で」
「ふふ…その裏には何かあったりね」

ジュディスがくすっと笑いながら呟くのにカロルは首を傾げた。

「ん?…何か言った?」
「い〜え、何でも無いわ。さて、私はバウルにお菓子でもあげてこようかしら」


そんなハロウィンで賑わう街とは一方で。
帝都内にある騎士団詰め所では、見慣れない顔の団員…ユーリがかつて着用していた騎士団服に身を包んで、むすっとした顔で座っていた。

「はあ…漸く終わった…」

と言うのも、1日だけならとユーリは言われるままに帝都内の警護を担当したのだ。言わずもがなそれはフレンの命であり、やっとハロウィン祭も落ち着いて警護の命が解かれた為、ユーリは着用していた騎士団服を返しにきた為であった。

幾ら自分仕様と言っても軍の物。それに身軽となった自分には今は不要なものであるし、フレンに最後に一言ぐらいでも挨拶しておきたかったのだ。

(…やっぱりフレンはフレンか…)

1日だけ、と頼まれて騎士団に戻ったはいいものの。
何か良からぬ事をフレンは企んでいるのではないかと思っていたのだが、意外にも警護という至って普通な任にユーリはフレンをある意味で見直していた。



「今年は大盛況だったよ。下町を警護してくれたユーリのお陰かな」

そう言いながら少し疲れた感じでフレンが詰め所に戻ってきた。
どうやら漸く全体的に祭が落ち着いてきたようで、次々と騎士団員の声が聞こえてきた。

「そりゃ違うな。フレンが首尾良くしてくれたからだぜ。まあ、何にしろ大成功したんだ。良かった良かった」
「ははは、そう言ってくれると嬉しいよ」
「じゃあ、約束は約束だからな。俺はここで…」
「ユーリ」

と、ユーリが言った所で、フレンがにっこりと笑ってその顔からは信じられような握力で肩を掴まれた。


「約束は1日だって言ったよね」
「…ああ。1日だって。この通り1日中、ハロウィン祭の…」
「…1日まであと4、5時間はあるけど」

とフレンが時計を見やって小さく笑った。その微笑みが冷徹な笑みに見えたのは
……自分だけではないはず。

「な、何だよ…」
「約束通りなら、あと4、5時間はまだ君は騎士団員だ」
「そうだな」

ユーリは、そこで漸くフレンの意図が解った気がした。
ヤバい、こいつはヤバいと本能の警鐘が脳内で鳴り響く。
無意識に後退りした瞬間、背後にフレン配下の ソディアとウィチルが、ドアの前に立ち塞がった。

「ユーリ・ローウェル。フレン様の命に背くことは“騎士団員”として許されないぞ」
「何だと?!」
「騎士団員は騎士団長代理ではあるとはいえ、その命には忠実に従わなければならない。それは知ってるよね?」
「ちょっと待て、フレン。お前まさか…」

最初からこうなることを見越して、『凛々の明星』にハロウィン祭の手伝いを依頼していたフレンにユーリは心の奥底から、やはり騎士団をやめてよかったと思った。


「命令には従ってもらうよ?…ユーリ」
「ひっ…!」




その夜。
久し振りに城にあるフレンの私室が騒がしかったとか。







「ユーリー!!」
「…あ、先生か…」
「昨日はどうしたんだよ〜!エステルもリタもみんな待ってたんだよ」
「ああ…昨日はちょっ…「あら、言い香りね。あなたにしては珍しいんじゃない?この香水」
「ジュディ…!」
「ひゅーひゅー!ま〜さ〜か、ハロウィン祭で綺麗な奥さんでも捕まえて…!さっすがユーリだね〜。おっさん感服いたしました」
「ユーリ…!まさか…そんな…」
「エステル…!?っておい!?」
「あんた!最低よ!何考えてんのよ!」
「ワンッ!」
「違うんだっての!ラピートまで、だから…!」
「わたし、信じてました…ユーリのこと…」
「エステル!」

実はその香水は男物ということを言うのを黙っておこうと、ジュディスは皆のやり取りを見て思うのだった。



***
途中仕事も入った上、物語を思い出しつつしかも難産という…!おごご…!すいませんorz
私的フレユリは、フレンはユーリが罪を改めて騎士団に戻ってほしくて、大胆な手を使ってユーリを落とせばいいと思います^q^一方的にフレン→ユーリ状態・・・!(爆)
本当にお粗末さまでしたorz




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