Happy Halloween!

symphonia 19
※TOS-R/ラタロイ+ゼロロイギャグ

共に旅をするようになってから数日。
パーティ一行は、ここメルトキオに滞在していた。

というのも、暫く情報収集の為に滞在していたのだがいつの間にか目的は今晩ある『祭り』にすり変わっていた。

まあ、たまにはいいでしょうとリフィルがもう1日だけ滞在を延ばすとコレットらは喜んでマルタやジーニアス、エミルなどと一緒にその『祭り』の準備をするべく、街の中へと駆けていった。

そんな皆の様子に、眠たそうにゼロスは欠伸しながら、ロイドに声を掛けた。

「ハニー?行かなくていいの?」
「ん?…ああ…そういう年じゃないだろ」

と言うロイドにゼロスは内心『あんま変わんねーよ』と毒づいた。
それどころか何時の間にか知らない間に子供の輪から、傍観する大人の方になってしまったロイドにゼロスは不思議なもんだと苦笑いして。

「無理しなくてもい〜んだぜ〜?」
「もーうっせぇなあ…俺は疲れてんだ。寝る!」

バタン、と怒って出ていくロイドを見てゼロスはほんの少しだけ安堵した。

まだ微妙に子供っぽさが残っているのが幸いか、とゼロスは怒られたにも関わらず、それに少しだけ癒されてしまったとは当の本人目の前にして決して言えることではなかったが。


暫くして、夜が来るとメルトキオはいつも以上に賑やかになり、昼とはまた違う盛り上がりを見せていた。
いつもは静かな夜の街並みも今日だけは特別と言わんばかりに、街中の灯りという灯りはオレンジ色に染められ、夜の暗さを象徴する黒とのコントラストと綺麗に相まって、それが『祭り』、所謂ハロウィンと言うことを際立たせていた。

ゼロスの屋敷の中からでもはっきりとそのハロウィンで街全体が賑やかになっている様子は解った。貴族街故、演出もいっそうのこと派手である。
パーティの皆は勿論のこと、屋敷の主であるゼロスですら、黒いマントを着てスタンバっていることだし(貴族街のセレブたちもゼロスの屋敷の前でスタンバっている)、何となく自分だけが参加しないのにロイドは気が引けた。
かと言って、今更な話でもある。

まあ、様子くらいは見に行くかと渋々と 屋敷の階段を降りたところで、エントランスに数人の集まりが見えた。しかし皆黒ずくめの格好をしていて誰が誰かは分からない。

多分コレットや、ジーニアスだとは思うが…

声を掛けようとした瞬間。
下からわっ、と言う声と共に顔がひょっこりと出てきた。

「うわぁっ!?」
「Trick or Treat!」

完全に意識は下のコレットやジーニアスらにいっていたものだから、ロイドはいきなり下から現れたそれに反射的に驚いて、大きく体勢を後ろに反らした。
このままでは頭を大きく階段に打ちつけてしまうところだったが、間一髪の所でどこからともなく現れたテネブラエがロイドの背中に割り入った。

「テネブラエ!」
「全く危なっかしいと言ったらありゃしない」
「あ、ありがとう」
「こんな所で頭打ったらおバカな頭がさらにおバカさんになりますからね」
「…誰がバカだって?」

そんな小言を言うテネブラエにロイドはおい、と声をかけると笑うように誤魔化しつつ消えていった。
そしてふと前を向くと、黒いマントに身をくるんだエミルが申し訳なさそうにしていた。


「エミルだったんだな」
「ご、ごめんなさい…!まさかこうなるとは思わなくて…」
「いや、…不注意だった俺も悪かったし…」
「僕が驚かさなかったら…」
「いや、エミルは悪くないさ」
「でも…」

僕が、俺がと自分を責め合っているうちに段々と気まずくなってしまうと、ロイドはこれじゃ互いの性格だとキリが無いなと苦笑いした。
それは決して悪い意味ではなく。
優しいからこそ起こり得ることで。


「…どうかしたんですか?」
「いや、…ちょっと前までは俺がTrick or Treat?って言う方だったのにいつの間にか言われる方になったのかって思ってさ」

少なくとも2年前までは自分がまさにトリックオアトリート!と言ってお菓子をねだる方だった。
結局菓子は貰えず、グミを貰ったのだが(しかもその後戦闘中に満遍なく使ったという)代わりに良いものを貰ったな、などとロイドは懐かしい記憶を思い出した。

「あ、とっ、Trick or Treat?!お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ」

若干今更…というような感じもするが、まさにあの時と同じ台詞を言うエミルに微笑ましさを感じつつも、確かポケットに飴があったはず、とポケットを探ってみるが…

「あれ、無い…」

試しにもう片方のポケットを探ってみるがやっぱりない。
そんな様子のロイドにエミルはにやりと笑った。



いや、にやりと笑ったのはエミルではなくて。



「まさか、無いって言うんじゃねぇーだろーな?」
「…えっ、エミ…ラタト「しっ!」

ラタトスク、と言おうとした瞬間、ロイドの口に手が覆い被さった。

「…菓子がないんじゃ仕方ねーよなぁ。イタズラするか」
「んーっっ!んーっ!」
「人間の世界のハロウィンってそういうもんだろ?」
「んー!!(違ーーーッッ!!)」


そのまま、ラタトスク持ち前の素早さで背後に回り込まれて口を手で塞がれたまま、屋敷の奥の方の部屋にロイドは連れて行かれたのだった。






「あれ?ロイドくんは?」

一方ハロウィンで盛り上がるゼロスやコレット、ジーニアスらはふとロイドがいつまで経っても出てこないことに気付いて首を傾げた。


「僕は見てないけど」
「私も見ていなくてよ。…大抵はあの子がこういうお祭りごとで一番はしゃぐものなんだけど」

と昔から長い付き合いであるセイジ姉弟が言うとゼロスは、やっぱりあの時ロイドが言った通り、自室で寝ているのではないかと思い、

「じゃ俺さま、ロイドくん呼んでくるわ」

と屋敷の階段を駆け上がった所で、何となくロイドの声が誰も使用していない筈の部屋から聞こえた気がして、バンッと勢いよく部屋を開ければ。


そこには…何故かエミルがベッドの上の ロイドにまたがり胸倉を掴んでいて。
いきなり現れた人物…ゼロスにロイドもエミルも驚いてピタリと動きが止まった。

「ぜ、ゼロ…」
「ちっ…」
「なぁに〜やってんのかなぁ〜俺さまの屋敷で」
「ハロウィンにのっとって、悪戯してんだよ。菓子がないなら悪戯するぞ、ってな」

丁寧に、ラタトスクがさぞ自分は正当法ですと言わんばかりに訴える。
しかしロイドからすればとんでもない。貞操の危機(?)が迫っているのだから。

「ゼロス!助けっ…」

ロイドはてっきりゼロスが助けに着てくれたと思っていた。

……思っていたのだが。

「…ロイドく〜ん」
「な、なんだよ…っ」
「Trick or Treat?」
「は?」

そこでハロウィンの台詞が出てきて思わずロイドは口をぽかん、とさせた。
それとは裏腹にゼロスはニヤニヤしながらゆっくりと近づく。

「あ、もしかしてお菓子持ってないの?じゃあ悪戯してもいいよな〜」


それは…確信犯だからこそ言える言葉だった。


「なにぃぃいぃぃぃい!?」








その後、ロイドはハロウィンに近くになると、必ず常に菓子をポケットに常備するようになったのだった。





***
おバカすぎましたorz

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あきゅろす。
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