説教

※TOS-R/リフィル&リーガル→ロイド話

見た感じはそうでもないと思った。
元気そうではあったし、みんなの前では元気に笑う。

今まで不思議だった行動はある程度、打ち明けられて、理由がちゃんとあることも解った。
何より“血の粛清”はやっぱり本人がした訳ではないことが解ってホッしたのが一番かもしれない。

こんなに親身に思うのはやはり自分が父親みたいだと一度前の旅で言われたからだろうな、とリーガルは思った。
彼…ロイドにとって、本当にあるべき父親は今は、いないが。


勿論、プレセアを初め…旅をしてきた皆のことも心配だったが、実を言うと一番心配だったのはロイドであった。

大半の心配は取り払われたが、それでもやはりぽっかりと空いてしまった“9人目の存在”は大きいだろう。

再会して一緒にいるうちに、度々無理に笑って見せたりすることに痛々しささえ感じられたが、何よりも一番驚いたのはやはり以前のロイドとは大きく変わってしまった事、だった。


「ロイドは…変わったな」
「本質的には変わっていないんだと思うわ。外だけね」

リフィルは本を片手に苦笑いしながら答えた。
旅をまた一緒にすることになってエミルの件を始め、リーガルは何かと彼女とよく話をするようになった。
パーティの年長者ということあって話題の多くは今後の旅のことだったがそれでも2人の間で話すこと言ったら、必ず彼の話題になる。

「…やはり、か」
「そうね、無意識なのかしら」

本来、在るべき9人目。
それを無意識に感じ取って、自らが9人目を無理に創っているような気がしてならなかった。

「親離れしたと思ったら、今度は、ってところね」
「だがロイドの事を思えば、それが唯一の自分を守る方法なのかもしれないな」
「ええ…」


出来れば、…一番立場の近い自分がその代わりの9人目になれれば良いと思っていた。それは友情や愛情には分類されない、護ってやりたいという親心なのかもしれない。
リーガルもリフィルも、ロイドを我が子のように想っていたからこそである。

そんな風に思っているうちに、ふとリフィルはくすり、と小さく笑みを零した。
何となく自分を見て笑われたかのように思ったリーガルは自分は何か可笑しいことを口走っただろうかと、少し焦りながら問う。

「いえ、こうして見るとまるで父親と母親のようだと思って」
「…あ、ああ…」

安堵したのも束の間。
リーガルは少し照れながら、

「そ、そうだな」とだけ答えた。



何も、我が子のように想っているのはロイドだけではない。
リーガルやリフィルにとっては、血が繋がりは別としてもコレットやジーニアス、プレセアらは我が子のように護ってやりたいと思っている。

しいなやゼロスは少々子供と言うには大きすぎるが、自分からすればまだまだ手の掛かる子供のようなものである。


そう、既に仲間という括りを越えた家族のような絆がそこにはあって。

そこには勿論、今は居ない彼もあるはずであった。

だからこそ、2人は悔しい気持ちにもなる。2人でしても、その欠けた1人にはなれない。
ロイドの中にぽっかりと空いた穴を埋めることはできないのだから。


「あの子は強いと思っていたわ。私たちものその強さに助けられた。…でも、その強さで自分を助けることまでは出来なかったのね」
「人間とはそう言うものかもしれないな」
「ええ。…他人を思いやっても、自分を思いやる配慮までは気づかない、…ロイドの悪い癖…いや、そんな所は父親譲りなのかしら?…彼のせいだ、って言うのも何だけど」


リフィルはそう言って、本をテーブルの上に置いた。
何度も読み擦り切れた背表紙に、リーガルは目を細めた。

「随分古い書を読んでいるのだな」
「ええ。半年前くらいに手に入れたのだけれど、元からこんな状態で解読するのに一苦労しているの」
「ほう…しかしそれほどまで古いとは…中身は一体何なのだ?もしかしたら我が社に資料があるかもしれん」
「それは助かるわ」

自分では解読できない文字…恐らく天使言語か何かだろうとは分かった。
だが、今の旅には関係のないはずのそれに、リーガルは薄々気づき始めていた。
それが何の書であるかということに。

「でも、あまりにも情報が少なすぎるのよ。…一定の周期で近づくマナに溢れた強大な彗星……デリス・カーラーン…」


デリス・カーラーン。
その言葉に、リーガルはやはり…と静かに頷いた。

「そうか…」
「彼と逢える可能性があるのは私かジーニアスくらいだけだもの。…もし逢えたら、その時は…叱ってやらないと」
「そうだな、…その時は私の分まで頼むとしよう」
「あら、リーガルの分まで?」
「ああ。私も色々と言いたいことがあったのだが、それを言えないままに別れてしまったからな」



もしも再び逢えることがあったならば。
その時は。

彼を此処に引き止める覚悟でなければならないな、と2人はお互い顔を見合わせて笑った。



彼への説教は、何せ1日やそこらで終わるはずないのだから。


***
リフィロイとかリガロイとか好きです。
寧ろ、リフィル+リーガルの保護者組+ロイドがかなり大好きです。というかパーティ内唯一の良識人ズ(笑)

ロイドを置いていったことに、怒る保護者ズ。
それがお互いの為とは言えど、それでもそんなロイドを見てられない2人。その代わりになりたくてもなれない2人。

どうして置いていったのよ、とリフィルはこの後パパに説教するといい(笑)<何百年後

実は旅や年齢(年長者?)の手前色々といえなかったけれど、パパにとっても言いたいことが沢山あればいいと思いました。
でもシンフォのメンバーは家族みたいな絆で結ばれてますよね。

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