※TOS/ほのぼの親子 …♪…♪♪… 聞いたことあるようで聞いたことないような歌が、聞こえてきた。 それは直ぐに料理当番である彼の歌声であるということは分かったが、意外に上手く、クラトスはその歌声に耳をすました。 何せ彼…ロイドの歌なんて聞いたことなどなかったものだから新鮮だったのかもしれない。 最も、ロイドの全てを溺愛している彼のことだから新鮮とかそういうものは関係ないのかもしれないが。 「それは何という歌だ」 「あっ、え?!」 無意識に口ずさんでいたのか、思わずロイドは赤面して、わたわたとさせながら首を横に振った。 どうやら明確な歌詞と音色は存在しない、オリジナルのものらしい。 「適当だよ。なんかメロディーだけ頭に浮かんできてさ、歌詞はまだないんだけど」 「…そうか、だが意外だった」 「何が?」 「歌が上手いのだな、お前は」 「へ」 そうクラトスに言われて、ロイドはぽかん、と口をあけた。 何しろ今まで生きてきて、歌が上手い、と言われた事がないのもあるし、今の鼻歌だけで上手いと言われるとは思わなかったのだ。(単にクラトスが親バカなだけかもしれない) それに歌ならばコレットの方が断然上手い。天使の歌声とも称される彼女の歌声を聞いてしまったら、自分の歌なんて歌ではないと思ってしまうだろう。 「でっ、でもさ。クラトスの方が上手そうに見えるぜ」 「…それはない」 「え、何でだよ。渋い声でさぁ…」 と、ロイドは頭の中でクラトスが歌うのを想像してみるが、つい思わずぷっと吹いてしまった。 もし、コレットも使用する天使術であるホーリーソングをクラトスが歌ったら… …… …。 「…私は聞く専門だ」 「だよなあ…」 思わず納得してしまった。 そんな答えにクラトスは、どんな想像をしたのだと苦笑いした。 そうして、ロイドは料理をするのを止めていた手を動かし始めると、再び鼻歌を歌い始めた。 どうやら料理をすると自然に口ずさんでしまう可愛い癖に本人は気づいていないようで、クラトスはそっと微笑んだ。 暫く、料理するロイドの背中を見つめ続けていると、 クラトスはその背中に、懐かしいその姿を思い出して、ああ、と頷いた。 (ああ…そうか) それは“彼女”が良く料理を作りながら、 構ってもらえずに泣き喚くロイドに歌い聞かせていた曲だったのだと、思い出したのだ。 (だから聞いたことあるのだな…) そんな懐かしい思い出に浸りながら(一方、忘れていたことに激しく悔やみつつも)、 クラトスは料理が出来るまで、本を読む手を止めて目を瞑った。 気付けば、自分もその歌を無意識に口ずさんでいたことも知らずに。 *** 父さんがホーリーソング歌えばいいのにとか思った話…じゃなくて(^p^) アンナさんが小さい頃ロイドに聞かせていた歌をロイドが無意識口ずさんてクラトスが懐かしい思い出に浸ればいいなっていう親子話でした^^ [*前へ][次へ#] |