痛い背中

コレット好きな方は要注意。


私はお父さまが嫌い。

そう言ったら凄く、ロイドは驚いた顔をしていたと思う。
ピーマン以外で嫌いなものなんてないってイメージだもんね、私。
でも嫌いなものは嫌いなの。ごめんね。

だって、ロイドを取っていっちゃったんだもの。
あの旅の後、ノイシュと一緒にエクスフィアも一緒に集めたよね。

途中、別々になってしまったけれど、なるべくロイドの辛さを取り払ってあげようと私なりに頑張ってきたんだ。

好きだよって言ってくれた。
ごめんなって言ってくれた。
泣きじゃくる私の頭をなでてくれた。
それだけで嬉しかった。
あの時、流すことの出来なかった涙が流れた気がする。
ようやく思いが繋がり合ったんだな、って。


でも…朝起きたらロイドは居なかった。
そして首元につけてた輝石も無かった。
最初は盗まれたのかと思って、羽根も出せなくてうろたえていたけれど、いつまでもロイドが帰ってこないのを見て、私判っちゃったんだ。

船伝いに、イセリアに帰ってきたらジーニアスに酷く驚かれてしまった。
でも、あのラタトスクの一件以降ロイドは何をするか判らなくなってしまったから、何とも言えないといわれてしまった。

あれだけ裏表のない人間だった彼が、裏の顔ばかり持つようになってしまったのはやはりあの人の血が流れているからなの?

ある事を確かめたくて、ジーニアスと一緒にロイドのお義父さまの家に行くと、やはりそれは無かった。
エクスフィアを回収する旅に出る前に一緒に祈ったロイドのお母さまの墓。

その前に立ててあった筈の、炎を象った魔剣が。


羽根のない私は、空を飛べはずもなくジーニアスと共にレアバードを借りて、サイバックのリフィル先生の所へと向かった。
そしたら先生は、小さく呟いた。ああ、やはりと。…輝石は無いはずなのに、酷く聞こえる聴力は何故なの?

先生はすぐ近くのメルトキオに居るゼロスに連絡をつけてみると、やっぱり、ゼロスの輝石も無くなっていた。
いや無くなったわけでない。

ロイドが数日前に引き取りにきたみたい。
けれど、エクスフィアの回収をしているロイドには何ら可笑しくない行動。
加えて、この世界で残るエクスフィアはかつて私の元にあった輝石とゼロスの神子の宝珠である輝石と、そしてロイドのお母さまのエクスフィアだけなのだから、いつかはロイドの元へと渡る運命だった。

ただ、その時期がちょっと早かっただけ。
そして私の意志ではなかった、だけ。

納得のいかないジーニアスが、私に向かって怒鳴り始めた。

コレットはそれで納得できるの?と。


…納得できたら良かった。
納得できるような理由だったら良かった。

「私はお父さまが嫌い」

「だけどロイドはもっと嫌い」

私を嫌いになってくれなかったから。
嫌いにならせてくれなかったから。
いっそのこと嫌いと言ってくれればよかった。
重いとでも、邪魔とでも言ってくれれば良かったのに。
でもそう言えないロイドの弱さに漬け込んで、ずっとロイドに自分の場所を創り続けてきた。

そうすることでロイドの一番近くに居るべき人物が自分だと錯覚してくれたから。

でもそこにあるべき場所は、自分ではなく他の誰かだったかもしれないのに。


…罰が当たったんだね。

「嫌いだけど、…大好き、私のロイド」



あなたに羽根をもぎ取られてしまったこの背中が、とてもむず痒くて。


***
何も言わずに、コレットとゼロスの輝石と自分のエクスフィアを持って、エターナルソードで通信区域ギリギリなデリス・カーラーンへと行ってしまうロイドな話。コレット好きな方すいません;;


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あきゅろす。
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