大好きなあの人は

※TOS-R/クラロイ&リヒアス前提/アクア+ロイド

「謎のジュエルハンター、ロイド・アーヴィング参上」



旧トリエット跡でのエミルらとの対峙。
センチュリオン・コアであるイグニスを孵化させようとするのは、解っていたからそれは簡単に予測できた。

けれど、リフィルやジーニアスがいるのは、少々計算外だったな、とロイドはレアバードで一人大空を駆けながら思った。
まあ、それも多少の計算外であり、予定通りに進んでいるのには間違いないのだが、それでも出来れば逢いたくなかったと思う。
今の自分には、全てを打ち明けることが出来ない。否、その力が無いこと。

淡い光を放ち続けるイグニスのコアを見ながら、ロイドは久しぶりに逢った2人の昔の思い出に浸っていると、あ、と何かを思い出したように思い出した。

(そういえば、仮面……)

派手に飛ばしたこともあって、回収を忘れていたのだ。
最初の仮面はマナの守護塔跡で飛ばした。あの時もしまった、と思った。
でも、あまりその出来に満足していなかったから良かったものの、今回は前よりも満足した出来だったから多少心惜しい気持ちになった。
まあ、彼の技量からすれば仮面など容易いかもしれないが、それでもロイド自身にとっては今まで作った工芸品の中でも特に力を込めているものらしく、拘りはそりゃもう凄い方で。
幾つかスペックはあるものの、まだ未完成なものが多い。

(まあ、また作ればいいっか…今度は眼球のトコ、違う色にしないとな)

同時に更なるクオリティアップのため、資料も手に入れないとな…そんなことをボヤきながら、ロイドはエミルらに追われないようある程度離れた街、フラノールに来ていた。
フラノールは一年中、猛吹雪が吹雪いている為か防寒用のマントを深く被っていても怪しまれない。
故に今では、世界的に名の知れたロイドにとっては消費アイテムの補給に好都合な街となっていた。

「うう…寒いな…」

幾ら防寒用といっても、寒いものは寒い。けれど恐らくコアの影響によって更に寒さが増しているようで出来れば、早く帰りたいなと思った。

道具屋にて、必要最低限のアイテムと資料になりそうなものを物色し、扉を出た曲がり角の所で、ロイドは足早に急ぐ誰かとぶつかった。

「うわっ!」
「きゃっ」

自分とぶつかるなんてことを、相手も予想していなかったのか驚いたように、(しかし痛そうに)声をあげていた。
怪我をしていたらいけない、とロイドが「大丈夫か?」と手を差し出した瞬間、お互い、「あ」と口が開いて固まった。






「何で俺についてくるんだ」
「リヒターさまにアンタの首を献上する為よ」
「じゃあさっさと掛かってくれば良いだろ?」
「……」
「………」

先程からずっとこの通りの様子でロイドは正直、困惑していた。
リヒターに付き従う、水属性のセンチュリオンであるアクア…それが彼女の名前である。

勿論、お互い敵同士という認識はある。
ロイドはいつでも彼女を払う用意はできていたし、彼女にせよ魔物を召還し、ロイドを挟み撃ちに出来る用意もできていた。
けれど、中々それは実行されなかった。
要はタイミングなのである。………何となく、そのタイミングを二人とも見逃してしまったのだ。

特に襲ってくる気も無いのなら、無理に戦いたくないとロイドはフラノールを後にしようとするが、
何が何でもリヒターの役に立ちたいアクアは、漸く見つけたロイドを逃すまいと、ロイドの後をつけて(ついて?)くるのだ。
最初は可笑しなヤツだと様子を見ていたロイドは、何となく話してみようとダメ元で他愛も無い話をかけてみたのである。

「…お前、センチュリオンなんだろ」
「そうよ」

あ、答えてくれた。
無視されるかと覚悟していたが、答えてくれるとは…案外根は良いヤツなのかもな、とロイドは思った。
続けて、質問をしてみる。

「なんでリヒターと一緒にいるんだ」
「アンタに言う必要はないでしょ」

まあ、予想通りの答えだったなと思う。
普通そういう核心の質問をしても仲間でない(寧ろ敵である)自分には教えてくれないだろう。
でも、それ以外なら何か聞き出せるかもしれないと思ったロイドは、少し変わった質問をしてみた。

「リヒターってどういうヤツなんだ?」
「リヒターさま?」

少し変わった質問にアクアは戸惑い、黙ってしまった。
やっぱり怪しまれたか、と思ったその瞬間。アクアは、はあ…とまるで恋人を想うような溜息を吐いて、凄い勢いで喋りだした。
これってなんだ?…喋りたかったけど、誰にも聞かれなくて、やっと聞いてくれたね的な展開だ。

「リヒターさまは、そりゃもう凄い強いんだから!格好いいし!背も高いし!それにクールなの!ロイド・アーヴィング!アンタなんかじゃ絶対敵わないわね!強いのは剣だけじゃないのよ!強い魔術だって使えるの!そう!頭もいいの。博識。まさに完璧…!こんな人、早々いないんだから!」

アクアは惚気ているようだったが、ロイドは何となくその惚気た内容が知っている人物に似ている気がして苦笑いしてしまった。
きっとアクアはリヒターが好きなんだろうな、と思った…というよりはそうなのだろうなと思った。
でなければこんなに幸せそうな顔はしないし、何よりセンチュリオンであるにも関わらず、一人の男についていく筈が無いのだ。


「俺の知り合いにもそういうヤツ居たな」

自分も同じようなものだなと、ロイドは思った。
こうして口に出すことは無かったけれど、きっと思っていることは同じで、心の中ではロイドの思うその似ている人≠フことを自慢していたに違いない。
「でも、そういうヤツってさ。…扱い難くないか?」
「はぁ?リヒターさまと一緒にしないで!」
「…そうだな、…俺だけかな?随分と苦労したんだけどな」

そんな先程までのまったく違う雰囲気のロイドの様子にアクアは、首を傾げた。
はじめは全否定だったその答えも段々と、言ってみればそうかもしれないと思い始めた。
出会った最初の頃こそ、話しかけることすら難しかったが、行動を共にすることで今ではその距離は随分縮まってきたようにも思える。
そんな想いをアクアがしてきたのはわかるが、ロイドがその想いをしてきた口振りをするものだから意外、だなとアクアはロイドを見返した。
…もしかしたら、ロイド・アーヴィングにはもう一人仲間がいるのかもしれない。

するとその時、ロイドの持っている道具屋の紙袋から何かが落ちたのをアクアは発見して、それを手に取った。
それは、ロイドが拘りを持って作っていた製作途中の仮面であった。

「何コレ?」
「…返せ」
「このダッサい仮面を?」
「うっ……、うるせー!」

思わず素になったロイドは、アクアに赤面しながら怒鳴った。

「なんだよ、いいから返せ!返さないなら…斬る!」
「ヤダ!アタシだって要らないわよ、こんなモノ」
「こんなモノとはなんだ!失礼だな!!」

拘りをこめて作成した(作成途中とはいえ)仮面を貶されて、ドワーフ仕込みの技術を持つロイドのプライドが流石に黙っておられず、アクアに斬りかからん勢いである。
一方、アクアからすれば変な(しかもダサい)仮面を拾って素直に意見を言っただけなのに、こうまでも文句を言われて、悲しいかな性格故か、黙っていられる訳も無く派手な言い合いになってしまったのだ。
しかし、それも束の間。その言い合いもとい、喧嘩はある一人の男によって中断された。

「アクア!……貴様は、ロイド・アーヴィング…!」
「リヒターさま!」
「リヒターか……!」

さすがにリヒターまで来られてはまずいと思ったロイドは、その隙をついて、急いで走り抜けレアバードを飛ばした。
レアバードで逃げられては追いつけないと判断したリヒターは、流石に追いかけることはしなかったが折角の大物に、ひとつ舌打ちをした。
情報によればイグニスのコアをエミルらから奪ったらしいと聞くし、益々惜しいことをしたと悔やんだ。

「申し訳ありません、リヒターさま…」
「いや、…だが何故ロイドがここに居たのだ」
「さ、さあ…」

ロイドがここに居たのもそうだが、何故アクアが彼と話していたのも疑問に思っていた。
そんな彼女の手にある謎の仮面を見つけて、リヒターはそれは何だ?とアクアに問った。

「ああ、これは……ロイド・アーヴィングの残したもので、手掛かりになるかと…」
「手掛かり…?」

…趣味の悪いとしか言いようの無いセンスの仮面にリヒターですら、絶句した。
これがあのロイドの落とした唯一の手掛かりにしては、あまりにも情報量が少なすぎる。
もしあるとすれば趣味がわるい、ダサいとかどうでもいいことだけだ。

そんな仕方ないものを持っていたアクアを責める気にもなれなかったが、彼女は続けて嬉しそうに報告した。

「それとですね!リヒターさま!もしかしたらロイド・アーヴィングにはもう一人、仲間がいるかもしれないんです!」
「…仲間だと?」

聞いた話によれば、ロイドは確か1人で行動している筈だ。
仲間がいるのなら、それは大きな誤算だったといえよう。先程の手掛かりにならない手掛かりよりはだいぶ(マシな)貴重な情報である。

「リヒターさまに似た人だって、言ってました!でも失礼しちゃいますよね、リヒターさまのこと、扱い難くないか?って言うんですよ!まったく…リヒターさまのこと何と思ってるんだか!」
「…………」

その言葉にリヒターは心当たりがあったのか、少し間を置いてから、一言、行くぞ…とだけアクアに言って歩き出した。

そんな何処と無く不機嫌のようなそうでないような、リヒターの様子にアクアは、まずいことを言ったのだろうか?と不安になってしまう。

少しして先程のことをリヒターに謝ると、彼はさらりとして、「いや、構わない」とだけ返し、怒っていない様子にアクアは安堵の息を漏らしていた。



(……扱い難い、か)

全く同じ言葉を昔にも言われ、それをこんな時にまた聞くなんて思いもよらず。

そんな過去の思い出を、ゆっくりと脳裏に思い浮かべながらリヒターは奇妙なことも在るのだな、と静かに次の場所へ足を向けた。


***
アクアとロイドっていう珍しい組み合わせを見たかっただけです。
同じような人を好きになってしまった繋がり(笑)
そしてリヒターは自分と似ていると言われるロイドの仲間?のことを気にすればいいと思う。
それで落とした仮面をエサに使って接触すればいいと思う^q^

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