理由が欲しい

※仲間が酷い扱い&バッドエンド&クラロイダークシリアス鬼畜で暗すぎる話です。要注意。

目の前に壁が立ち塞がった時、もう駄目だ、と思った。
何処だか知らない所、知らない風景、知らない人。全てが知らないものばかり。
でも、確実に背後から来る人物は知っている。

「無駄だ」

怒りを含んだ声。
こうやって怒られるのは、慣れている筈なのに、どうしてか足が竦んで動けない。

「来なさい」

父親口調で言われた其れを、子供であるロイドはどこか本能的に感じ取って反射的にびくっとして固まってしまう。

「ロイド、…聞こえないのか」
「何で、何でなんだよ」

何故か、と聞かれたクラトスは、さあ…何故だろうな、とだけ答えた。
知ってるくせに、そうロイドが言おうとした所で鳩尾に一発食らって簡単に気を失ってしまった。
完全に崩れ落ちる前に、ロイドの身体を抱えてぐったりとした彼の前髪をクラトスは撫でながら呟いた。

「……馬鹿なことを…」




次に目がロイドが目を覚ましたのは、またもや知らない場所で。
勢い良く起き上がる気力もないのか、鳩尾に食らった一撃がまだ少し痺れるような感覚に眉を顰めた。

「…また、か」

“逃げ出した”のはこれで数回目。
その度に、決まって誰かが捕まえにくる。それは“捕まっているから”当然なのだが。
最初は天使の兵士たちが数人で来たが、最近ではクラトスが一人で来るようになった。
武器があるならまだしも、丸腰のロイドにクラトス一人では勝てるわけもなく、こうやって毎回気を失っては知らない場所で目を覚ますのだ。

「…もう嫌だ、…」

この台詞も何度目か。でも何度言ったって、変わらない。
仲間も居ない、自分しかいないこの孤独な空間、そしてクラトスから言われた残酷な一言は決して覆されないのだと。
そんな中、部屋の機械音がしてロイドはそちらに目を見やった。
そこには本来幼馴染であり、世界を再生するはずだった彼女の姿があった。
だが、ロイドはそんな彼女に昔通りに話しかける訳もなく無言で顔を背けたのだった。

「…ロイド」

幼馴染の声がロイドの名前を呼んだ。でも答える気配はしない。
もしも、その声が本来の彼女…コレットならば、彼は喜んで答えたかもしれない、いや抱きしめていたかもしれない。

「その声で俺の名前を呼ぶのやめてくれないか、…マーテルさん」
「……ごめんなさい」


世界はその名の通り、世界再生を果たしたのだ。

コレットが女神マーテルの器に成ることによって完成される本当の意味での初の世界再生。
それはシルヴァラントから見た世界再生であって、逆に繁栄の証である救いの搭が消えたテセアラにとってはこの世の終わりと言わんばかりに、世の中の情勢に大打撃を与えていた。

マーテルの復活を成功させたユグドラシルにとっては、復活させた後のことなど、どうでも良かったのだ。
ただ姉であるマーテルが甦ればそれでいい、一緒に暮らせればいい、と。
実際甦った後、これまで2つの世界を指導してきたユグドラシルはこれを放棄して、同じ4大天使であるユアンに全てを任せていた。

「私では、ミトスをどうすることもできないの…」
「……」

甦ったマーテルは、この4千年間、苦しみと憎しみだけで生きてきたユグドラシル、いやミトスの前では無力であって説得することも、何もできないままに終わっていた。
既に、姉の言葉など聞く耳を持たずといった顔で、ただ名目上甦ったという言葉に酔いしれているだけであったミトスには、かつて勇者と呼ばれ、弟であった純粋なあの頃の面影など当に消えていたのだ。

幸いにも、マーテル自身がまだ自由であることが唯一の救いであろうか。
そんな彼女が心残りとしていたのは、目の前に居る彼…ロイドの事であった。



コレットは、器として死を向かえマーテルの器として甦った。
当然、それはコレットとの永遠の別れを意味しており、つまりは自分が手を下していないとは言え、…間接的に殺してしまったのだと知っていたのである。
そうして、全てを失ったロイドたちの目の前にユグドラシルが舞い降りて、コレットに甦ったマーテルを奪い、そして……。

どうなったのかはロイドすら知らない。…目を覚ますと既に“此処”に居たのだから。

彼…クラトスが言うには、目の前の彼女の通りコレットは器になり、そして一緒に居た仲間は無事に逃げ出せたという。
しかしあれから他の仲間の情報は入ってこない。…恐らく、仲間は死んだに違いないとロイドは内心思っていた。
…クラトスは変に優しい、だから変に判りやすい嘘をつくことをロイドは気付き始めていた。

マーテルが部屋を出て行った後、それを見計らうようにクラトスが中に入ってくる。
監視していたのか、とロイドは少し気分が悪くなったが、それも一瞬のこと。

「…アンタも大変だよな、俺の世話係で」
「…そうでもない」
「じゃあ、一体何なんだ。何で俺は生かされてるんだ」

ロイドにしてみれば、何故自分がここに居るのか、が判らないのだ。
予測できても、自分の掌に残るエンジェルス計画の成功品であるエクスフィア目的のことかとも思ったが、ここに来てからは一切エクスフィアのことで何かされた記憶はない。
それ以外は、何かあるかと聞かれたら可笑しいくらいに、何も無いのだ。
だから、何時殺されても可笑しくないし、寧ろ殺されて当たり前なのに、自分は生かされている不思議に日々疑問を強めていった。

一方、ロイドを殺さない、否、殺させない理由をクラトスは知っていたが、それは自ら進んでは口に出すまいと決めていた。
自分とロイドが実の親子であること、それが生かされている理由のひとつでもある。
勿論妻であり、培養体であったアンナの胎内に居た頃からエクスフィアの影響を受けてきた貴重な実験サンプルとしても、という理由はあったがそんなものどうでもいい。

クラトスにとっては、血の繋がりよりも何よりも、ただ、…愛しい、その理由だけで生かしているのだ。


「っや、やだ、何して…!」

そのまま、クラトスは感情のままにロイドを組み敷くと、やはりその目の前の身体は嫌がるように暴れだした。

「抵抗しなければ、生かされている理由を教えてやろう」
「な、に…!」

生かされている理由を聞くだけのために、誰が好き好んで辱めを受けなければいけないのか。
そうなるくらいならば、まだ聞かないほうが良いと思ったロイドは、渾身の力を込めて足で蹴る。

「っ、…」

これが意外にも効いたらしく、クラトスが怯んだ隙にカードキーを奪い、
この部屋から出ようとカードキーを通したが、思わぬことに扉は何一つ動くことなく、ピーと無機質なエラー音が発しただけであった。

「何で通らないんだよ!?」
「…それは、ダミーだ。その扉は私の声紋で開く」
「!!」

しまった、と背後に現れた低い声に振り返ったが最後。
そのまま、ドアの方へ激しく押し付けられ、口元が生暖かい温もりで覆われた。

「ん…ぐ…っ!!」


暫く、その温もりが続いて離れると、身体のマナが無くなったかのようにロイドの身体がへたりと地面に落ちた。
その様子を見てクラトスは、酷く悲しい声で言い放った。

「……教えなくとも、直に判るだろうがな」
「…な、ん……で」
「お前は何故、何故と聞くばかりだな。少しは自分で考えてみることだ」
「判らないから聞いて…ッう、く…」

へたりと地面に崩れ落ちたロイドの身体をクラトスは再度組み敷き、顔を近づけるとロイドは今にも泣きそうな顔で横を向く。
組み敷かれた体勢になって、衣服から出た素肌が冷たい地面にあたるのがとても気持ち悪い。でもそんな事を言っていられる訳も無く、自分の恥ずかしい所を撫で上げられる感覚にただただロイドは唇を噛み締めていた。







「何故、自分は生かされているのか、と言ったな…」

未だ組み敷かれたまま、息の上がっているロイドに対して、クラトスが静かに問った。
身体中は汗と愛液でベタベタになり、もう身体は殆ど動かないといってもおかしくないだろう。
その証拠に、ロイドはもう暴れることすら叶わない。おまけに未だ繋がる其処に、成す術も無くただ、されるがままに相手を悦ばせている。

…果たして相手が悦んでいるのかはわからないが。

「……」

声が枯れて答えられないロイドに、クラトスは勝手に続けた。

「愛しいから、とでも言えばそれで良いか?」
「………愛し、…い?」
「愛しているから、それで良いかと聞いている」
「……は、ははは…はは…」

ロイドは掠れた声で、壊れた玩具のように笑い始めた。
そんな様子のロイドに特に驚きもせず、クラトスはロイド、と一度名を呼び、首筋に口付けをする。
だが、それがロイドにとっては逆効果だったらしく、急に大声で怒鳴り始めた。

「好きだからこうやって生かされてるっていうのか?…ふざけんな!…こんな、こんなの惨めすぎるだろ!」
「……」
「だったら、なんで皆愛してくれなかったんだよ!なんで、…皆生かしておいてくれなかったんだ………俺だけじゃなくて、ジーニアスや先生、…それにコレットも…!!!」

自分だけ愛されているから生かされる。
クラトスに愛されたから生かされる。
では他の仲間達はどうなのか?それはつまり、…他の仲間達はクラトスに愛されなかったから生かされなかったということ。
そんなの、…あまりにも、惨くて酷過ぎる。

しかしそんなロイドの訴えも虚しく、未だロイドの中で蠢く熱に打ち付けられてしまい、勢いは無くなってしまった。

「…っは、あッ…」
「では、…その理由以外で生かされたいというのなら、……要の紋を外せ」
「な、…っ」

其れは所謂、死刑を宣言されたようなもの。
要の紋を外すことは、ロイドの母親であるアンナと同じ道を歩むか、…もしくは終わりの無い生き地獄が待っているかのどちらか。
どんどん青褪めていくロイドに、今度はそっと頬に優しく口付けた後、そんな優しさとは裏腹に鋭い目線でクラトスは言った。

「お前以外にハイエクスフィア培養の要素がお前程、高いものが居なかった、だから生かしておく理由がなかった、それだけだ。…お前が愛されているという理由が気に食わないなら、エクスフィア実験体として生きるのだな。それがお前の生かされている理由でもあるのだから」
「……っ、く…俺は…そんな、…のイヤ…だ」
「……自惚れるな」
「っは…っうあああっ、!」
「どちらも選ばなければ、良いなどと言う安楽な考えは止すのだな。…どちらとも選ばぬのなら、今此処で私がお前に手を下そう。…こうして身を交えたままでな」
「っ…!!!!」

そう冷酷に言っ放ったクラトスの両手が自分の首に絞められる。同時に腰も少しずつ蠢き始める。
素直に剣を刺されて、もしくは爆発に巻き込まれて、誰かを庇って、…そんな死に方じゃなく、裏切り者である彼に一番の辱めを受けて死ぬのか。
怖い。…怖い、怖い、そう歯の裏がカチカチ当たる程の恐怖がじわりじわりとどこからともなくロイドを襲ってくるが、その恐怖を抑える程に自分の秘めたる部分から快楽が覆いかぶさってくるのだ。
怖くて、死にそうなのに、とても気持ちよくて。…それは地獄だ。死にたくないと抵抗する気力が、すべて快楽に攫われてしまう。
快楽を与えられることを辞められれば、多分抵抗はできるだろう。でもそうすれば、恐怖が己に覆いかぶさっていく。
地獄のような葛藤の中で、ついにロイドは口を開いた。

「っは、…して…愛して……」
「……」
「愛してく、れ…っ…!っああ!」
「…判った、私はお前を愛そう。…それがお前の生かされている理由だ。」

愛してくれ、とロイドが自我を忘れ、何度も叫んでいた。
その様子に満足したのか、クラトスは律動を早めて中に穿つと、うってかわって心底愛しそうに彼を抱きしめた。


「……だから、お前はエクスフィアの実験体にもならなくて良いし、誰にも従うことは無い…。お前が生かされているのは、…私に愛されているだけ、なのだからな…」




***
こうすることでしか愛する息子を守れない不器用すぎて狂ってしまった父親の話。
すっごい酷いバッドエンド的な話ですいません…orz

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