子供は、野蛮で、空虚で、美しい

とても心地よい日差しに風。
そして広がる緑と晴れ渡った空、遠くに見える地平線。
まるでピクニックをしている気分だと、錯覚すら覚える程で、その事を口に出すとああ、それなら今日は昼は外で食べましょうかとリフィルが答えた。

まるで学校の遠足のような、そんな情景。
これが今から世界を救うために死地へと向かう者達なのかと一瞬、目を疑いたくなる。


導きの小屋で休憩を取り、今日は何処に宿を取るかで検討する大人組とはよそに子供組は、外ではしゃいでいた。

「あの子達は本当に元気ね」
「いいんじゃないかい?元気あるってことはサ」
「あれ〜、しいなも実は混ざりたかったんじゃないの〜?」
「バカ言うんじゃないよ!アンタとは違うんだからこのアホ神子!」

ゼロスがしいなを茶化すのを見て、リフィルとリーガルは目を見合わせ、「あまり変わらないものね」と苦笑いしながら大人組であるリフィル、リーガル、ゼロス、しいなの4人は、テーブルにテセアラの地図を広げ現在位置を確認し、一番近い宿を検討する。


レアバードを手に入れた今、移動はかなり楽になった。
ノイシュと共に歩いたり、エレカーで海を渡るよりは時間効率が随分向上したとも言えようが、大所帯になった故か、レアバードのマナの消費もかなり激しくなっていった。

マナの枯渇を防ぐ為に出た旅の筈なのに、マナが衰退し始めているこの世界でマナをやみくもに消費するのは良くないと判断したメンバーたちは、上空からでしかいけない場所には、勿論レアバードを使う前提として、ある程度歩いていける所ならばなるべく歩いていこうという判断に落ち着いたのだった。

「ここからだと、そうね。少し遠いけど、フラノールね」
「フラノールか、…どうせ遠いんなら俺サマ、アルタミラがいいな〜」
「アンタはナンパ目的だけのくせに」
「でひゃひゃひゃ…」
「物資の調達もしたいし、フラノールに行きましょう」
「あれ、俺サマ華麗にスルー?」

そんなゼロスの意見は軽く流され、日が暮れないうちにフラノールに行くことになった面々は、早速、外で遊んでいる子供組に声を掛けると直ぐに荷物を纏め始めた。

「しかし、本当に信じられんな」

リーガルがふと、レアバードに荷物を載せる際にポツリと嘆いた。
そんな発言にプレセアが反応して、くるりとリーガルの方を向いた。

「どうしたんですか?リーガルさん」
「いや、これが本当に世界救済の一行かと」
「…信じられませんよね、私もです」

決して悪く言っている訳ではないのだが、幾ら実力はあるとしても、自分よりも年下であまりにも純粋すぎることにリーガルは不安を感じていた。

だが、その不安に思う要素こそ、つまりは純粋であることが強さの秘訣であることもリーガルも知っていたし、今更何をそんなことをと言われればそれまでかもしれないが。

「…そう言えば、先程はロイドたちと一緒に外に出ていただろう?」
「あ、はい」
「何をしていたのだ?」

大人組と子供組で別れた際に、いつもならどちらかと言えば大人組の方に顔を出しているプレセアが、今日は珍しく子供組の方に混ざっているのが不思議でいたリーガルはそっとプレセアに何をしたのかを聞いてみる。

するとプレセアは恥ずかしそうにしながら、少し間を置いて小さい声で答えた。

「……こ、です…」
「プレセア?」
「鬼ごっこ、してました」
「鬼ごっこ?」

いつも大人びていてそれで子供のようで子供でないプレセアの口から鬼ごっこという単語が出たのにリーガルは激しく驚いてしまった。
いや、普通にしてみればプレセアの口から鬼ごっこという単語が出て当然なのに。

「はい。…ジーニアスに誘われて」
「ああ、そうだったのか」

それにしても、こんな時にロイドらは鬼ごっことは…と少し呆れながらも、微笑ましい事だとまるで父親になった気分でリーガルは思った。

まだ彼らだって子供であるし、遊び盛りな時期なのだから仕方ないこと。
部屋に篭るよりは、外に出ておおはしゃぎした方が自分だけでなくリフィルらにも安心できることだろう。

「はい。楽しかったです、何だか懐かしくて、ついムキになってしまいました」
「それは…」

リーガルは微笑みながら、それは良かったと続けた。
最初出会った頃の彼女からは考えられないほど、感情を取り戻しつつあるプレセアの成長に、心底リーガルは安堵していた。

「ジーニアスは慌てて逃げるといつも転ぶんですよ。それに、コレットさんは、羽があるから凄く有利なんです。ロイドさんは、ピンチになるとノイシュに乗って逃げるんですよ」

しかし、今日遊んだ鬼ごっこのことを思い出しているプレセアの表情が、段々と曇り始めているのに気づいて、リーガルは、もう一度プレセア、と名前を呼んだ。

「あ…、すいません」
「いや、いいのだが…何か気になることでもあるのか?」
「…私の思い過ごしならいいんですけど…、」
「ああ」
「…皆さん、凄く楽しそうに話してて…追いかけあいっこしてるのに」




…笑っていないんです。





***

大人たちを心配させないように子供のフリをする子供たち。
失った感情を取り戻す大人と、戦いの中で子供らしさを失う子供。

途中で何かいてるかよくわからなくなりましたすいませんorz

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