うっぷん

「エミル〜vvv」
「ま、マルタ…」

なんだかんだ言って、パーティの一員として加わったのはつい最近のこと。
外見からすれば、そうでも無かったのに仲間として入ってみてからはどうだ。
エミルとマルタのイチャつきようはそれはもう、リフィルも黙るほど強烈であった。

ロイドはそんな二人を見て、ああ若いなとか他人事のように思っていた。
自分にはそういう経験が無いから思えるのかもしれない。
旅に出た当初のことを考えるとそんな状況ではなかったし、何せ仲間の一人はは世界を救う再生の神子で、
しかも自分も罪も無い人を殺して、村を追放されて正直言って笑い事じゃなかった。
だから少し羨ましくも思える。笑って旅が出来ることは良いことだと。

「ハニーってば、何見てんのよ」

ゼロスがいつものように、後ろからくっついてきた。

「え?ああ…エミルとマルタ」
「なんでまた?あ、判った。ハニーもあの二人のもう、そりゃ凄い惚気っぷりに宛てられたとか?」

間違っては無いな、とロイドは苦笑いした。
すると近くにいたジーニアスが、ロイドにくっついているゼロスを見てむすっとしながら言った。
エミルとマルダだけでなく、ゼロスとロイドまでがイチャイチャされると目のやり場に困るから辞めてくれ、と言ったような顔で。

「ゼロスだっていい加減ロイドにくっつくの辞めたら?変に思われるよ」
「えー俺サマ、ハニーと久々に逢えて嬉しいんだからいいじゃないの〜」
「本当ばっかみたい」
「何よ、プレセアちゃんとうまくいってないからって、俺サマたちに当たるのはちょっとな〜」
「なななななななな、何を言って…」
「おーお。男の嫉妬は醜いぜ?」

ゼロスとジーニアスが言い合いを続ける中、ロイドが辺りに大きく聞こえるような溜息を吐いてポツリとつぶやいた。

「あー俺もイチャイチャしたかったな」
「「え?」」

今まで全然喋ることもなかったロイドが急にそんな事を喋りだしたのだから、驚かずにはいられない。

そして、一斉にメンバーが凍りつく。

「ろ、ロイド?」

コレットが赤面しながら、問いかけてみる。

しかしロイドは、昔のような口ぶりで答えた。
…顔は笑っていないが。


「俺もさ、アイツらみたいにイチャイチャできたらよかったなって思ったんだよ。」

半ば何だか自棄したロイドの口ぶりに、誰もが大丈夫か?という感じで名を呼ぶも、ロイドは続けてペラペラと喋っていく。
コレットは、それが自分でないこと悟ると途端、何だか憎しみを帯びた顔で下を向いた。

(…ロイドさん、危ない)
そう感じ取ったのはプレセアだけだった。

「だってさ、アイツはさ、何も言わないし。それに何かしたら凄く怒るし、くっついたら離れろっていうし。でも俺より強くて腹立つしさ、それに、自分だけトマト食べないんだよな。
なんだよ、自分は大人だからいいみたいなさ。それに怪我するとすっごい怒るし。俺だって、イチャイチャしたかったよ。すっごいしたかったけど、アイツ全然そんなの許してくれないし」

いつの間にかそのロイドのヤケクソな口調にエミルとマルタも気付いたのか、こちらに近づいてきて
ロイドのその言葉の内容唖然とする。無理もない、二人にとってはあのロイドが「イチャイチャしたかった」とか、そんなこと言うはずは無いのだから。

「それに、もーやだってんのに夜は異様にくっつくしさ。あーあとなんだ?勉強だって何でお前は出来ないのだ?とかスカした顔でさー」

そんなロイドを横に、エミルとマルタがこっそりとしいなに声をかけた。
ロイドの言ってる人とは誰なんですか?と。しかし、しいなはアハハハ、と苦笑いしながら言葉を詰まらせた。

まさか、言えるわけもない。
その相手がどんな人でロイドとどういう関係なのか。
助けて、としいなはメンバーに目線を泳がすがことごとく視線を背けられてしまう。


「な、な…何て言ったらいいのか…ねぇ」
「コレットじゃないの?」
「いや、コレットじゃないんだけどサ…」

コレットだったらまだ良かった、としいなは逆に思った。でもそれが、あの人なのだから逆に性質が悪い。

「じゃあ、ロイドの言ってる人って…?」
「そ、そうだねえ…」

まさかその相手が、ロイドの恋人で同時に親バカでストーカーな父親ですだなんて、この穢れ無き子供たちに言うのはとても酷だと、しいなは苦笑いをしてその場を誤魔化したのだった。


結局、その日。
ロイドの文句は日を暮れても終わらず、彼の好きな肉料理をご馳走することで漸く機嫌が良くなったのか、通常通りの少し憂いを帯びたロイドに戻ったのであった。


***
そして裏でロイドは泣いていて「ばかやろう…逢いたくなっちまったじゃねぇか」と泣いてると良い。
ていうかイチャイチャしたかったとか平気で言う攻略王どうなの^q^
後でロイドはコレットにこてんぱんにされましたとさ^^

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