「あのさ、ロイドくんてばその髪型は誰に似た訳よ」 「え?」 ゼロスが不機嫌そうに、いつも天を仰ぐ髪をひっぱって言った。 痛いからやめろ、とその手を払いのけるとゼロスが不満そうに言い返した。 「だってさ、お前どこに行っても何やってもその髪型じゃん。何、形状固定髪型な訳?」 「…知らねーよ」 自分の髪型なんて、物心ついた時からこうだった。それにセットなんかしなくとも自然に立ち上がる激しい癖っ毛だったから、ロイド自身は楽でいいなあなんて思っていた、が。 「そんな髪型だからお前、モテないんじゃねぇの?」 「な、……なに!?」 性格や手先の器用さに関してはロイドは確かに男前だと言えよう。 だがそれ以外はまるでダメだと言わんばかりにゼロスは説いた。 いつものロイドなら、軽く流せたかもしれないが何となく心当たりがあって流せず、産まれて始めて自分の容姿を気にし始めたのだった。 そうして、ゼロスに言われるがままメルトキオに直行。そのままゼロス宅にお邪魔してしまう形になってしまった。 「デコ丸だしは良くないな、うん」 高そうな装飾のついた大きな鏡の前でゼロスは手慣れた手つきでロイドの髪を櫛で梳く。しかし次の瞬間やっぱり何度やっても寝かせた髪の毛が立ち上がってしまう剛毛にゼロスは溜息を吐いた。 「こりゃ、誰の遺伝だよ」 「う、うるせーな」 そりゃ思い当たるのはクラトスか母であるアンナしかいないとロイドは考えた。 しかしどう考えたって母親が自分と同じような髪型であるわけがない。とすれば必然的にクラトス似となる訳だが、…クラトスとも違うような気がする。 そう、ロイドの思い当たる節とはまさにこのこと。 あまりにもゼロスがロイドはイケてないとか言うものだから、最近気にし始めてしまったのだ。加えて先程の髪の話題。 自分の父親を見ればどうだろう。 街を歩けば街中の女性の視線を集め、声を掛けられる程端正な顔立ちにその無駄のない容姿。おまけに寡黙で剣の腕も良い。これが自分の父親であるのならばどこか一つぐらい要素を受け継いでも良いはずなのに。 そうぶつぶつロイドが呟いているとゼロスは最後の手段と言わんばかりに、小物に入った半固形の何かを取り出し髪につけだした。所謂、ワックスなるものである。 「何かすげぇにおい」 「これが普通なんだよ、お子ちゃま」 「馬鹿にすんな」 「へいへい」 それを手に取り、髪を寝かせ所々跳ねさせる。遊び半分だったゼロスは段々熱が 入り始め、気がつくとそこには何故か見覚えのあるような人物がいた。 「ありゃ…何か」 「…ん?」 それまで鏡を見すらせずに居眠りをしていたロイドが始めて鏡を見るとビクッと飛び跳ねた。 「何だよこれ!?」 「…やっぱお前父親似だわ」 「……」 髪を寝かせ、ゼロスなりにセットをしてみたがやはりどことなくその生い立ちは彼の父親を連想させた。 やはり実の親子は怖いなとゼロスは心の中で呟いた。 「待てよ、今日これで1日過ごすのかよ」 「いいじゃねぇか、格好いいぜ?」 「ほ、本当か?」 ゼロスは嘘はついていなかった。 確かに今のロイドは父親似で格好良いし、そこそこの服を着て、黙っていたら多分それこそ女性の注目になるだろう。黙っていたらの話だが。 しかし、街の住人は兎も角としても仲間内はどうだろうか。 きっと渋い顔をするだろうなとゼロスは苦笑いした。 *** 父親に似るロイドをゼロスがちょっと嫉妬してる話。 世界最大の謎のひとつでもある、息子さんの髪質が気になってしまって仕方ありませんな話第1弾。 多分続きます。(笑) [*前へ][次へ#] |