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dream

  足元に転がる死体を見ながら、さっきの戦闘を振り返る。冷静だった、どんなときも。予期せぬ動きにも、突然沸いて出た仲間にも、動揺せずに対処できた。そして今、こうして俺は死体の前で、たいした怪我もせずに立っている。…ちょっと俺、強くなったんじゃね?思わず自画自賛でにやついていると、呼んでおいた協会の人間が、屋根伝いにやって来るのが目に入る。スーツの男が目の前に降り立った。
「ご苦労様です。ハンターライセンスをこちらにかざして頂けますか?」
 言われたとおり機械にかざすと、ピッと機械音がした。一足違いに来たつなぎ姿の二人が、着いた早々鑑識作業を始めた。
「では、こちらの死体がご連絡頂いたB級首と確認の取れ次第、ご指定の口座にリアルタイムに報酬をお振込みいたします」
 整然と事を進める知的眼鏡。
「じゃあよろしく。…てゆーかあんた、前呼んだ時と同じ人だよね?」
「おや、覚えて頂いてましたか?それは光栄です」
「前も思ったんだけどさー、何であんたみたいのが、こんな仕事してるの?」
 だってすごく強い…ハンター協会には、こんなのごろごろいるってのか?
「フ……そうですね、それはハンター協会トップのじじいが、ものすごく性格が悪いから、とでも言っておきましょうか」
 眼鏡をくいっと持ち上げて、フフフ…と、黒い笑みを浮かべた。やばい、苦手なタイプだ…
「そっか…、あんたも色々大変なんだな。まぁ、がんばって…
「私も一つ、聞いてもよろしいですか?」
「何?」
 穏やかさに鋭さを忍ばせた目が、俺を捉える。
「幻影旅団について、何かご存知ありませんか?」
 一瞬で、旅団の連中の顔がよぎる。懐かしさと切なさがないまぜになって、苦笑いが浮かぶ。
「なぜ俺に?俺が流星街出身だから?」
 悪いものは流星街から。まあ、あながち間違ってないけど。
「いえ、我々もあまり手札がないもので、手当たり次第に情報を集めているんですよ」
 言葉とは裏腹に、妙に威圧感を感じる。もしかしてこいつ、俺だから来たのか?揺さぶられている?どこまで知っている?…つーか、どーせ俺、大したこと知 らねーし。少し感じた悔しさを紛らわすように冗談めかして言う。
「同胞は売れないよ」
「おやこれは、問題発言ですね」
「協会に報告する?」
 そう言うと、男は表面的な笑みを浮かべた。
「知っていましたか?B級首ってなかなか、捕らえるのは難しいんですよ。ましてや一人でなんて」
「は?」
 急に何を言い出すんだこいつ
「犯罪者の撲滅は、協会の社会的意義を高める重要な側面です。これからもあなたの活躍には期待しております」
 ああ、そう…
「あなたはこちら側の人間ですよ」
 高慢で、知ったふうな言い方を不快に感じる。
「さいなら」
 もう話すこともないので、背を向けて歩き出す。追ってくる視線がわずらわしくて、すぐに角を曲がる。不意に見上げた空は、雲もなく澄み渡って、白い月が ぽっかりと浮かんでいた。寂しそうだな。…あほか。寂しいのは…、俺だろ。ずいぶん、遠くなっちゃったのかな。
クロロ…、世界って、思ってたよりずっと広いよ。お前は知ってたかな?…知ってたとしたら、分かんなくなる。お前と交わした約束は、本当に約束だったのか、別れの言葉だったのか。 

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