dream trust ドア越しのばか騒ぎの声が、一瞬大きくなり、また遠のく。 「気持ちいいか?」 せっかく一息つこうと抜けてきたのに、一番やっかいな奴が来た。 「お前も風に当たりに来たの?」 「酒はあまり強くない」 嘘つけ。素面と変わらない顔をしたあざとい人間に、全て見透かされそうな気がして、さりげなく顔をそらす。 「みんなに歓迎されてる」 「好意的というより好戦的。妙なこと吹き込んだろ?」 「事実を言っただけだ」 どーだか。 「お前は社交的に見えて、ひっそり壁を作るよな」 「そっちは信用するのが早いんじゃない?」 牽制するような態度が、却って小物感を醸してしまった気がした。でも舐められたくない。クロロは不敵な笑みを浮かべると、俺の目を射抜いて言った。 「そういう能力がある」 また顔をそらす。やっぱりこいつ…、重い。能力…、念能力。かなりの秘密を押し付けられた。 「でも使っていない」 「なんで?」 「信用できると思った」 「なんだそりゃ…。人を見る目に自信があんの?」 「いや、そんなものはない。ないけど…、だめならそれで、その時に考える」 「いつか足元すくわれる」 「かもな」 他人事のように笑う。一転して軽い口調。 「変なやつ」 妙に親しみを込めた響きにむずがゆさを覚え、かき消すように質問する。 「あいつらもそうやって集めたの?」 「物心つく前から一緒にいる」 「なるほど」 なら、お呼びじゃないじゃんか。ふっと笑う声に、心を読まれたのかと動揺する。 「お前もかなり変なやつだ」 「どこが?」 「それとも俺の気を引こうとしてやってるのか?」 「はあ!?」 意味が分からないが、なんとなく顔が熱い。 「俺が好きなら仲間になるしかないな」 「すっげーナルシストすぎてついていけない」 「それともそういう関係じゃ満足できないのか?」 あほらしすぎて、酔いやらなにやら、醒めてきた。 「俺は一人が好きなんだ。もう帰る」 「怒ったの?」 悪びれず聞いて来る顔に、まじで殴りたいと思う。 「その絡み方うざい」 「そうか、なら変えるよ」 「もう遅い」 部屋から出ると、マチちゃんが廊下で待機していた。 「あれは実は酔ってるの?」 「さあ?また来るの?」 「来て欲しい?」 気の強そうな目が、きっと睨み上げ、やがて興味を失う。 「クロロはしつこいと思うよ」 どことなく同情の空気を感じるのは、…気のせいだと思いたい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |