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dream
美人
 歩きながらさりげなく、しかし抜かりなく、逸品を捜し求める。 いやーしかし、この国は美人が多い。あー、顔がにやける、やばいやばい。両手で頬をくにくにとつまんでごまかす。オープンテラスで雑誌を読んでいる女の子に目が留まる。隙のない化粧に、露出度の高い格好、きつく上がった目が色っぽい。
「あの子かわいくね?」
 少しあやふやに指をさしながら、クロロに笑顔を向ける。クロロはうんざりとした顔で淡々と言った。
「そのセリフ、今日7度目だ」
 かわいらしい笑い声が聞こえた。 視線を向けると、広場の噴水のふちに座る、金髪ストレートで少したれ目がちな女の子と、緩めのカールがかかったダークブラウンの髪に、幼い顔立ちの女の子が目に入る。金髪の女の子のこぼれそうな胸元がまぶしくて、思わず目を細める。もうダメ、君に決めた。
「あの2人よくね?お前が左、俺が右。よし、行くぞ」
 早口でそう言って彼女の元に向かおうとすると、後ろから服の首元をひっぱられて止められる。
「お前、ガツガツしすぎだぞ。そんなんじゃモテないだろ」
 クロロはあきれたように言った。振り返って諭す。
「馬鹿だなクロロ。女ってのは、押して、押せば、押し倒せるんだよ」
「下品だな」
 軽蔑した発言に反論しようとするが、ばからしいのでやめる。
「なんとでも」
 そう言って、2人組の女の子に視線を戻すと、既に男2人に捕まっていて舌打ちする。
「先を越された」
「諦めるんだな。さて俺たちは、もっといいものでも奪いに行くか」
 その言葉に、嫌な予感がする。
「まさか…また?」
「そこの美術館に、欲しい物があるんだ」
 クロロは首をくいと動かして、こぢんまりと古めかしい建物を示した。自分で動いていたつもりが、いつの間にか誘導されていたと気づいて、少しクロロが恐ろしくなる。たじろぎながら主張する。
「お前さ、盗むならクモとやってくんない?俺って一応ブラックリストハン…
「いいだろ。お前と盗るのは楽しいんだ」
 クロロは屈託なく、楽しそうにそう言った。お前…よく恥ずかしげもなく、そういうセリフが言えるよな…。
「しょうがねぇな」
 癖になったら、責任取れよな。 

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あきゅろす。
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