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dream
baby
 男は目を開けると、俺を見て言った。
「おはようママ」
「なんでやねん」
 目がおかしいのか?頭がおかしいのか?
「聞こえてたよ。ママの子守唄」
 男は弱弱しい笑みを浮かべて言った。あぁ、なるほど。それでか
「ママ。水が飲みたいな」
 ママと呼ばれて、気分が下がる。
「自分で飲めよ」
「まだ無理だよ」
「うそつけ」
「お願いだよ」
 まだあまり顔色の良くない顔でじっと見つめられると、妙に庇護欲を駆り立てられ、渋々水をやる。大丈夫か俺…?
「お前、3日間も寝っぱなしだったんだよ」
「ヒソカ」
「うん?」
「僕はヒソカ。ママの名前は?」
「ママは止めろ。 ビアンカ」
「 ビアンカ」
 ヒソカは俺の名前を呟くと、うれしそうに笑った。こいつ…ちょっとかわいい…いや、待て!俺!
「……何かして欲しい事あるか?」
「んー、トイレに行きたいな」
「そっか。立てんの?」
「支えて欲しいな」
「オーケー」
 肩を貸してやりトイレまで向かう。
「クク…。僕のアレ、持ってくれるのかい?」
「死んでもやだ」
「でも、一人じゃできないよ」
「座ってしろ」
 ヒソカを便座に座らせるとトイレのドアを閉める。ヒソカがトイレから出てくると、また肩を貸してやりベットまで連れて行く。
「ねぇ ビアンカ。君、どうして僕の面倒見てるんだい?」
「お前に同情した天使に、お前を託されたから」
「あぁ、そういえば、なんかいたような気がするね」
「お前は10日後に、リアに元気な姿を見せて、お礼を言うんだよ」
「なるほどね」
 血の滲んだ包帯に目がいく。
「包帯換えるか」
 体も拭いたほうがいいか。タオルをぬらす洗面器の水を換えるために洗面所に向かう。
「 ビアンカ」
 呼ばれて振り返ると、ヒソカが俺をじっと見て言った。
「ありがとう」
 向けられた、きれいなほほえみ。なんだか照れる。
「別に大した事してないよ。あんたは何もしなくても、一人で回復してたよ」
「違うよ。僕、君がいたから、今こうして生きてるんだよ」
 大げさだな。大怪我した後で、まだ神経が高ぶってるのか?
「それはリアに言ってくれ」
「でもそう思うんだ」
「そうかよ」

 包帯をはずすと、一番ひどかった心臓付近の傷さえ、少し治り始めていた。
「ばけもんだな」
「クク…。そうかな?」
 タオルで体を拭いてやる。
「んー、興奮しちゃうね」
「黙ってろ」
 なんかお前が言うと冗談に聞こえないから。 リアが置いていった消 毒液を開けて、傷口にべチャべチャとつける。
「うわー痛そー」
「そう思うなら…あっ…もっと…ぅん…優しくやってくれても…はぁ…いいと思うな」
「お前はもっと痛そうにした方がいいと思う」
 とりあえず、感じてるような反応はやめてほしい。
「意外とSなんだ」
「お前はドMだろ」
「ドSでもあるんだけどね」
 ほがらかにそう言って、清々しい笑顔。
「いらない情報どうもありがとう」
「いつか役立つといいね」
 顔をしかめる。そんな日は永久に来ません。
「抗生剤もあるけど打っとく?」
「打っとく」
「自分で打つ?俺が打つ?」
「 ビアンカに打って欲しい」
 そう言って、ニタリと笑う顔は正直きもい。
「あぁ、いいねぇ、 ビアンカに打ってもらうって響き」
「やっぱ俺絶対やんない」
 悦に入った様子に寒気を感じる。誰かこいつをなんとかしてくれ。 包帯を巻きなおすと、タオルを渡す。
「下は自分でやれ」
「やってくれないのかい?」
「断固拒否だね」
「残念だねぇ」
 疑惑がよぎる。こいつ…まさかホモとかなんじゃ…
「どうかしたかい?」
「いや別に…あ、何か食うか?」
「うん」
「やっぱ病人はおかゆとかか?」
「うん。そんなのがいいね」
「んじゃ注文してくるから、その間にちゃんと拭いとけよ」
「はいママ」
「ママはやめろ」

 おかゆをスプーンにすくうと口元に持っていく。
「ほれ食え」
「フーフーしてよ」
 見た目とギャップのある言葉に、力が抜ける。マジかこいつ?
「甘えるな」
「でも僕、猫舌なんだよ」
 確かに猫に似てる。
「しょうがねぇな」
 フーフーと冷ましてからまた口元に運ぶ。
「あーんは?」
「死ね」
 ヒソカはしょんぼりとした様子でスプーンを口に入れて食べた。あーもう!
「ほれ、ヒソカ。あーん」
「あーん」
 ホント俺、大丈夫かな? 

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