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dream
find
―−――1978 流星街
「はい、おまちどおさま」
「ありがとう」
 いい匂いと、渡された皿の温かさに胸が高鳴る。 ああ今日もご飯が食べられる。幸せ。
すぐにでも掻き込もうと料理にスプーンを突き刺したところで、度々浮かぶ疑問がまた浮かんで、動きを止める。

なんでこの女は俺を生かそうとしてくれるんだろう?

 ぼんやり女を見つめていると、女が気づいて微笑を浮かべた。不可解な優しさが、薄気味悪い。
「たくさん食べろよ」
「うん」
 かけられた男の声に、反射的に返事をする。なんでこの男も、俺に優しくしてくれるんだろう?俺が子供だから?弱いから?…まあ、いいけど、助かるし。考えるな、考えるな…
気を取り直そうと、目を閉じて小さく深呼吸をする。

『でも明日捨てられるかもしれない』

 頭の中で囁かれた自分の声に、頭が急激に冷える。

そうだきっと、いつもそうだろ?

今日見た死体が頭をちらつく。むき出しの、呆気ない死の姿。背筋が凍って、息が乱れる。

「ひとりにしないで」

言葉を飲み込む。もう口にはしない。期待しても裏切られるだけ。 それなら、利用して、奪って、俺の方から…


―−――9年後
 うんざりと、果てしないごみ山を見つめる。
腹減った…。くっそー…、なんもねぇよ。しくっ たなぁ…、定時投棄を寝過ごすなんて。
肩を落としてうなだれていると、不意に背中に視線を感じ、とっさに振り返る。うず高く積まれたゴミ山の上に、太陽を 背負った人影。目が合った。黒くて大きな目に引き寄せられる。

こいつも俺と同じだ。いや、俺よりもっと、何かを求める目。

「「ねえ」」

 声が重なった。ドキドキして、次の言葉が出ない。
「俺はクロロ。君は?」
 名前ぐらい、言ってもいいよな。
「 ビアンカ」
「君、使えるんだね?」
 使える?何を?そう聞く前に、クロロのよどみなく流れるオーラに気がつく。
「あぁ、これ?」
 練をしてみせると、クロロは微笑んだ。
「そう。…ねぇ、仲間にならない?」
 仲間…仲間ねぇ…。少しだけ惹かれた。でも
「やめとく」
「どうして?」
 切れ間なく返された質問に、少し戸惑う。
「俺は…、そーゆうの無理」
「そっか…。でも会うのはいいだろ?」
 残念そうな顔はすぐに切り替わって、楽しそうに聞いてくる。押しの強さがおもしろい。それに…少しうれしい。
「うん。それは、俺も…いいよ」
 なんだかくすぐったくて、目をそらして答える。
「よかった」
 うれしそうな声に、またすぐに顔を上げれば、まぶしい笑顔が向けられる。こんなきらきらした人間に初めて会った。すごいな。よかった。うれしい… 

『クロロー!ちょっと来てくんなーい?』
 遠くからクロロを呼ぶ声が聞こえた。
「ごめん。行かなきゃ。明日午前10時にここに来れる?」
「うん」
「じゃあまた明日ね」
 そう言ってクロロは去っていった。

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あきゅろす。
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