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蒼紅
花嫁が来るまで
真っ白な教会。ステンドグラスから差し込む暖かい光。ピアノから流れる綺麗なメロディ。
赤いバージンロードを見据えながら、祭壇の前で花婿である将臣は花嫁を待っていた。
一方、来賓席には八葉の面々と望美、朔、そして白龍が座っていた。

「オレの方が緊張してきちゃったよ……」

胸元を押さえながら、そわそわしていて先程から落ち着きがない。緊張する〜と唸る景時に横に座っていた朔が呆れたように溜息をついた。

「兄上、しっかりして下さい。主役は将臣殿とヒノエ殿ですよ」
「そうだけどさ〜」
「気持ちはよく分かります。でも、私達は二人を祝福するのが役目なんですから」

朔の言葉に景時は納得して、じゃあ全力で祝福しなきゃねと笑ったのだった。





「兄さんは本当にいつも俺の先ばかり行くよな」

譲は祭壇にいる兄――将臣の姿を見ながら、小さく笑っていた。
ヒノエと結婚する。
そう聞かされた時は衝撃を受けた。だが、反対など考えはしなかった。
兄があまりにも真剣だったから。
誰もあの二人の仲を裂くことは出来ないと感じたから。
自分は祝福してやらなければならないと思った。
きっと皆も同じことを考えたのだろう。
皆、祝福していたから。

「幸せになれよ、二人とも」





「将臣はとても幸せそうだね。ヒノエも同じ、とても幸せそうだった」

そう言って白龍はまるで自分のことのように将臣とヒノエのことを喜んでいた。いや、白龍だけではない。望美も、他の皆も同じ気持ちなのだ。

「今日は良い日だね。皆が幸せな気持ちになっている」

白龍の言葉に望美はにっこりと微笑んだのだった。





「あ、九郎殿……」
「何か問題か?」

九郎は来賓席に遅れてやってきた。リズヴァーンが問題かと聞いた訳は九郎が深刻な顔をしていたからで。敦盛も不安そうな顔をする。

「それが弁慶が見当たらないんです。
一体何処に行ったんだ……こんな大事な日に」

本当に大事な日なのに何処へ行ってしまったのか。誰にも分からないらしい。
弁慶はヒノエの結婚を認めてはいたが、叔父としては可愛い甥っ子を取られたという話で、将臣を少々敵視していた所があったというわけで。

「弁慶も分かってくれているだろう。きっと大丈夫だ」

リズヴァーンの言葉に二人はどうかそうであって欲しいと思いながら、頷いたのだった。




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あきゅろす。
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