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年の差≠身長差


部活が終わり、着替えを済ませた俺は一足先に部室を出た。


「先輩!お疲れ様でしたー!」
「おう、お疲れ。」

後輩の面倒をみるのはわりと性に合っているらしい。
自分でも意外だが、周りが言うには慕われやすいタイプなんだそうだ。…世話好きというわけではないんだが。

「先輩一緒に帰りましょう!」
「うるさい黙れ、離れろ。」
「ああ冷たいっ…でもそういうとこも好きです!!」

そのせいか妙なのに懐かれてしまった。


首に巻き付く腕を剥がして黙々と歩を進める。と、慌てて奴が追いかけてきた。

「ちょ、本当に置いて行かないで下さいよ!」
「ふざけたこと言ってるお前が悪いんだろーが。」
「先輩俺にだけ冷たすぎません!?」
「よかったな、特別扱いだ。」


特別扱いは嬉しいけどなんかそれって違うようなうんぬん、とぶつぶつ呟いてる奴を放置して歩く。

別にこいつが嫌いな訳ではない。が、見下ろされながら先輩と呼ばれると無性に腹が立つ。
断じて俺が背が低いんじゃない。こいつが高すぎるんだ。…多分。
前にそう言ったら、「バスケしてるなら俺ぐらいが普通ですよ。」と言われた。

……嫌いかもしれない。


「先輩!平然と置いて行かないで下さいってば!」
「お前がぼーっとしてるからだろ。」

第一一緒に帰る約束をした覚えはない。

こいつと一緒にいるのは嫌いではないけれど、話す時に見上げなければいけないのはカンに障る。
前にそう言ったら、こいつは俺に目線を合わせて屈んで「これでいいですか?」と言った。

……やはり嫌いかもしれない。


「あ、先輩もしかしてまた身長のこと気にしてます?」
「別に。」
「俺は先輩はこのままの身長でいいと思いますけど。」
「なんでだよ。」
「だって――」

そう言うと、ふわりと正面から抱き込まれた。


「このままの方が抱きしめやすいでしょ。」
「意味がわからないんだけど。」
「なんかほら、俺と孝志の相性ぴったりって感じで。」
「……なんだそれ。」


確かに俺はこいつにすっぽりとおさまってしまっている。隙間が埋まっているせいか暖かい。

なんだか俺の男としてのプライドがずたずたにされている気がする。

……でも嫌いじゃない。



「……陽介、ここ外。」
「知ってます。」
「……離せ。」
「もうちょっとだけ。」
「調子に乗るな。」
「――痛ッ!」



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「あのね、先輩。」投稿作品。



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あきゅろす。
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