04
『そ、そんなことが?ごめんなさい晋ちゃん、痛かったよね?』
「美咲・・・?」
晋ちゃんの痛みは兄妹みんなの痛み。左目をゆっくりさすってやると、右目を瞑った晋ちゃん。頬を伝う一筋の涙、温かい。
ごめんね、ごめんねと何回も呟く。銀ちゃんに止められたけど、泣きながら言われても説得力ないよ。
トシくんも退も総悟もみんな、泣いてる。痛いんだよ、みんな痛い。
「晋兄さん・・・おかえりなさい」
「おかえり、晋助」
「おかえりでさァ、晋兄」
「心配させやがってコノヤロー!」
『おかえりなさい、晋ちゃん』
晋ちゃんはさらに泣き出してしまった。恥ずかしそうに、でも優しく。
いつもで支えあって生きて行く、それが家族でしょう?血の繋がった家族なんだから、当たり前のことだよ。
やっと揃ったんだ。その喜びだけで今は十分じゃない、他に何がいるっていうの?私は今のこのままで一番幸せなの。
「さ、帰ろうぜ!今日は俺の家でパーチーだ」
『誰が料理作ると思ってんの?・・・まぁ、いいけどさ』
「俺も手伝いまさァ、晋兄の嫌いなものたくさん使って料理しやしょうねィ」
「美咲、もうマヨネーズがなくなってたぞ。買っておけよ」
退は3歳のころ以来、晋ちゃんに会ってないってことになるよね。記憶・・・ないだろうな。
銀ちゃんの記憶もトシくんの記憶も。もちろん私たちの記憶も。
退はすごいよ、自慢の弟だもんね。私は知ってるよ、どれだけ退が頑張ってるのか。大好きなバドミントン、実は私が教えてあげたんだよ。
私がお母さんにバドミントンを教えてもらってそれを退にも教えてあげたんだ。ラケット持つと嬉しそうにしてた退。
「そういえば、明日って親父たちの命日だよな?」
「今思い出したんですかィ?俺ァ、1日も忘れたことはありやせんぜ」
『もう13年になるんだね・・・』
「ククッ・・・、あの親父のことだ。その内ひょっこり出てくんじゃねェか?」
晋ちゃんの言うとおりかもしれない。私もたまにそう思うことがある。
でっかくなったなー、なんて言いながら私の頭を撫でてくれたりしそうなお父さん。お母さんは私の相談相手とかになってくれてたかな?
恋愛とか・・・したことないけど、お母さんとそういう話もしてみたかったな。もう、この世界にはいないって分かってるのに。
『明日・・・さ、みんなでお墓参り行こうよ。みんな集まったんだよ、って教えてあげなきゃ』
「美咲の意見に賛成。今日は全員俺ん家泊まってけ!」
「ダンボールハウスに招待か、まぁ・・・悪くねェ」
「そんなに小さくねェよ!これでも一応、仕事してるからね」
豪華な料理と兄妹の笑顔。
幸せそうに笑う晋ちゃんを見てると、本当に13年間も会ってなかったようには思えなかった。いつまでも変わらない、家族。
総悟と、双子に生まれてきたこと嫌だとか思ったことは本当に1度もなかった。顔が似てない、って言われようとも総悟が好きだった。
銀ちゃんとトシくんは双子で生まれてきたことを嫌だって言うけど本当は嫌じゃないはず。ただの照れ隠しだと、私は思う。
晋ちゃんだって素っ気無い態度で話すけど、今の笑顔を見てるとやっぱり晋ちゃんは晋ちゃん。何も変わらない。
退だってそう。一番下で引っ込み思案だけど、やる時はやるっていう長所もあるし。家族思いの心優しい子。
これは私の自慢の兄妹で、家族。
ここが最後の家。もう離れ離れにはならない。
家族が住む家にはね、いつも誰かが居て「ただいま」って言えば「おかえり」って返ってくる。
笑顔の耐えない、素敵な家。私の家族は、みんな支えあって今日も幸せいっぱいに笑っています。そんな温かい家です。
お父さんとお母さんは、少し早めに天国へ行っちゃったけど、どこかで私たちのことを見ててくれてるはずだから。
『私、銀ちゃんやトシくん・・・晋ちゃんと退。そして総悟と家族で、兄妹でよかった!』
Last Home
-もう、泣かない-
本当に、家族がいるって幸せなんだ――・・
-前編END-
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