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次の日、ポストには大量とは言えないが年賀状が入っていた。新八おじちゃんや九ちゃん、東城からの物だった。
あけましておめでとう、とお決まりの言葉から始まり今年もよろしくねで終わる。


銀ちゃんは中学生の時の友達から結構来ていたが私たちには無い。中学校や小学校ではあまり良い思い出は無いから。
あるとしたら悲しい思い出だけ。同級生からの苛め、おばさんからの虐待、修学旅行には行けない孤独感。




それでも、今こうして笑ってられるのは総悟のお蔭だと私は思っている。虐待されていた時も体を張って守ってくれたのは総悟。
苛めから開放してくれたのも総悟。修学旅行に行けなくて泣いていた私を優しく包んでくれたのも総悟だった。










『ありがとね、総悟』


「何ですかィ、いきなり改まって。何もあげやせんよ」


『知ってるよ、ほらこれおばさんから年賀状が来てる。元気ですかだって』









年賀状を仕分けしている時見つけたおばさんの名前。よく年賀状なんて出せたね、と笑えてくる。




――元気ですか?あなたたちが出て行ってから何度かアパートまで足を運んだ事があります。
その度に笑い声が聞こえて、私は安心してました。

これまで酷い事してごめんなさいね。お父さんに言われて気づいたのよ。
最低だったわね、私は。謝ってもあなたたちの心の傷は癒えないと思うけど言わせてもらうわ。


ごめんなさい――










「謝っても無駄でィ・・・、でも心配して何度か来てくれてたんだねィ」


『うん、おばさんもやっと気づいたんだね。どれだけ酷い事をして来たかを』









その時アパートのドアが勢いよく開いた。今日は朝から銀ちゃんは仕事。久しぶりの仕事だって喜んでたっけ。
忘れ物でもしたのかな、と玄関を総悟と覗いて見ると息を切らした神楽がいた。










『どうしたの、神楽』


「大変アル、ワタシが選ばれたネ!銀魂中の卒業式で代表の言葉言う事になったアル」










嬉しそうな顔をして私に抱きついてきた神楽。総悟は軽く舌打ちすると部屋の中へ入っていった。
神楽は総悟にべーっと舌を出して睨んでいた。


それより卒業式の代表の言葉って、神楽中学3年生だっけ。確か私の記憶では中1だったはず。違ったっけ・・・
とにかく代表の言葉ってすごいじゃない。銀魂中はこの辺でも一番生徒数が多いし、神楽が選ばれるなんて人事だけどやっぱり嬉しい。










『神楽って中2だよね?』


「そうアル!銀ちゃんと美咲には見に来てもらいたいアル!サドヤローは来なくていいけどな」











銀魂中。確か退はおばあちゃんに引き取られたはずだ。おばあちゃんは銀魂中の近くに住んでいる。しかも退は中学3年生だ。
もしかしたら、違う・・・絶対だ。絶対退に会えるはず。晋ちゃんは高2だからどこにいるか分からない。ここら辺でも高校は沢山あるからね。



神楽によると、代表の言葉は在校生代表らしい。神楽が選ばれた理由は本人曰く、日ごろの行いが良いからだそうだ。
さっそく銀ちゃんにも電話をして喜び合った。










『卒業式は後2ヵ月後くらいかな。練習沢山して咬まないように頑張ってね、神楽』


「おう!任せるアルヨ、必ず成功させてやるネ」









キャッホオォと叫びながら神楽は帰って行った。総悟は神楽が嫌いみたい。神楽が来るとすぐに逃げてしまう。
恥ずかしいのかもしれないし、本当に嫌いなのかもしれない。

でも、卒業式には連れて行くつもりよ。だって退に会えるかもしれない。中学校は小学校みたいに1人づつ名前を呼ばないから分からないかもしれないけど。
必ず見つけてやるんだ、私のたった一人の弟を。大切な家族を――・・



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