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04







その日はトシくんも神楽も銀ちゃんのアパートへ泊まった。狭くてあまり寝れなかったが、その代わり楽しかった。
神楽の中学校生活を聞いたり、警察で大変だった事を聞いたり。


まるで、修学旅行の夜みたいで楽しかった。実際、修学旅行には行ってないが小学校の頃の友達が言っていた。
夜遅くまでみんなで好きな人の話をしたり、他愛もない話で盛り上がって先生に怒られる。






それが、私の修学旅行の夜のすべてだった。行きたかった。修学旅行には行きたかったけど、おばさんがそんな金は無いと言い、行かせてくれなかった。
その時の担任の先生がおばさんを説得したが、だめだった。その時、私たちはどれだけおばさんを憎んだか。


朝起きると、お味噌汁の匂いが漂っていた。エプロンを着けた十四郎が台所から顔を覗かせた。







「早ェな、美咲。銀時たちはまだ寝てるからメシ食っちまえ」


『うん、分かった。うわぁ、おいしそう!これ全部トシくんが作ったの?』







目の前には、おいしそうなお味噌汁。目玉焼きに、鮭まで。私や総悟が作るご飯よりも、ずっとおいしそうだった。
一口食べると止まらない。

一気に食べると、お腹がいっぱいになった。お茶を出してくれたトシくんに感謝しつつ、総悟を置いてバイトへ行った。
今日は午後からだが、何となく午前中に行きたくなった。


コンビニには、店長が1人だけいた。








『店長ー!お手伝いに来ました。昼からだけど、午前中からいてもいいですか?』


「おう、美咲ちゃんか。いいけど給料は、」


『分かってますよ、それくらい。何からしましょうか?』








客が誰もいなかったので、店内を綺麗にした。床をブラシで擦ったり、窓を拭いたりした。
丁度10時を過ぎたくらいに、総悟が少し怒った顔で店内に入ってきた。

私に何も言わず、店長を少し話してから奥へ入っていった。何なんだろうと思いながら窓を拭き続けた。
総悟が奥から出てきて、私の方へ歩いてきた。








「美咲のバカ!何で先に行くんでィ。言ってくれれば起きたのに・・・」


『ごめん。総悟、気持ちよさそうに寝てたから起こせなくて』


「まぁ、いいでさァ。窓拭き、手伝いやすぜィ」









2人でやると、流石に早かった。窓はピカピカになり、床はツルツルになった。
店長も喜んでくれたし、いい仕事をしたなと思った。


午後からは、客の出入りが多くて忙しかった。立ち読みするお客さんもいるけど、店長は快く許している。
変なコンビニと思う人もいると思うが、それがうちのコンビニの良いところでもある。





夕方5時くらいに仕事は終わり、総悟は急いでいた為自転車で来ていた。それは銀時が乗っていた自転車。
だけど今はスクーターがあるからと言って、全然乗ってなかったのを総悟にあげた物だった。
その自転車に2人で乗って、家まで帰った。








「ただいまさァ。今日は、カレーか」


『本当だ!カレーの匂いがするね。トシくんかな?』








玄関へ入った瞬間分かる程カレーの匂いが漂っていた。いい匂いで、お腹が鳴ってしまう。
台所を覗くと、トシくんが一生懸命混ぜていた。銀ちゃんや神楽はゲームに夢中。

総悟は風呂に入ったし、私はトシくんの手伝いでもしようかと思い台所へ行った。
カレーとサラダにするらしく、私は野菜を切っていた。キャベツ、ニンジン、キュウリ、トマト。


色取り取りな野菜がお皿を飾った。それに特製のドレッシングをかけて出来上がり。丁度カレーも出来上がったそうだ。
銀ちゃんと神楽のゲームを止めさせ、総悟が風呂から出てくるのを待ってやっと食べられた。









「ん!トシが作った割りにはうめェ!美咲ちゃんの作ったサラダもうまい」


「確かに、トシ兄が作ったとは思えねーや。でも、美咲のサラダはうまいでさァ」


『そう?ありがとう。おかわりもあるから沢山食べてね』


「お前ら、俺の事は褒めてるのかバカにしてるのか分かんねェぞ」








楽しい夕食はあっという間に終わり、トシくんは明日仕事なので帰って神楽も部活があるからと帰った。
神楽1人で帰るのは危ないと、総悟が付いていく事になった。銀ちゃんが無理やりね。総悟は最後まで嫌がってたけど。

残るは私と銀ちゃん。気まずくて、何を話していいのか分からなかった。








「美咲、明日万事屋行くけど来るか?総悟と一緒に」


『え、うん。行く!神楽は部活だけど午後には戻って来るんだよね?』


「俺が聞いてるにはそうだったと思うぜ。さ、俺は眠いから寝るとするかー。美咲は総悟が帰ってくるまで起きてるのか?」


『うん、一応ね。でも寝ちゃうかもしれないな』








おやすみ、と呟いて銀時は寝室へ入っていった。待つこと20分。総悟が帰ってきた。
鼻と耳を真っ赤にして帰ってきたので、急いで暖かいお茶を出してあげでヒーターも点けた。


帰り道での出来事を楽しそうに話してくれた総悟。神楽がコケたとか、おんぶしてあげたとか。
嫌がってた癖に、すごく楽しそうに話すもんだから思わず笑ってしまった。









「何笑ってるんでィ」


『いや、総悟が神楽を送るのすごく嫌がってた癖に楽しそうに話すなぁと思って』


「楽しそうなんかじゃありやせんって!ウザいでさァ、あのチャナ!」


『はいはい』









総悟を少し茶化すと、本気で怒ってきたのでやめておいた。でも、本当に楽しそうだった。私も行けばよかったなと後悔した。
明日は万事屋へ行って、掃除でもしてあげよう。神楽がしてるから綺麗かもしれないけどね。


雪がまた降ってるといいなと願いながら、眠りについたのは11時頃の事だった。








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