03
『寒い日には、鍋をしようか!夜みんなで』
「お、いいですねィ」
だから買い物行くとき、材料沢山買わないと。総悟もトシくんも銀ちゃんも神楽も沢山食べるだろうから。
それと、ジャンプも今日発売日だったかな。それも買わないと。
家の中でヒーターを点けて、こたつに入ってテレビを見ていた。
お笑い芸人が、一生懸命ネタをやっている。でも、全くおもしろくない。
「この芸人もう終わりでさァ。全くおもしろくないですぜィ」
『やっぱり?なんか、ねぇ・・・』
銀ちゃんは寝ていて、トシくんは勉強。神楽は漫画を読んでいた。それぞれが自由な時間。
今思えば、こんなにゆっくりしたのは久しぶりかもしれない。
外は雪。お昼を過ぎた頃からまた降り始めた。明日も積もるのかな、と期待を膨らませながら瞳を閉じた。
起きたのは、夕日が沈み始めた頃。みんなこたつの中で寝ていた。
総悟だけを静かに起こして買い物へ出掛けた。雪は調度止んでいて、太陽が覗いていた。
『さっむー!雪降ってないのにね』
「地面にまだ、雪残ってやすからねィ。美咲手袋貸しやしょうか?」
両方貸してくれるのかと思ったが、片方だけだった。それを着けると総悟の温もりで温かかった。
スーパーまではそう遠くない。歩いて10分と言った処だろうか。
鍋の材料をカゴに詰め込んで会計を済ませた。銀ちゃんのジャンプも買ったし、新発売のお菓子も買った。
そういう余計な物まで買ってしまったので、荷物は思ったよりも大量に。
『ねぇ、2人で持てるかな?銀ちゃんたち呼ぼうか』
「いや、銀兄さんたちは寝てやすから放っておきやしょう。安心しなせェ、俺が持ちまさァ」
総悟は荷物を持ってスーパーから出て行った。美咲が残りの荷物を持って外へ出た時には、総悟の姿は見えなくなっていた。
不安になり、走って帰り道を急いだ。走っても走っても総悟の姿はない。
息を切らして、近くにあった公園へ入り休憩していると総悟が缶ジュースを手に走ってきた。
『バカ!どこ行ってたの?探したっていうか、先帰ったのかと思って走ったじゃない』
「すいやせん。寒いんでジュースでも買って来ようとしたんでさァ。反対方向に自販機があったんでね」
と言って、右手に持っているジュースを渡してくれた。暖かくて、冷たくなっていた手を一気に温めた。
一口飲むと、全体が温もってきた。
空を見上げると、また雪が降ってきそうだった。ジュースを一気に飲み干すと、帰ろっかと言い立ち上がった。
帰り道はゆっくり、行くときよりもゆっくり歩いて帰った。つまらない話。でも、テレビでやっていたお笑い芸人のネタよりも楽しかった。
明日も雪、積もってるといいな。
「お帰りー、寒かったろ?こたつ入れや」
帰るとトシくんだけが起きてた。あとの2人はまだ夢の中。起こさないように買ってきた物を冷蔵庫の中へ入れた。
銀ちゃんへのジャンプは、銀ちゃんの枕元へ。何か、クリスマスプレゼントみたいだった。神楽には、新発売のお菓子を。
鍋の準備をする為、私は台所へ。総悟はトシくんに警察の勉強を教えてもらっていた。
やけに素直だなと思いながら、野菜を切り始めた。
鍋が完成した頃、寝ていた2人が起き始めた。枕元にあった物を見て大喜びする神楽。さっそく読み始める銀時。
それを見て、少し嬉しかった。喜んでくれたから。
『出来たよー!片付けて、総悟はガスコンロ出してきて!』
「へーい」
みんなで鍋を囲み、箸でつつき合う。これが鍋の基本。冬にする料理、心も体も温まる料理。
他愛もない話で盛り上がり、テレビがある事さえ忘れてしまう。
そんな家族がいて、私は幸せだと改めて思った瞬間だった。まだ家族はいるけど、探せばいい。
見つけてあげればいい。きっと、本当の家族なら私たちを導いてくれるはずだから。
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