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6月のゲジゲジ
ゲジ×ゲジ 2

「……どうも」


傘に当たる雨音にかき消されそうなほどの彼の小さな感謝の言葉は、それでもしっかりとボクの耳に届いた。


それからすぐに、手からタオルがスルリと抜き取られる感触がした。


てっきり断られると思っていたボクは、ビックリして一瞬固まってしまった。


「あ……あの!!それ差し上げますからどうぞ使って下さい。ボクはこれから習い事があるので失礼します」


そう言い残すと、ボクは足早にその場を後にした。



「うわっ!!あれってビジュアル系!?すっご〜い」


「本当だ。初めて見た!!でもあの人……」


「「キャー!!格好いい〜」」


すれ違った二人組の女子高生からは、黄色い声が上がった。



『ビジュアル系』




目力を極めたあの化粧。


トマトを連想させる髪に、カラスのような風貌。


そして、重厚感たっぷりのアクセサリー。



(そう!!そうだ!!やっと判った!!ビジュアル系だ!!)


不良ではないと判ったものの、彼を形容する言葉を見つけられずにいたボクの胸の内のモヤモヤが、スッキリと晴れていった。


そうしてボクは何度も頷きながら、雨の中を水溜まりを踏みしめて全速力で駆けていった。



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