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6月のゲジゲジ
逃げ出した臆病者4

「……なに、ここ!?」


どう考えても学生服のボクはこの場にそぐわない。


連れられてやって来た場所は、高級マンションが軒を列ねる住宅地。



あんぐりと口を開けて空を見上げるボクの目の前には、高くそびえるマンション。


「なにコレ!?どこ!?」


「オレのうち」


「なっ!?えぇぇ!?」


さすがヨネ子さんのお孫様。さっきの諭吉といい、このご実家といい…………金持ってるなあ。


これなら持っていいよと差し出されたメロンの箱をぶら下げるボクの隣には、さも平然と玄関ロックを開ける朱色の髪をした華道界のサラブレッド。



(……人生って、不公平だ。なぜ今日に限って、こんな仕打ちばかりが続くんだろう)



朝一から男同士のセックスに出くわし、そこから逃げるように走り出せば、今度はマダムキラーに遭遇して何故かタイムセールに付き合わされる。


メロン片手に引きずられてきたのは、ボクには一生縁のないような一等地で…………華道の神様、ボクはこれからどうなるのでしょうか。



「おいで」



ボクを呼ぶパンちゃんの声。もう訳がわからずフラフラと導かれるままにボクは足を動かした。



エントランスを抜けてエレベーターに乗り、目指す先は最上階……だそうです。

パンちゃんが押した30階のボタンがオレンジに光るのを見ながら、ボクは少しドキドキしていた。



それはこの自分には不釣り合いな場所に来た肩身の狭まるような緊張からか、それともボクに優しく微笑んでくるマラカイトグリーンの瞳にか。



多分、どっちもだ。





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あきゅろす。
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